こんな気持ちでいられたら・・・一病理医の日々と生き方考え方

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病理医ドラマ、フラジャイル、出来は上々

2016年01月14日 | 病理のこと、医療のこと、仕事のこと

長瀬智也のようなイケメンが演じると、病理医もサマになる。偏屈だろうが、頑固だろうが、イケメンはなにをやっても許される。許されるといってもテレビドラマとしてで、ドラマの中では病理のことをわかっていない部長に嫌みを言われて苦労しているし、実際の医療業界の中でも病理医には相変わらず逆風が吹いている。

ただ、まあこのドラマのおかげで気持ちだけは長瀬智也になったつもりの病理医が何人かいるのではないか。きのうから放映が始まったフジテレビの医療ドラマ“フラジャイル”、原作のコミックにも忠実で、現役病理医から見て初回は80点といったところ、上出来ではなかろうか。

これまでにも病理医が主役または準主役のテレビドラマはあった。よく覚えているのは白い巨塔の大河内教授(第一作:加藤嘉、第二作:品川徹)、ナイトホスピタル(仲間由紀恵が元病理医、ユンソナが韓国出身の病理医)の二作。チームバチスタは原作とかけ離れた内容に呆れてテレビドラマはほとんど見なかったので病理医がいたようだがよく覚えていない。どれも比較的良心的に病理医を捉えてくれているけど、華がなかった。だから、イケメン病理医と美人病理研修医が出ているだけで華があってドラマが面白くなっている。

ドラマに出てくるような、あそこまで能力の低い臨床医はさすがに今の世の中いないと思うけど、威張ってばかりの臨床医は少なくない。人のことを下に見ようとする臨床医も多くて、病理医の事を何かと馬鹿にする医者もいないこともないが、デフォルメしすぎのようにも思う。そういう臨床医って、どこかで病理医にコンプレックス持っているわけで、かえって可哀相な存在なのだ。だから、病理医の存在を隠したがる臨床医はもちろんたくさんいるが優秀な臨床医は病理医に対して十分な敬意を払ってくれる。長く病理医をやっているとやっぱり超弩級のトンデモ医者に出くわすこともあって、病理をやっていて面白いと思えるような年になってきた。

 

気になる点もいくつか。まず病理医が定時に帰ることが出来る、なんていうのは大ウソで、迅速診断の予約があれば夜中まで手術に付き合うし、帰ろうとしたところで解剖の依頼が来ることも珍しくない。完全予約制ではないので、常に緊張している。いつまでたっても標本が片付くことはない。実際、コミックでも思いっきり残業している。

あと、舌を噛みそうな難しい診断名(線維形成性小細胞腫瘍:desmoplastic small round cell tumor, DSRCTとか、神経内分泌腫瘍)を使うものだから、少々イントネーションが違ったり、発音で区切るところが違ったりしていたのはチョット減点。病理の先生がちゃんと指導しないと、せっかくのドラマが台無し。長瀬智也も武井咲も診断名を覚えるのは大変だろうけど、がんばって欲しい。

それにしてもコマーシャルが多すぎる。一時間ちょっとの放映時間のうち、4割はCMだったのではなかろうか。ずっと観ていたのでストーリーはなんとか追えたけど、あんまり多かったので何のCMだか忘れてしまった。サブリミナル効果を狙ったのかもしれないが、これでは逆効果ではないかとフジテレビに言いたい。

 武井咲、頑張れ

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