谷川俊太郎詩集「虚空」を読んで
照る日曇る日第1653回
<4+3+4+3=14>行の、いわゆるソネット形式で書かれた、シンプルな詩が並んでいる。
残らなくていい
何ひとつ
書いた詩も
自分も 「(残らなくていいい)の第一連」
というように、最晩年に差しかかった詩人の、空の空なる無常の境地を、披歴しているが、どっこいそう簡単にくたばる様な老人ではないことは、誰もが知っているでしょう。
こういう境地を「虚空」という題名や、ソネットとかの形式や、気取った美意識をかなぐり捨てて吐きだして欲しいと望んでいるのは、私だけだろうか。
妻君に空色歯ブラシ頼まれて交通事故で買えずに畢んぬ 蝶人