北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

自主夜間中学フォーラムin釧路

2012-09-29 23:26:13 | Weblog
 北海道自主夜間中学フォーラムが釧路で開催され出席してきました。

 北海道には、札幌(札幌遠友塾)、旭川(旭川遠友塾)、函館(函館遠友塾)、そして釧路の「くるかい」という四つの自主夜間中学校がありますが、これらの活動を多くの人に知ってもらおうという趣旨で釧路市が主催したものです。


 自主夜間中学に対しては公立夜間中学というのがあります。

 公立夜間中学は学校教育法に基づいて自治体の教育委員会が設置するもので、これは全国的に非常に数が限られており、北海道には一つもありません。

 自主夜間中学とは文字通り自主的に学び直す場を地域が主にボランティアで運営している場です。

 実は学び直しにも明確な線引きがあって、不登校などで中学校をちゃんと卒業していない人たちの学び直しには、義務教育としての公立夜間中学校として公費を支弁することができます。

 しかし、仮に不登校などで出席していなかったにもかかわらず、学校側の配慮や親の求めなどで中学校の卒業証書をもらってしまったら、それはもう義務教育課程を終えたとみなされて、再度公費を使って学び直しをすることは経費の二重負担となり認められないのです。

 世間には、戦争や貧困で幼少期に適切な学校教育を受けられなかった人や、不登校で学校を離れてしまった人、さらには在日の人たちや結婚などで来日した外国人など、学校教育の間におかれた様々な学習ニーズがあるのですが、それを救い上げているのが自主夜間中学校というわけです。

 
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 自主夜間中学校に参加する方の多くは、実は戦時中に学べなかったお年寄りが中心で、そこに不登校の子供たちの学び直しや外国人などが加わります。

 ですから年齢層も幅広く、学業の進度もばらばら。それでも世代を超えたコミュニケーションのなかで、一人一人が成長して、ここから立ち直る人も少なくないのだそう。

 今日のフォーラムの最初は、東京の都立夜間中学校で長年教師として活躍され、その後自主夜間中学校「えんぴつの会」を主催されている見城慶和からの基調講演。


 【見城先生は、映画『学校』のモデルなのです】


 先生の中には数多くの人間ドラマがあることでしょうが、今日は不登校から立ち直った「シンちゃん」を中心にしたDVDを見せていただきました。

 また、札幌、函館、旭川、釧路の各自主夜間中学から一人ずつがそこでの思いを発表して会場の涙と拍手を受けていました。

 学ばないと生活に困ったり損をするということもありますが、人間はやはり学ばずにはいられない存在なのだ、とも思うのです。
 

 【涙なくして聞かれません】


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 さて釧路の場合、この自主夜間中学校「くるかい」の活動に対して地元からの寄付が回るシステムを実験中。

 これは地元商店の加盟による「スキップカード」を使い、購入金額の1%を寄付に充てることができ、その寄付対象に「くるかい」も指名することができるのです。




 人々の善意が買い物の一部というお金で、経済として回る仕組み。

 そして、善意を地域に還元しようと思えば参加している地域内のお店で消費をしましょう、ということ。

 善意、経済、域内循環、そして文科省じゃやれない学び直しを地域内のシステムとして包含しているなんて…、すんごいシステムでしょ。

 考えた人は釧路市役所の名物男のTさん。これで社会を変革してやりましょうよ! 


 【学校はおもしろいところです】
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【おまけ】『オウンゴールが続いた対中外交 - 山田 高明さん』を読んで

2012-09-29 22:25:59 | Weblog
 BLOGOSという様々な識者がブログを載せているサイトに、山田孝明さんという方が、『オウンゴールが続いた対中外交』と題する一文を投稿されていました。 → http://bit.ly/R20uPZ

 内容をかいつまんで言えば、中国は決して一枚岩じゃなくて内部は権力闘争の嵐。中には嫌日・排日の派閥があれば多少は親日的な派閥もある。

 そのうえで今現在の政権である胡錦濤・温家宝体制はどちらかというと親日で、次なる習近平は胡錦濤・温家宝体制に対する反体勢力を集めたものになるとみています。

 つまり、石原都知事の尖閣諸島買い上げやそうはならじと国有化を進めた野田政権は、中国の親日派の足を引っ張り、それが反日派に口実と力を与えてしまった、というのです。

 こうした権力力学は精緻に把握したうえでこれを上手に使った外交戦略が必要なはずですが、そういうことに触れた記事を久々に読んだ気がします。

 しかしこれを読むと、こういう情報ってちゃんと把握して伝えられていたのでしょうか。日本の大使館って一体どんな仕事をしていたのかと思ってしまいます


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 さて、この記事を紹介したところ、フェイスブック上で、「日本もいつまでも『領土問題は存在しない』と言い続けていてよいのでしょうか」というお尋ねがありました。

 どうもデモや破壊行為で痛い目にあった経済人の一部から、「領土問題は存在しない、で良いのか」という声が上がってきていますが、これはやや国内がぐらついているという相手にしてみれば「しめしめ」という状態なのではないでしょうか。

「領土問題は存在しない」というのは、日本にとっては外交上の橋頭保の一つで、それが崩されるということは、さらに次を求められることに外ならないと誰もが感じることでしょう。

 ですから、できるだけ前で防ぎたいと思うのが外交上の常識なのだと思います。

 デモや暴動などを見せつけておいて、外交交渉を再開するためには「領土問題は存在することを認めろ」という主張に譲歩するのは、デモや暴動は外交交渉を進めるうえで効果的だ、という前例を作ることにほかなりません。

 つまり、日本にとっては「外交問題は存在しない」というところから譲歩して得られるメリットがないのです。ただただデメリットでしかありません。


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 交渉学には「アンカリング」という言葉があります。ある品を取引しようと思う時に、たとえば(1万円で売りたいな)と思っているときにはまず、「じゃ2万円でどう?」とふっかけましょう。

 相手側が、「ええ?1万円くらいじゃないの…」とくればしめたもので、この「2万円」がアンカリングとなる数字です。

 交渉はここで1万円と意味のない2万円の間で始まり、しばしば「じゃ痛み分けで1万5千円でどう?」ということになるでしょう。

 これで本当は1万円でいいと思ったものがより高く売れたことになります。これがアンカリングの効果。

 「アンカリング」をwikipediaで見ると、「交渉において最初に極端な立場を取るべきだということを示唆しているとする専門家もいる」という記述がありましたよ。


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 今回の中国は、全く根拠のない「領土問題はわが領土」という随分ふっかけたところにアンカリングを打ってきています。

 これと「領土問題は存在しない」という日本側との二国間の交渉が、「じゃあ領土問題を認めたうえで棚上げにしよう」などというところにおさまったとしたら、これは完全に中国の勝利です。何も失わずに中国側が成果を得ただけではありませんか。

 したがって、少なくとも日本としては、「領土問題は存在しない」というところにアンカリングを留めるのではなく、こちら側も安価リングを打ち返すべきです。

 例えば、「これではODAを始めいろいろな支援は無理だし、国内からの投資も逃げるし、被害の補償はしてもらわないと困るし、貴国もメンツがなおつぶれるし、○○もだめだし××もできないし…」というように向こうが思いきり困るところにアンカリングを打って、「ODAの減額くらいで国民感情が収まりました」と何か得るくらいの交渉をしてほしいものだと思います。

まあ表で正論をぶちかましつつ、どこで矛を収めるかというのはまさに精神力勝負ですが、どこぞの団体のトップのように経済を人質に取られればすぐに根を上げる日本でいい、という考えの人がいて、そういう意見を言うこと自体が交渉を難しくしているという認識があるのかないのか…。

 まあそう言わせるだけ懐に入り込んで個人単位で懐柔が行われているその向こう側の成果を見るたびに、日本人の純粋でまっすぐで単純な思考回路が浮き彫りになり、ほくそえんでいるのは中国、ということになっていてちょっと残念です。

 まあ、親日ですごした平時のときにどう備えているかが問われるのでしょうけれどね。なんだか情けないです。


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 さらに一言加えれば、おそらく日本人は、『根拠なくふっかける』ということを「不誠実」で品のない行動だと思っているんでしょうね。

 国民を上げて(特にマスコミや知識人だけでなく庶民レベルでも)、品性と交渉を明確に分けて考えられないのが国際外交における日本人の大きな弱点です。

 国益をせめぎ合う国際外交の場面でも「お天道様が見ている」と思うのでしょうね。


 外交の場では日本国民をも良い意味で騙さないといけないというのはやっぱりハンデなのでしょうねえ…。
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