十八世中村勘三郎十三回忌追善・名古屋平成中村座・同朋高校公園「義経千本桜・川連法眼館」「二人藤娘」(3月14日・同朋高校)
初代中村勘三郎は現在の名古屋市中村区出身。豊國神社のある中村公園内に銅像も建っている。そんな結び付きのある土地でありながら、現在の中村屋は名古屋で公演が多いとは言えない(本人達もインタビューでそう言っていた)。今回の「平成中村座」はその中村区にある私立同朋高校の体育館での興行。実は十八世中村勘三郎存命の平成18年(2006)にもこの高校で開催されている。そんな場所での開催ということで行く前からワクワク。まずは中村公園に行ってその銅像を確かめてきた。
↓ 平成29年(2017)に建立されたという初代中村勘三郎の銅像(写真下右)。
会場まではバスで移動したが、ターミナル駅にも法被を着た高校生のボランティアが案内をしてくれている。学園の周囲には幟も立ち、校舎には「おかえりなさい!名古屋平成中村座」の文字も(写真下3枚目)。体育館前は恒例の長屋が出てお祭りの雰囲気。やっぱりハレの日はこうでなくちゃ。普段の歌舞伎興行もこのくらい周囲を巻き込んで”お祭り”になっているともっと盛り上がると思うんだけれど。
会場内は床に座布団が敷かれている(最後方には椅子席もあり)。荷物や靴を持って座るもんだから結構狭い。もちろん脚は伸ばせないので正座、あるいは胡坐をかくことになるが、前後左右に同じ体勢の人が居るだけになかなか辛い。前の方の席だったので単眼鏡も要らず、演者の表情まで細かく読み取れる場所だったが、演目が進むにつれてどうしても脚やら腰が痛くなってきて集中するのが難しくなってくる。幸い自分は以前と比べて膝の調子は良くなったので胡坐で通したが、脚の弱いお年寄りとかはなかなか辛そうだったし、舟を漕ぐことも出来なさそう(笑)、みな自分の体勢の持っていき方に苦労していたようだ。雰囲気はいいんだけれど…。昔の歌舞伎は1日がかりだったそうだけど、今より正座をする機会が多かったとはいえ観る方も大変だったろうなァ。
「川連法眼館」は父母を慕う狐が人間に化けて主人に仕える役。所々に狐の動きが出てしまう演技が見どころ。俊敏な動きやトリッキーな仕掛けも難なくこなす勘九郎。体育館なので花道が長いのも普段と違って難しいものだろう。「二人藤娘」は有名な舞踊「藤娘」の2人版。七之助と部屋子の出世頭、鶴松が踊る。歳はもちろん七之助が上だが、振袖を着た姿、舞いや所作、体の軟らかさまで、鶴松には酷だが圧倒的に七之助が美しい。自分の目の前にやって来て客に視線を向けた時にも、”あ、目が合った”と中二病的なことを思ってしまうくらいドキッとする(オッサンなのに・笑)。美しい。
平成中村座の性格上、有名な演目ばかりになるのは仕方がないが、前回の名古屋城での公演と昼夜で2つも被ってしまっていたのは正直言って残念(ゆえに昼か夜かどちらを選ぶのかも悩んだ)。他の地でやった演目でも構わないから観たことの無い芝居が見てみたかった。それでも会場内外を含めて高校生が大活躍。自分達でかわら版を作ったり、案内に立ったり、アナウンスをしたり、会場係をしたりと初々しい。こういう興行の様子を間近で見られ、なおかつ直接参加して、面白い経験を積んだろう。
一、義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)
川連法眼館
佐藤忠信/忠信実は源九郎狐 中村勘九郎
源九郎判官義経 喜多村緑郎
駿河次郎 中村虎之介
亀井六郎 中村鶴松
川連法眼 片岡亀蔵
静御前 中村扇雀
二、二人藤娘(ににんふじむすめ)
藤の精 中村七之助
藤の精 中村鶴松
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