氷川の森育ちの代表守護神(川島永嗣)

現在の日本代表正GK、川島永嗣選手といえば、川崎Fのイメージが強い選手です。もっとも、私のような浦和在住の者にとっては、浦和東高校から当時J2の大宮アルディージャに行った地元育ちのGKという印象です。プロ入りの際はJ1からもオファーがあったそうですが、どうしても1年目から試合に出たいという理由で大宮入りを選択しました。

川島の名前が全国に広まったのは、2003年ワールドユースUAE大会がきっかけです。この大会でU-20日本代表の正GKだった川島には、前途洋々な未来が待っているように思えました。大宮でも不動の正GKでしたが、ステップアップを狙ってJ1の名古屋に移籍したのは彼にとっては回り道になりました。

当時の名古屋は、正GK楢崎ががっちりとポジションを確保していました。噂では楢崎に海外移籍の話があったらしく、その後釜としての獲得だったようですが、楢崎が残留したことによって川島はリーグ戦では出場できなくなります。それでも、代表で楢崎が不在になるナビスコ杯では川島はほとんど全ての試合に出場し、GKとしての向上心は途絶えていないところを見せます。

当時は、最ももったいないサブGKでしたが、川崎Fが正GK候補として川島にオファーを出し、スタメン定着とともに代表にも入れるようになります。それでも、南アフリカW杯を控えた岡田ジャパンの正GKは楢崎で、川島は名古屋に次いで二度も楢崎の壁に跳ね返されるのかと、運命の皮肉さを感じたこともあります。

そんな川島の運命が変わったのは、岡田ジャパンの直前の親善試合で3連敗したことがきっかけでした。何かを変えなければいけないと判断した岡田監督は、正GKを楢崎から川島に代えます。「こういうきわどい試合を拾うためには、GKの驚くようなスーパーセーブが要る」というのが当時の岡田監督のコメントでした。

これで試合に出場できるようになった川島は、南アフリカW杯で日本代表をベスト16に導き、続くザックジャパンでも正GKになります。クラブレベルでも、ベルギーの弱小チームのリールスから、強豪のスタンダールへ移籍し、30歳の今はキャリアのピークに近い、いい時期だと思います。

川島は英語がペラペラという、海外挑戦には有利な材料を持っており、スタンダールに入団した永井の入団会見では通訳を買って出たほどです。サッカーの代表選手の語学力を聞くといつも驚きますが、欧州でプレーするためには当たり前のことなのかもしれません。

大相撲秋場所総括

一昨日、大相撲秋場所が千秋楽を迎えました。今回は初日を見に、国技館に行っていますが、場所中に3連休が2度あったのでテレビで見られる日も多かったです。優勝は横綱白鵬で、27回という優勝回数はもう上は大鵬(32回)と千代の富士(31回)しかいない、神の領域のような印象です。

ただ、今場所の白鵬の勝ち方は苦し紛れに放った強引な技がうまくはまった印象で、決して横綱相撲を取り切った優勝ではありません。この勝ち方がいつまでも通じるとは思えず、今場所横綱白鵬に勝った関脇豪栄道のような新しい力が世代交代を起こす可能性はあると思います。

それでも白鵬が優勝できたのは、横綱日馬富士や大関陣が序盤で星を落とし、有利な条件で優勝争いをできたからです。大関稀勢の里が唯一、14日目で優勝の可能性を残していましたが、既に3敗で可能性はわずかでした。もちろん、横綱という地位は優勝争いをしないと維持できない、厳しい地位なので、白鵬が必ず大鵬の記録を塗り替えられるとは言えませんが、その地位に取って変わる存在はまだいません。

注目の新入幕、遠藤は9勝を挙げて注目されましたが、足首の負傷で途中休場したのは残念でした。十両で通用した突き押しが幕内では通用しなかった厳しさは感じましたが、素早く右上手を引いたときの強烈な投げは将来性を感じました。皆勤していれば三賞も狙えましたが、9勝した以上番付は上がるので、来場所を楽しみにしたいです。

下位の力士では、初場所で写真を撮らせてくれた十両西筆頭、栃ノ心は靭帯断裂の重傷が治らず全休と寂しかったですが、もう一人の注目力士、東十両4枚目のエジプト出身、大砂嵐が10勝5敗の好成績を残しました。幕下時代に「この力士はいい」と目をつけていた力士の活躍は嬉しいです。

大砂嵐も、番付が上がってきたので、幕下時代のような突き押し一辺倒では押し切れなくなっています。今場所の成績は入幕の可能性も残しており、前に出る彼の良さが幕内相手に通用するか、期待しています。