音楽千夜一夜 第470回
エリック・サティのピアノ音楽は、タイトルこそちょっと奇妙だが、聴いてみると真っ当な音楽で、それでも5メートルくらい離れて観察すると、世のいわゆる正統派や主流の人たちとはちょっと離れたところで竹林の禅僧みたいな笛を吹いているような気がするところもあって、絵の世界でいうとちょっとアンリ・ルソーに似たところもあって、なんともいえずお洒落で、素敵だ。
私が好きなのは本邦の高橋アキさんとおふらんすのバルビエおじさんの演奏だが、たまたまいたりあのチッコリーニ爺さんの2回目の6枚組の録音が安価で出たので聴いてみましたら、わりとテンポが速めでスイスイ行くのでちと驚きましたが、これはこれでいいのかなあ。
私はなかんずく「je te veux」が好きで、このボックスにはチッコリーニのソロとHenry Pacoryの唄入りのものの2種類が入っているが、いずれもダメで、むかし銀座の資生堂ビルの「ワード」講演会場で主催者が流していた、やはり歌唱入りの録音が一等気にいっていたんだが、あれは誰の演奏だったのかしら?
もちろんサティは管弦楽曲も素晴らしくて、ソプラノが歌う「ソクラテス」の第3部など涙なしに聴けるひとはいないだろう。
何事のおわしますかは知らねども一味同心五輪臨終 蝶人
https://www.youtube.com/watch?v=CzAAtuAKzik