あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

山崎浩太郎著「クラシック音楽の黄金の日日 演奏史譚1954/55」を読んで

2021-05-29 14:04:44 | Weblog

照る日曇る日 第1585回

もっと長生きできたのに、何故か生きる気力を喪失して自死同然にフルベンが死んで、トスカニーニはワーグナーの演奏が途中で分からなくなって突如引退し、その直前に未来を嘱望されていた後継者のカンテルリが飛行機事故で夭折し、老王の死を見届けた若き帝王カラヤンが世界の頂点に躍り出て、マリア・カラス、グールド、バーンスタインが旧弊を革新せんと大きく羽ばたく……。
本書は、そんなクラシックの演奏の革命的転換期であり、二度と帰らぬいわゆる一つの黄金期にあたる時代を、当時欧米を旅していた吉田秀和、大岡昇平、福田恆存、山根銀二などの印象記あ記録を軸に再現していく。
現代音楽を巡って揺れ動く吉田秀和と一貫してぶれなかった別宮貞雄、18歳でアメリカに留学していたミッキー安川の生々しい人種差別体験、群馬交響楽団の苦難を救った映画「ここに泉あり」、国際政治に翻弄されたハンガリーのピアニスト、シフラの有為転変の波乱に満ちた生涯、あたらジュリアード音楽院に留学して名匠ガラミアンに就いたために悲劇の生涯を送ることになった本邦の天才ヴァイオリニスト渡辺茂夫などなど、思わず膝を乗り出してしまう珠玉のエピソードもてんこ盛りに積み上げられ、コロナ狂想曲喧しい今日このごろの憂さを吹き飛ばしてくれる、堪らなく面白くて為になる必読の音楽史譚ずら。

  たまたまのたまたまたまのたまたまの純利益4.9兆 蝶人
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