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弱いチームを勝たせる(ボラ・ミルティノビッチ)

2009-05-12 18:49:43 | ワールドサッカー
名監督の定義が、もし弱いチームを勝たせることなら、世界一の監督はセルビア人のボラ・ミルティノビッチだと思います。W杯優勝のような派手なものはありませんが、86年メキシコ、90年コスタリカ、94年アメリカ、98年ナイジェリアと異なる国を率いて、毎回決勝トーナメントに進出させました。

彼の場合、短い就任期間でも結果を出せるところが売り物で、コスタリカでは正確な数字は忘れましたが、直前の就任だったと記憶しています。基本的に育成型ではなく用兵型の監督で、相手に合わせて選手を使い分けられるところが強さの秘密と聞いています。

ただ、残念ながら、当時はテレビ中継で監督の個性がわかるほど、サッカーをわかっていませんでした。そのため、私がミルティノビッチのやり方を映像で実感したのは、2000年のアジアカップで中国代表を指揮していたときです。

ミルティノビッチが中国代表に教え込んだことは、試合を見る限りでは正しいポジショニングと、長身FWがいる自軍の長所をどう生かすかでした。もともと、中国というチームは身体能力の高さはあります。

そんな身体能力の高い選手をSBに置き、サイドハーフと二人で共同してクロスを上げて長身FWが競るという形を作り、そのアジアカップでは準決勝まで導いています。ただ、なかなか国際舞台で結果を出せなかった中国の代表チームには、弱点もありました。

私が見たのは1次リーグの韓国戦でしたが、中国の選手は真面目過ぎて、戦術を守ることを意識し過ぎてボールへの反応がワンテンポ遅いという欠点がありました。相手の韓国に、球際の動きで競り負ける場面も結構ありました。

ただ、そんなミルティノビッチのサッカーを消化すれば自分たちは強くなれるという気持ちは浸透したようです。中国はその後に行われたW杯予選を通過して、史上初のW杯出場を決めました。本大会こそ3戦全敗でしたが、中国という当時はサッカー未開の地で結果を出したミルティノビッチは大したものです。

そんなミルティノビッチには、コンフェデ杯でアジア代表として出場する、イラク代表監督のオファーがあったようです。受けたかどうかは情報がありませんが、環境的に十分な強化期間を取れないイラク代表でも、ミルティノビッチは当たり前のように結果を出してしまうかもしれません。
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