北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

観光講演会~鈴木勝先生~道東をどうする?

2012-09-10 23:03:07 | Weblog
 佐々木榮松記念釧路湿原美術館設立委員会主催による観光講演会が市内のホテルで開催されました。

 上記の委員会は、釧路湿原をこよなく愛し湿原の絵を数多く残しながら今年一月に亡くなった画家佐々木榮松(ささきえいしょう)さんの絵を集めた美術館を作ろうという運動を展開しているグループです。

 場所は既に、旧阿寒町でかつて「北緯43度美術館」としてあったものを購入することで計画が進んでいるのですが、この目的は、佐々木榮松さんの功績を残すという他に、この美術館を地域の人気スポットにして釧路の観光を盛り上げたいということでもあります。

 そんなわけで、そもそも観光で地域を盛り上げるとはどういうことかを語ろうと、今回は桜美林大学教授の鈴木勝先生をお迎えして観光講演会を行ってもらうことにしたものです。




 鈴木先生は、大学卒業後旅行会社のJTBに就職され、入社30年目にして退職、そこから観光の大学教授になったという変わり種。

 しかしJTB時代の経験や人脈を活かして、様々な観光の提言や実践活動を展開しておられるアクティブ派です。





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 今日のお話は、観光によって国全体、そして地域をどのように盛り上げたらよいか、ということで、豊富なデータやいろいろな事例を紹介する中で縦横に語って頂きました。


 そんななかで示されたのが、まずは日本という国全体の観光の立ち位置。

 外国人旅行者受入数の国際比較ではトップがフランスが年間7,400万人を迎え入れ、二位はアメリカの5,400万人などに対して日本は年間670万人で世界で33位、アジアでも8位と低迷している現状が紹介されました。

 鈴木先生は、「この統計には、海外で働く華僑などの国民が自国へ戻る里帰りなども含む数字であることは注意がいる」と言いますが、韓国(780万人)、シンガポール(740万人)、南アフリカ(700万人)などの国の後塵を拝しているとなると、ちょっとショックです。

 おそらくは国境を陸地で接している国々はお互いの行き来が激しく、陸地で国境を接していない日本では船か飛行機でしか来ることができないという移動手段の多様さと旅行費用のハンデを大きく背負っているということがあげられると思います。

 またそうなると当然訪日外国人の中身としては、韓国28%、中国16、台湾14.7%など近場のアジアが主要を占めており、中韓に偏ると、外交問題が一気に陰を差す、とも。

 欧米などもターゲットにして、多様に相手先を選ばなくてはいけないだろうし、道東は欧米が喜ぶデスティネーションになるのではないか、欧米人をねらえ、とおっしゃいます。


 【北京には北海道ガイドブックも売っていたそうです】


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 先生はLCC(低価格飛行路線)の実態を高松まで見に行ったそうですが、通訳として中国人留学生を使っているのを見て、「なぜ地元で中国語ができる日本人を使わないか、そうすれば雇用が生まれるのに」とおっしゃいます。

 このあたりに語学スキルと経費の面でもハードルがありそうです。

 また海外観光客が日本のどこへ来ているかを見ると、東京が64.4%と一極集中していて、北海道へ来る割合は全体の8.8%にしかすぎない。

 そんななか、青森県の動きがすごい!。北海道はみんな知っているから、その下だよというコバンザメ商法に近いのだが、「モンちゃん」というキャラが青森をyoutubeで紹介するビデオサイトが大人気。
 
【一路青森!お助け!?モンちゃん】http://www.youtube.com/user/afbchina

 「北海道の右側はもっと違う」ということになぜならないのだろうか、という問いはキツイですねえ。



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 さて、鈴木先生は今回の釧路入りに際して事前に網走や知床方面もぐるりと回ってこられたとのこと。

「観光ポテンシャルは十分に世界と互して行けると確信しましたが…」と言いながら、「バスなどで移動するたびに財布を開けることになりますが、その積み重ねがやはり高いなあ、という印象」とのこと。

「どのバスでもJRでも船でも、三日間乗り放題でいくら、というような移動を保証するサービスがあるともっと魅力的になると思いますがねえ」

 こういうことも声を掛けて、民間事業者を巻き込んで行かないとダメみたいです。



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 さて、講演の最後に、市を代表して私からお礼のご挨拶をせよ、という事務局からの依頼がありました。

 初めは講演の冒頭に、とのことだったのですが、直前になって「先生のお話を聞いた感想を含めて話をしてもらった方が面白いと思うので、最後にお願いします」とのこと。これはありがたいお申し出でした。

 そして私の感想。

 私は、釧路で道東観光を考える時にいつも、『北海道』というエリアのメリット・デメリットを感じています。

 それは海外観光客などをターゲットにした時に、東京、京都、大坂、北海道…と道東に考えられてしまって、新千歳へ降りたって札幌、小樽を回ったくらいで、「もう北海道は一度行きました」と言われてしまうのではないか、という心配です。

 北海道を分県せよ、とは言いませんが、『DOTO』というような新しいエリアブランドをしっかりと確立できれば良いのですがどうでしょうか。


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 次に、観光における「攻め」と「守り」を固めよう、というお
話。

 観光における「攻め」とは、そこにしかない魅力のことで、それは他にはない要素を徹底的に磨いてとんがらせる必要があります。

 ビアガーデンよりはヒア(冷)ガーデンが良いというのは、まさに釧路の涼しさが他にないことのアピールだから。

 その上で、では行ってみるのに交通インフラの問題や料金、言葉の問題やWi-fi環境、案内看板や情報提供のホームページなどの有無、など、インフラとして迎えられるだけの能力が備わっているかどうか、ということも重要。

 何が不満やボトルネックになっているかをちゃんと押さえて常なる改善も必要でしょう。

 
 そして個人的には、ここ釧路で釣りを始めたことでますますフィールドの魅力とポテンシャルを知ることになったことから、自分の遊んだり楽しむ能力が上がれば上がるほどより魅力的な顔を見せるのがここ道東の実力だということが分かりました。

 かつて坂本龍馬が西郷隆盛にあった時に西郷さんを評して、「小さく叩けば小さく響き、大きく叩けば大きく響く梵鐘のようだ」と行ったと伝えられていますが、道東も小さく見れば小さくしか見えず、大きく見れば大きく見えるのです。

 今回の設立しようとされている、湿原の画家佐々木榮松さんの記念美術館も、阿寒へ行ったのなら絶対行くべき魅力ある観光スポットとしての価値を高めて欲しいと思いますし、そうなってくださるものと期待をしています。


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 本当ならば、これだけ良い話を聞かせてもらえたなら、私からもそのお礼に30分から1時間くらい感想をぶつけて意見を戦わせたいくらいでしたが、残念ながら5分の挨拶に留めました。

 鈴木先生はこれからも釧路に注目するよ、とおっしゃってくださっているので心強い限りです。

 釧路の観光地域力をもっと高められるように、一人ひとりの参加とご協力をお願いします。
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