音楽千夜一夜 第367回
ドイツ・グラモフォンに録音したCDがたった12枚とはあまりにも少なすぎるが、異常なまでの完璧主義者の悲しい性癖を恨んでも仕方がない。遺された歴史的録音を独りの夜にじっくり聴いてみよう。
12枚というても交響曲はベートーヴェンの5番と7番、ブラームスの4番、シューベルトの3番と8番のみ。あとはオペラと喜歌劇で「こうもり」、「椿姫」「トリスタンとイゾルデ」「魔弾の射手」であるが皆さんなにからお聞きになりますか?
これらのうちで最も録音が古いのは1973年の「魔弾の射手」であるが、これをいち早く聴いてぜ絶讃した青柳君は偉かった。というか良い耳をしていた。当時本邦のレコード界ではまだ駆けだしのクライバーを最高級に評価する人はそんなに多くはなかったのである。
それではまずウエバーから行ってみよう。オケ版はシュターツカペレ・ドレスデンだ。神田に事務所がある青柳君、どうしているか。
「よく生きた」などと思うは傲慢で「十二分に生かされてきた」のである 蝶人