Sunflower, Surf's Up / The Beach Boys (1970, 1971)
ビーチ・ボーイズ(The Beach Boys)の魅力のひとつにあのコーラスがある。楽しい曲でもさびしい曲でも聴かせるあの独特のハイトーン・コーラス。これが曲によってはとても楽しい情景を思い起こさせたり、また、ある曲ではとても物悲しい寂しさを思い起こさせたり。聴く人の心の状態によって様々な効果を与える「必殺」の武器だ。サーフ・ソング時代を過ぎ、アルバムとしての評価が高い「Pet Sounds」をも過ぎて、レコード会社を移籍して発表されたのがこの2枚のはず。このCDではアナログ2枚が1枚のCDに収録されており、リマスターされている。その中にももちろんあのコーラスは採用されているのだが、どれもなんとなく物悲しく聴こえるのは当時のバンドの雰囲気がそうだったのだろうか。それとも心病んでいたと伝えられる作曲の中心人物ブライアン・ウイルソン(Brian Wilson)の心情だろうか。それとも聴いてる自分の感覚だろうか(なんせあれだけ「サーフィン行こう」って言ってたのに今作では「水辺には近づくな」だもんな…)。
自分がビーチ・ボーイズを聴くようになったのは「ペット・サウンズ」が一般的にも神格化され始めたあと。まだそれまでは自分にもロートルのイメージしかなく、オールディーズの範疇だった。だんだん彼らのすごさが色んな場面で語られるようになって、やっとCDで買って聴いてみたが、正直愛聴とまではいかなかった。ただサーフ・ミュージックとしてのビーチ・ボーイズはその頃から好きで、ベストアルバムを買ったり、様々なコンピ盤でアーティストからのリスペクトを受けていることを知ってだんだんと愛聴するようになる。
今でも「ペット・サウンズ」にはあまり思い入れはないけれど、やっと全体像が見えるようになり、彼らの歩んできた歴史を知って、自分が引っかかる曲やアルバムが出てくるようになった。自分でも意外だったが、引っかかるアルバムはペットサウンズ以降の「Wild Honey」やこの2枚だった。昔の明るさやティーンエイジの青臭さはすでになく、どの曲も静謐な感じがあり、否応なく悲哀を感じさせるけれど聴いているとしみじみと言いメロディだ。
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