あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

小学館版「日本短編漫画傑作集第2巻」を読んで

2021-10-16 11:51:17 | Weblog


照る日曇る日第1646回

この巻の作者は、永島慎二、水木しげる、宮谷一彦、佐々木マキ、横山光輝、藤子不二雄Ⓐ、佐藤まさあき、ちばてつや、やまだ紫、つりたくにこ、ダディ・グース(矢作俊彦)の11名であるが、私が気にいったのは水木しげる「妖花アラウネ」の精密に描かれた風景画、佐藤まさあき「夕映えの丘に」の自伝的リアリズム、藤子不二雄Ⓐ「ひっとらぁ伯父さん」の途方もないアナーキズムであった。

ところで前回の第1巻の感想のところで、小学館が急遽「少年青年漫画編」なるサブタイトルを添加することになったと書いたが、本巻には女性も数人入っているのに、なんで「少年青年漫画編」なのか? やまだやつりたは男なのか? 文句を言わないのか?それとも後から「少女熟女漫画編」を出して、やまだやつりたをそっちに引っ張り込む作戦なのか?

いったいどういう料簡なのか、小学館。

   ポスターの自分の名前を白抜きにしている候補はズブの素人 蝶人
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「THE ART OF ROBERT CASADESUS」全30枚組CDを聴いて

2021-10-15 09:19:34 | Weblog


音楽千夜一夜第486回&蝶人狂言綺語&バガテル―そんな私のここだけの話第416回


事故で痛む右手をなんとか治そうと家の中でもリハビリに勤しんでいる合間に聞いていたのが、このCDボックスであった。

1935年から62年の間にピアノの名手、仏蘭西のロベール・カサドシュ選手が営々とコロンビアに録音し続けたレコードを銀色盤に焼き付けたもの。

バルトークから、サンサーンス、ドビュシー、ラベル、シューエルト、ショパン、フォレ、ラモウ、バッハ、シューマンから自作まで何でもアリ、よりどりみどりだが、やはり一番立派な演奏は、セル&クリーブランドを従えたベートーヴェンとモザールの協奏曲やソナタだろうて。

30枚のうちの2枚目のCDに故障があったので交換してもらったのだが、その時紙ジャカットごと送ってしまった。失敗、失敗、しかも二度目の失敗でこれぞ老耄の証ずら。

   投票日の4日前に広報を配る奴らは仕事をしてない 蝶人

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立松和平作・伊勢英子絵「山のいのち」を読んで

2021-10-14 10:53:58 | Weblog


照る日曇る日第1645回

都会から田舎にやってきた少年がおじさんに導かれて都会では体験出来ない大自然の恵みに揺さぶられていくという或る種のビルダングスロマン絵本ずら。

死んだイタチの皮を活用してヤマメを釣り上げるシーンは感動的だが、エンデイングが唐突なので戸惑う。

つとに他界した立松選手が最初に手掛けた作品らしいが、余は彼の遺言としてこの童話を読んだのである。

  生きたまま引き裂かれたる榎の木よ朝は葉むらを靡かせおりしが 蝶人
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レオ=レオニ作・谷川俊太郎訳「せかいいちおおきなうち」を読んで

2021-10-13 11:26:20 | Weblog

照る日曇る日第1644回


処女作「あおくんときいろちゃん」で有名になった絵本作家の1968年の作品。谷川選手がはじめて翻訳を手掛けた絵本らしい。
「りこうになったかたつむりのはなし」という副題の通り、巨大な殻作りに憂き身をやつしたええ格好しのかたつむりが、一同で食べつくしたキャベツから移動できずに自滅してしまうお話だが、どうにもこうにも修身の教科書のような教条性が鼻につき、読んで愉快になれない絵本であった。
ああ、おらっちも死ぬまでに絵本を1冊作りたいなあ。


   今日中に引き抜かれるとは露知らず風にそよげる榎の木の葉 蝶人
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川端康成著「伊豆の踊子」を読んで西川克己監督の2本の映画をみる

2021-10-12 15:03:47 | Weblog

照る日曇る日第1643回&&西暦2021年神無月蝶人映画劇場その2 

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.2667~68

○「伊豆の踊子」は1926年に書かれた川端康成の代表作であるが、「雪国」と同様冒頭の叙述が素晴らしい。
「道がつづら折りになって、いよいよ天城峠に近づいたと思う頃、雨脚が杉の密林を白く染めながら、すさまじい早さで麓から私を追ってきた」とは、どんな作家でもなかなか書き下ろせないものであり、これを映像に出来た作品もない。
短編の結末では踊子との別れは淡々と即物的に描かれているが、映画では感動的なフィクション作りに力が入っている。原作ではむしろ踊子そっちのけで上野まで届けるべき気の毒な老婆と孫娘に視線が届いているのである。
川端は、あえてアンチクライマックスのクライマックスを意図したとでも評すべきか。
ヒロインの踊子について原作では「この美しく光る黒目がちの大きい目は踊子の一番美しい持ちものだった。二重瞼の線が言いようもなく綺麗だった。それから彼女は花のように笑うのだった。花のように笑うという言葉が彼女にはほんとうだった」と印象的に綴られているが、この描写にふさわしいのはもちろん山口百恵ではなく吉永小百合だろう。

○西河克己監督の「伊豆の踊子」
1963年に吉永小百合と高橋英樹主演で4度目の映画化。2人の下田の港の別れに泣かされます。
○西河克己監督の「伊豆の踊子」
山口百恵、三浦友和主演による1974年のリメイク作品だが、63年の吉永、高橋版に遠く及ばない。


 十五夜と十六夜月は見たけれど立待月居待月は見ずに畢んぬ 蝶人
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小学館版「日本短編漫画傑作集第1巻」を読んで

2021-10-11 15:18:23 | Weblog

照る日曇る日第1642回


山上たつひこ、いしかわじゅん、村上知彦、中野晴行、江口寿史の選者たちが選んだのは、手塚治虫、松本正彦、平田弘史、白戸三平、さいとう・たかお、石川球太、つげ義春、青柳祐介、池上遼一の珠玉の名篇だが、おらっちはつげ義春29歳の作品「海辺の叙景」に感嘆。とある田舎に海水浴にやって来た男女の出会いを描く淡々と描く短編だ。
そして雨降る海をクロールで泳いでいる男を浜辺で傘をさし「いい感じよ」といいながら見ている女の見開きで水のような物語が突如断ち切られるようにして終る時、その淡々がこの世のものではない以異界の光景のように現前し、ぞくぞくさせられる。
なお本シリーズは、選者に女性が一人も入っていないこと、全6冊の選集の大半が男性の作品であることから非難を浴び、急遽「少年青年漫画編」なるサブタイトルを添加することになったそうだが、いかにもジェンダー平等の理念が身に添わぬ昔ながらの出版社の古い体質を示しているようだ。


 退けるメルケルさんを輸入して党首に据えれば野党勝つらむ 蝶人
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岩波文庫版・柳井滋他校注「源氏物語九」を読んで

2021-10-10 10:37:50 | Weblog


照る日曇る日第1642回


遂に完結した岩波文庫版で源氏の最終巻「蜻蛉」「手習」「夢浮橋」を読みました。

薫と匂宮、2人の貴公子の間で引き裂かれ、宇治川の急流に身を投じようとして悪霊に襲われ、心身の自由を喪失した薄幸の美女、浮舟の運命やいかに?

藤井貞和氏の解説によれば、紫式部は本巻を含む「宇治十帖」とこれに先行する「薫匂三帖」合わせて全54巻の、物語全体の約1/4を占めるポスト光源氏の13帖を書くのに、恐らく10年近くの歳月をかけたと推察されているが、本編に優るとも劣らぬ傑作中の傑作である。

それにしても、千年以上前の平安時代中期に書かれたこの大長篇小説の原文を、大谷崎や与謝野女史による「現代語訳」ではなく、懇切丁寧な語釈に助けられながら、ゆるゆると自力で読み下していく快楽を、何に譬えたらよいのであらうか。

    才能の浪費を止めて纏めよとわが友Nは忠告せりき 蝶人
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主婦の友社版「誰もが泣いて喜ぶ愛と感動の冠婚葬祭その他諸々挨拶&スピーチ実例集No.87」

2021-10-09 13:05:36 | Weblog

蝶人狂言綺語&バガテル―そんな私のここだけの話第415回


○藍綬褒章受賞祝賀会教え子のあいさつ

西村先生、このたびは藍綬褒章受賞誠におめでとうございます。*1
いまを去る40年前に、但馬小学校にて先生の教えを受けました伊織と申します。*2
文化果つる辺境の地、と世間から寂しいレッテルを貼られた田舎の村の小さな分教場で、6年間にわたって西村先生の謦咳に親しく接することができたのは、私たち第34期生にとって生涯の喜びでありました。きょう改めてそのことをまず先生に感謝したいと思います。*3
私はクリスチャンではありませんが、新約聖書を読んでおりましたら、マタイ伝の18章にこんなエピソードが書かれておりました。100匹の羊を飼っている羊飼いが、あるとき1匹の羊を見失いました。羊飼いは、たかが1匹の迷子の羊のために、残りの99匹を山に残して大捜索に乗り出し、努力の甲斐あってついに迷子の羊を発見したとき、大喜びに喜んだ、というのです。
迷えるもののためには危険を顧ず、勇敢に救いの手を差伸べる「よき牧者」の物語です。
西村先生を思うたびに、私は、この物語に出てくるよき羊飼いのことを思い浮かべます。西村先生は、両親が離婚し、家庭が崩壊し、行き所のなかった1人の級友を自宅に引き取って親代わりとなって育てられたのでありました。われわれ凡人にはなかなかできないことであります。
最近の学校の先生は、普通のサラリーマンとおなじで、9時から5時まで勤務して土曜日曜はお休みのようですが、西村先生は朝から晩まで私たち生徒と遊んでくれました。日曜日には、近所の里山で柿や栗を採ったり、ウサギ狩りをしたりしました。川や海で魚釣りもしました。雨の日は、先生のお宅にお邪魔して初歩の英語を教わったり、村中でたった1台だけあったオルガンを先生が弾き、みんなで唱歌の合唱を楽しみました。*4
個人的なことを申しあげて恐縮ですが、私が現在まがりなりにもプロのピアニストとして活動できておりますのも、その時西村先生から手ほどきされたバイエルのおかげです。大勢の迷える羊を立派に導いてくださいました西村先生へのご恩は終生忘れることはできません。どうか先生、これからもお身体を大事にされまして、いつまでもお元気でまだまだ至らない私どもをお導きください。

○アドバイス
*1老齢者の出席も多いだろう。受賞者と話者の関係を明確に発音してスピーチを始めること。そうしないと、それ以降のコメントの文脈が理解されにくくなる。
*2賞の具体性に言及せず、受賞者の人柄や面影、来歴という角度からアプローチする手法である。
*3聖書とシェークスピアは名文句の宝石箱である。「百匹の羊を有てる人あらんに、若しその一匹まよはば、99匹を山に遺しおき、往きて迷へるものを尋ねぬか。もし之を見出さば、誠に汝らに告ぐ、迷はぬ99匹に勝りて比の一匹を喜ばん。斯くのごとく比の小き者の1人の亡ぶるは、天にいます汝らの父の御意にあらず。」(マタイ伝18章12節)
*4恩師への個人的な感謝が捧げられる。
*5恩師の長寿、健康そして後輩へのさらなる指導が祈念される。この場合、恩師の配偶者が健在ならばここで合わせて言及する必要がある。


バッハ無伴奏パルテイータ第3番を聴く度に資生堂の「トラベルセットが当たる」を思い出す 蝶人
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西暦2021年神無月蝶人映画劇場その1

2021-10-08 15:00:32 | Weblog

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.2662~66


1)大林宣彦監督の「さびしんぼう」
1985年の尾道作品。この頃の富田靖子は好きだが、ショパンはあんまり好きじゃなので減点するよ。
2)豊島圭介監督の「三島由紀夫vs東大全共闘50年目の真実」をみて
西暦1969年5月13日、単身敵地に乗り入れて言いたいことを全部言い切る三島由紀夫は立派。全共闘の連中の言葉は当時も今も普通の日本語としてあるで成立していない点で、50年後に改めての敗北を知る。
3)行定勲監督の「世界の中心で愛を叫ぶ!」
2004年製作の大沢たかお、長澤まさみ、紫咲コウ、主演の恋愛映画だが、題名が恥知らずでとうていまともに鑑賞出来ないずら。
4)岩井俊二監督の「Love Letter」
1995年に中山美穂、豊川悦治などでつくられた下らない脚本、下らない演出による下らない映画。こんな下らない映画がヒットしたり韓国人が小樽に大挙してやってくるようになるとは苦々しい限りだ。
5)中川信夫監督の「東海道四谷怪談」
1959年の怪談映画。天知茂、若杉嘉津子江見俊太郎などが好演。しかしいくら蛇寺でもうじゃうじゃ蛇をばら撒くのはやめてけれ。

   我々が大震災を忘れても地震は忘れず震度5が来る 蝶人
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正岡子規著岩波文庫版「子規歌集」を読んで

2021-10-07 09:21:30 | Weblog
照る日曇る日第1641回

子規の作歌と摸索は、おおむね明治31年から始まったようだ。同じ年の「歌よみに与ふる書」であれだけ啖呵を切ったからには、よほど革命的な作品を打ち出さねばと焦ったようだが、その成果はあまりはかばかしくない。

明治の和歌革新運動に命懸けで取り組んで和歌から短歌への転換を図った子規の数少ない武器は「現実写生、新現実生起」に過ぎず、同じ新派でも「個性発現」を明確な旗印に掲げていた鉄幹、晶子、啄木の明星派には一籌を輸すると言わざるを得ないことは彼の作品を見れば一目瞭然だろう。

さはさりながら、35の若さで死ぬ子規が、たった26で死んだ実朝を激賞し、追慕し、兜を脱いでいる歌を前にしては絶句するほかはない。

けれども、だんだんと「写生」の焦点が定まり最晩年の明鏡の境地に到りつくすと、あの有名な「藤の花房」シリーズや「今年ばかりの春ゆかんとす」の絶唱などが生まれたのであった。

曙覧、蘆庵、香樹を批判的に学びつつ継承した子規にはじまり、アララギから現代へと続く流れは、奥村晃作の「ただごと歌」で一つの頂点に到った観があるが、新旧激突&混淆、口語短歌全盛のこんにち、短歌界はいかなる「未来」に突破口を見いだすのか興味は尽きない。

   朝7時18分に止まったという小田急線に息子は乗ったか 蝶人
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正岡子規著「歌よみに与ふる書」を読んで

2021-10-06 13:35:37 | Weblog

照る日曇る日第1640回 


「貫之は下手な歌よみにて「古今集」はくだらぬ集に有之候」という世に有名な一行は、正岡子規渾身の命懸けの一行であった。
この一行を書くために、子規は当時の歌壇主流派はもちろん、自分の恩人であり雇用主でもある 陸羯南や数多くの友人知己とも決別絶交を覚悟したのである。
羯南主宰の「日本」紙上に連載されたこの火の出るようなコラムは、、幕末以降も長きに亘ってぬるま湯に浸かり続けていた歌詠みたちへの頂門の一針、というより痛烈な爆弾テロ攻撃だったが、明治も遥か遠くなり、いま本書をゆっくりひも解いてみると、さして驚くようなことはまったく書かれていないことに驚く。
現代に生きる我々の目からみれば、「古今集」の紀貫之は、雪と梅をわざと取り違えて粋と勘違いしている超ダサい「粋人」だったし、「新古今」や「百人一首」の藤原定家も弟子の3代将軍実朝の足元にも及ばぬ退屈な歌詠みであった。
「新古今」でゆいいつ近代的な感覚をもって歌に臨んでいた詩人は西行くらいのものであることは、子規にわざわざ言われるまでもない話であるが、かというて、この2書よりも「万葉集」が圧倒的に優れているかというと、(「雑」の部で多少はリアルで写実的ではあっても)、現実から目を背けて花鳥風月を観念的に詠歎するその本質においては、すでに一つ穴のムジナであったと言えよう。
「古今」「新古今」直伝の守旧派を難じて「万葉に帰れ」と大きく旗を振った子規は、実朝、田安宗武、橘曙覧を持ちあげ、本書では曙覧の生涯と作品解説に力を入れているが、確かに群鶏に鶴の趣がある。

 皆様の官許広報が詰まらない「マー姉ちゃん」に即切り替える 蝶人
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主婦の友社版「誰もが泣いて喜ぶ愛と感動の冠婚葬祭その他諸々挨拶&スピーチ実例集No.86」

2021-10-05 11:21:36 | Weblog
蝶人狂言綺語&バガテル―そんな私のここだけの話第414回

○文学賞受賞を祝う司会者のあいさつ
本日はご多用中のところ、海洋冒険社主催第1回ヘミングウェイ記念国際海洋文学賞の授賞式にご来臨の栄を賜りましてありがとうございます。*1

この文学賞は、21世紀の新しい海洋文学の創造を目的として、海洋冒険社が主催するインターナショナルな文学賞でございます。幸い『老人と海』の作家アーネスト・ヘミングウェイ氏のご遺族のご承認とご協力を得まして、審査にも加わっていただけることになりました。*2

さて、スチーブンソンの『宝島』、J.ヴェルヌの『15少年漂流記』、メルヴィルの『白鯨』、コンラッドの『台風』など、海外には幾多の傑作がありますが、わが国の海洋文学は、小林多喜二の『蟹工船』、葉山嘉樹の『海に生くる人々』、景山民夫の『遠い海から来たCOO』などを除くとあまり作品に恵まれないようです。*3

しかし、わが国は米を主食とする内陸型の農耕民族と称されていますが、四方を海洋に取り囲まれ、漁労と航海と交易をもっぱらにする海民ネットワークの民族でもありました。
538年百済の聖明王から欽明天皇の御世にわが国に伝来したといわれる仏教も海からの渡来ですし、僧空海や日蓮も海民の流れを汲む文人宗教家でありました。

13世紀のはじめには鎌倉の3代将軍実朝が、大陸の文明国宋に渡ろうとして陳和卿に命じて唐船を造らせましたし、ポルトガル、スペインの宣教師が盛んに往来した安土桃山時代は、マルコ・ポーロやバスコ・ダ・ガマに始まる世界的な大航海時代の国内版でした。

信長、秀吉なきあと、国内を名実ともに統一した徳川家康が開いた江戸幕府は、2百数十年間続いた鎖国政策によってわが国のグローバル化と海洋文化を大きく後退させてしまった訳ですが、国内近海の物産・物流ネットワークを担った樽廻船、菱垣廻船は幕藩経済体制の一大動脈でありましたし、江戸末期には、ロシアと交流した高田屋嘉兵衛が活躍、大黒屋光太夫のロシア漂流記『北槎聞略』が生まれました。*4

今回受賞されました吉田司さんの作品は、幕末に紀伊半島の漁民がオーストラリアに航海していたという史実に基づく雄渾な海洋ドキュメンタリーであります。本作の登場によってわが国の海洋文学は、世界の桧舞台に躍り出たと申しても過言ではないでしょう。

吉田様、おめでとうございます!

○アドバイス
*1いかなる文学賞であるかを列席者に説明する。とくにはじめて登場する賞の場合はできるだけくわしい解説が必要である。
*2賞の設立にいたる背景を述べる。確かに司会者がいうように日本の海洋文学にはあまり大きな実績と成果がないようである。
*3しかし仔細に点検すれば、古代以来わが国の海洋文学的バックグラウンドは連綿と継続していたと司会者は説く。またそれには網野善彦氏などの海民研究の成果が反映されていよう。
*4 第1回入賞者の作品が、日本海洋文学の欠落を埋め、その隠された輝かしい系譜を継ぐものであると指摘して司会者の文化論的なあいさつが終わる。

   毎回の拙き解説はよしとしてホボホボと言う稀勢の里を憎む 蝶人
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家族の肖像~親子の対話 その73

2021-10-04 16:01:18 | Weblog
ある晴れた日に 第660回

お父さん、咲くの英語は?
ブルームだよ。

お母さん、ばんごはん、お赤飯にしてください。
なんでお赤飯? ま、いいか。分かりましたあ。

お母さん、ボク「みんなの歌」好きですお。
お母さんもよ。

お母さん、きょうサケごはんとコーンスープにしてね。
分かりました。

お父さん、今日2つとも録画してくださいね。
分かりましたあ。バッチリだよ。

夢中って、なに?
とってもイッショウケンメイなことよ。

これ以上って、なあに?
それよりもっと、だよ。

大賛成ってなに?
すごくいいね、ってことよ。

お父さん、信号鳴っちゃったんですお。
信号嫌いなの?
信号、苦手なんですお。
そうなんだ。

お父さん、大好きですお。
お父さんも!

お父さん、きのう2つとも録画してくれた?
バッチリ録画しましたよ。
ロクガ、ロクガ、ロクガ。

ぼく、タタタタというのが怖いの。
そうなんだ。困ったね。

ぼく、お父さんに、チュウイされたお。
それは忘れなさい。
ぼく、お父さんに、チュウイされたお。

笑ったら、連佛さんは?
「コウさん、アホ笑いしないでね」っていうよ。

ぼくは、コンドウマサオミ、好きになったよ。
そうなんだ。

将棋はドンジャラみたいに?
まあそうだね。
ショウギ、ショウギ、ショウギね。

ぼく「日本びっくり新記録」好きですお。
なにそれ?
テレビでやってましたお、むかし。
そうなんだ。

お母さん、この歌好きだお。
正平さんの「こころ旅」の音楽ね。

高速道路、お金を払えばいいんでしょう?
そうだね。

 コウ君が「良し!」というのが大好きだ何が良いのかは分からないけど 蝶人
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すべての言葉は通り過ぎていく 第96回

2021-10-03 10:39:13 | Weblog


西暦2021年長月蝶人狂言綺語&バガテル―そんな私のここだけの話第413回


葉月が終わって、一夜にして長月となった。今日は朝から涼しいので、昨日までの猛烈な暑さが嘘のように思える。このように人の気持ちは季節の変化に寄り添うていくが、季節は、地球の回転のように無感動にへ巡るのである。9/1

昨日の午後からauの携帯が不通になったので、問い合わせたら通信障害で工事中だという。今朝になっても駄目なので、また問い合わせたら、先月から鎌倉、横浜、横須賀辺りで不具合が出てきて原因不明。いつ解消するかも分からないという返事。これはマズイんじゃないの。9/2

と、昨日怒り狂って書きつけたら、突然通信障害が直っちゃった。それとも書いたから直ったのか?そんな効能があるとも思えないが、1か月前に失くしたミニ電話帳出て来いよ!9/3

万歳、百害あって一利なき無能な宰相が自滅した。それでもって民草の視線が、野党の面々ではなく、一つ穴の貉の連中についつい向かってしまうのが哀しいところ。9/4

業務連絡。昨日突然PCのアウトルック野郎が、ご主人たるこの俺様に反逆したので、憲法違反の自民党員共々アルカトラズ監獄にぶちこんだため、向こう1週間ほどメールが使用できません。9/5

「お父さーん、ご飯だよー」と遠くまで響き渡るような声で息子が呼んでいる。あと何年くらいこれが続いてくれるだろう。9/6

安倍蚤糞の治世以降、お先真っ暗の末世が続くのお。どこかに一縷の光が見えるのだろうか?9/7

朝日の夕刊にいろんな人が知識や論理や修飾句を駆使して大層な映画評を書いているが、たまに佐藤忠男さんの文章に接すると、それがあまりにも自然で気負わず、いわば普通の物言いなので、なんだかほっとする。これが大人の文章というものなのだろう。9/8

緊急事態宣言を出しながら、なんの科学的根拠もない「コロナ脅威が去った明かるい未来」について能天気花火を打ち上げる。これを総選挙対策といわずして何であろうか。9/9

NHKの「首都圏道路交通情報」に出る女性は、1秒足らずの露出にすべてをかけているようだ。以前はだいぶ年配の女性がかなり長い間ぐあんばってたが、最近はもっと年下の愛らしい人に変わったようだ。前の女性はどうしているのかしら?9/10

NHK首都圏「おかえり天気」の市村紗弥香は、ちとおかしい。以前はシャボン玉を吹いていたし、こないだは「どんな団子が好きですか?私はみたらし団子」と問いかけたので、アナたちが面くらっていた。彼女は自分も歴とした予報士なので、前座ではなく高座に出たい、と焦っているのだろう。9/11

まだ築10年も経っていない住宅をブルトーザーでぶっ壊しているのだが、いったいどういう料簡なのか理解に苦しむ。9/12

コロナに罹ったら自宅で勝手に治せといい、アフガニスタンで大混乱が起こったら、「勝手に帰国しろ」と突き放す。さすが名高い「自助」の政府だ。9/13

幻想家に告ぐ。3人の候補の誰が総理総裁になろうが、自公維国民体制翼賛政治の下では何ひとつ変わらないどころか、政治も世の中ももっと悪くなるだろう。9/14

1960年に公開されたジャン=リュック・ゴダールの長篇第1作「À bout de souffle」の邦題を「勝手にしやがれ」とつけたというて得意になっている人がいるようだが、それは第三者的な言いすぎで、おらっちは原題通りの「息も絶え絶え」のほうが作品の内容にふさわしいと思う。9/15

立憲民主党が総裁選に対抗するように毎日あれやこれやの政策提案などを小出しにしているが、こんなことなんでもっと前からやらなかったのか? また下手な「共産隠し」で漁夫の利を得ようと画策するのも止めた方がよろしい。9/16

庭にはホトトギスの花が咲き誇っているが、そこに喰らいつくのが棘だらけのど派手な毛虫。これが孵化するとなんとあの美しいルリタテハに変身するので、彼らを退治するかどうかじつに悩ましいずら。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%AA%E3%82%BF%E3%83%86%E3%83%8F#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Ruritateha_07i1804.jpg9/17

誰だ! 植木等の「すいすいすうだらだった すらすら すいすいすい」を汚らしく塗り替えようとしている奴は? 9/18

憲法53条を蹂躙して臨時国会を開く代わりに、毎日「総裁選ゴッコ」で遊んでいるスカスカ内閣の全員を逮捕して、直ちに牢屋に入れるべきではないだろうか。9/19

ともかく河野総裁だけは阻止したい安倍蚤糞だが、野党にしたら岸田の方が攻略しやすいのかも。9/20

あんまり政治や宗教に入れ上げると、自分の理屈や宗旨に共感を懐いたり同意しない人々を敵視するようになるので、きわめて危険だ。9/21

3回目のワクチン接種が出来る余裕があるなら、その分を、まだたったの一度も接種を受けていないアジア&アフリカの民草に、無償で提供するべきではないのか?9/22

トランプも酷かったけど、バイデンもかなり耄碌しているな。アフガンからの撤退も、オーストラリアへの潜水艦売却も、下からの情報がきちんと上がっていないか、上がっていてもきちんと判断できていないからだろう。9/23

ワクチン接種の証明書がなければ、物見遊山にも歌舞音曲にも参加できない世の中に対して、命の危険があるゆえに医師から接種禁止を命じられているおらっちは、最後の一人になっても反対するぞお!9/24

「語というものは、ちがった並べ方をすると、ちがった意味を生じるようになり、意味は、ちがった並べ方をすると、異なった効果を生じるようになる。」(田辺保訳・パスカル「パンセ」より)。例せば「三密」と「3密」、「自宅放置」と「自宅療養」、「SDGs」と「持続可能な開発目標」の如きか。9/25

莫迦なマスコミの代わりに、阿呆な大衆を、賢い知識人が教導しなければ、この世の中は闇だ、なんちゅうて元京大教授が、朝日サンケイ新聞で力説していたが、いまどき「知識人」なんてどこかに居るんかいな? 夫子自らが知識人と思っているなら、早速やってみなはれ。9/26

真夜中から朝まで、1時間ごとに、正確には毎時10分に黄色い水分で満杯の膀胱を抱えてトイレに運んでいたので大変忙しく、なんか大事な仕事をしていたような気持になったずら。9/27

「今夜は薬なしで頻尿を撃退するぞ!」と、固く決意して眠ったら、なんと5時40分まで熟睡できたので大喜びしたのだが、お陰で今日の夢日記に空白が生じてしまった。9/28

気力と根性でとうとう頻尿を撃退できたと思ったのだが、それは錯覚に過ぎず、昨夜はやっぱり2時間おきにトイレに通う羽目に陥ってしまった。やはり薬を飲まないと駄目なのだろうか?9/29

これから自民党の総裁選が始まるようだが、2回目の決戦投票で岸田に決まるのではないだろうか。本邦の闇の帝王、安倍蚤糞にとっては次善の候補だが、石破と連合した河野の当選だけは阻止したいからである。9/29

「岸田政権の本質は、さらに一層パワーアップされた安倍政権である」と見抜けない連中は、つるりと塗り替えられた表紙に闇雲に期待して、最新版の日本会議党に投票するんだろうね。9/30

   相撲とは神事たることを知らざりし異国の横綱遂に身を引く 蝶人
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西暦2021年長月蝶人花鳥風月狂歌三昧

2021-10-02 15:34:10 | Weblog

ある晴れた日に 第658回

「お庭にはいっぱい蝉の抜け殻があるのよ」といううちの奥さん
大いなる蛇が我が家に入りこむどうすることもできやしない
町内の誰かが日の丸国旗を出しているはてさて今日は何の祭日?
「古風なる音楽を聴きし障害児が落涙した」と聞かされし死刑囚以後藤井氏との面接を絶つ
「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」法隆寺には柿が生っていた
ワイラーの前にワイラーはおらんけどワイラーの後にはわいらあがおる
いつまでも輪舞を続けるヒメジャノメもうそろそろ交尾しないと
ガンジーという名のゴルファーを見つけたりガンジー選手を応援しよう
安倍蚤糞の継承を自負した二代目が安倍の真似して万事を投げだす
カス退陣の謎解き明かすてふ「クローズアップ現代」勇んでみたらスカスカなりき
権力の亡者どもが次々に我こそ首領と名乗りを上げる
懐かしの学友諸君が東京に集るっちゅうに行けないのよボク
ケータイの途中で「フィガロの結婚」のアリアを歌う学友カド君
人相の善からぬ男女が我こそは次期総裁なりとテレビに出まくる
最新のニュースを載せた新聞もあっという間に便所紙1巻
朝晩にぬらりタヌキが顔を出しもっともらしく総裁選を語る
「OKてふ言葉の原義をご存知か知らねば教えてしんぜよう」てか
病院で生年月日を西暦で答える患者は我一人のみ
ケアマネやスクールソーシャルワーカーがヤングケアラーの支援をするてか
鎌倉から桜が丘へ行く息子高座澁谷を歩いていたとか
善き夢を見たのであるがその夢を覚え損ねて悔しがる夢
官邸に睨まれて大阪に飛ばされた武田キャスター元気にしとるか?
たまさかにアオバセセリが生まれたが妻に会えずに命尽きたり
一瞬の露出に賭ける栗原嬢道路交通情報短し
夕刊が2時半に来るとは早すぎる明日の朝刊と同じ記事なり
グジャグジャと詰まらぬ噺を延々とこんなテレビを見るのは阿呆だけ
民草の1%の投票で首相が決まる奇怪なこの国
「土方だよ。あんたに土方ができますか?」そう言われて答えられないボク


 本当はどうしたらいいのかその訳を何故だかちゃんと伝えられない 蝶人
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