まりもの国際シンポジウムが阿寒湖畔のアイヌシアター「イコロ」で開催されました。
今年はマリモとタンチョウが特別天然記念物指定60周年の節目の年ですが、それに合わせて様々な記念行事が行われています。
今日のこのシンポジウムはその中でもマリモに関してはメインイベントとなる国際的な情報交換の場です。
シンポジウムの基調講演はこの八月まで環境省自然環境局長としてご活躍された渡辺綱男さん。
渡辺前局長からはこれまでの国立公園行政の変遷と、この間に国立公園や自然保護に対する期待と、国立公園の資源評価に対する認識の変化に応じて国立公園の施策の重点が変化してきた、というお話が語られました。
阿寒湖のマリモもこの文脈で読み解くと、単なる保護の対象から、世界に対する自然保護を訴える素材としての新しい活用があるかもしれません。
※ ※ ※ ※ ※
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続いて、三人のマリモ研究者による事例発表。マリモ研究者の一人は釧路の若菜さんですが、あとの二人は海外からの招聘です。
今回招聘した研究者は、ニュージーランドのクリスチャン・ボーデカーさんと、阿寒湖と同じく球状マリモが群生する海外唯一の湖、ミーヴァトン湖を研究しているアルニ・エイナルソンさん。
まずはボーデカーさんの発表。
マリモは、世界のいくつかの地域で減少が報告されていて、ベラルーシ、エストニア、ドイツ、日本、ロシア、スウェーデン、アイスランドで絶滅危惧種とされている。
また、水中の窒素、リンが多い富栄養状態はマリモの生育に悪影響を与えている。
それは、富栄養になるとプランクトンが増え、光の量が減ることが関係しているし、また水深が浅いところほど富栄養になる確率が高いのです。
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※ ※ ※ ※ ※
続いてミーヴァトン研究所のエイナルソンさんから、『マリモが済む双子の湖~ミーヴァトン湖と阿寒湖』というタイトルで話題提供です。
阿寒湖とミーヴァトン湖は大型マリモ群落を有する湖として有名で、北半球で多くのマリモが観察されているが球状になるマリモは非常に貴重。
両湖の違いを言うと、ミーヴァトン湖は湖面の面積が阿寒湖の三倍あるが、阿寒湖の水深が40mなのに対してミーヴァトン湖の水深は4mしかありません。
マリモ群落の健全維持に大事な要素は光、波、堆積物、再生、化学、他の植物との競争で、これらがうまく作用していなくてはなりません。
マリモにとっては光と栄養素がやはり大事で、日陰はまずくて、プランクトンの発生によっても光が劣ってしまいます。
また、泥が近づくとマリモが動けなくなります。特に今年は、今年は風が強かったり弱かったりしたためにマリモの上に泥が溜まった状態になり、急速にマリモが減少しました。
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その結果、ミーヴァトン湖のマリモは、2007年には調査を開始した1979年のなんと2%にまで減少してしまいました。
この状態が続けばあと数年でミーヴァトン湖からマリモは消滅してしまでしょう。しかし希望を失わず最善を尽くしたいと思います。
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【恐るべきミーヴァトン湖での減少の実態です!】
※ ※ ※ ※ ※
最後は若菜さんの発表です。
球状マリモを含む阿寒湖の特性としては、カルデラからできた古阿寒湖ができたのですが、その湖は一度せき止めていたところが切れて湖の水位が下がっていた時期があったと考えられています。
その結果川筋ができて、今の湖底には谷地形が形成されたのです。
さらにその後に再度せき止められて現在の湖に至るのですが、この湖底の地形的な複雑さが阿寒湖の特徴的な環境となっている。
地質も複雑です。球状マリモは波動が起きて転がってできますが、泥混じりの砂くらいのところに形成されます。
もう一つの要素は風ですが、風は強さと吹き抜ける距離が必要です。それはつまり、マリモを動かすためには湖に一定以上の大きさが重要になるということです。
さらにマリモは豊富な冷泉近くで生育しますが、これも阿寒湖は多様な湧水があって、これらがマリモの希少性を強調しているのです。
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若菜さんの結論は、「球状マリモの生成には特殊な環境条件とその緻密な組み合わせが必要であり、そのことが存在の希少性の基盤になっている」ということ。
調べれば調べるほど、マリモの不思議な生態と生息条件の厳しさが分かってきます。
※ ※ ※ ※ ※
今日のような、マリモの国際的な研究者同士が情報を提供し合うという場面はおよそ初めて。
こうした関係がさらに深まることが期待されますが、それにしても、マリモの研究にはどうやら世界を見渡しても先達はいないようです。
私たちの前に道はなく、私たちの後に道ができます。
ミーヴァトン湖のマリモは絶滅の危機に瀕しています。
阿寒のマリモはやはり世界の財産なのではないか、という気持ちがどんどん強くなってゆきます。
今年はマリモとタンチョウが特別天然記念物指定60周年の節目の年ですが、それに合わせて様々な記念行事が行われています。
今日のこのシンポジウムはその中でもマリモに関してはメインイベントとなる国際的な情報交換の場です。
シンポジウムの基調講演はこの八月まで環境省自然環境局長としてご活躍された渡辺綱男さん。
渡辺前局長からはこれまでの国立公園行政の変遷と、この間に国立公園や自然保護に対する期待と、国立公園の資源評価に対する認識の変化に応じて国立公園の施策の重点が変化してきた、というお話が語られました。
阿寒湖のマリモもこの文脈で読み解くと、単なる保護の対象から、世界に対する自然保護を訴える素材としての新しい活用があるかもしれません。
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続いて、三人のマリモ研究者による事例発表。マリモ研究者の一人は釧路の若菜さんですが、あとの二人は海外からの招聘です。
今回招聘した研究者は、ニュージーランドのクリスチャン・ボーデカーさんと、阿寒湖と同じく球状マリモが群生する海外唯一の湖、ミーヴァトン湖を研究しているアルニ・エイナルソンさん。
まずはボーデカーさんの発表。
マリモは、世界のいくつかの地域で減少が報告されていて、ベラルーシ、エストニア、ドイツ、日本、ロシア、スウェーデン、アイスランドで絶滅危惧種とされている。
また、水中の窒素、リンが多い富栄養状態はマリモの生育に悪影響を与えている。
それは、富栄養になるとプランクトンが増え、光の量が減ることが関係しているし、また水深が浅いところほど富栄養になる確率が高いのです。
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続いてミーヴァトン研究所のエイナルソンさんから、『マリモが済む双子の湖~ミーヴァトン湖と阿寒湖』というタイトルで話題提供です。
阿寒湖とミーヴァトン湖は大型マリモ群落を有する湖として有名で、北半球で多くのマリモが観察されているが球状になるマリモは非常に貴重。
両湖の違いを言うと、ミーヴァトン湖は湖面の面積が阿寒湖の三倍あるが、阿寒湖の水深が40mなのに対してミーヴァトン湖の水深は4mしかありません。
マリモ群落の健全維持に大事な要素は光、波、堆積物、再生、化学、他の植物との競争で、これらがうまく作用していなくてはなりません。
マリモにとっては光と栄養素がやはり大事で、日陰はまずくて、プランクトンの発生によっても光が劣ってしまいます。
また、泥が近づくとマリモが動けなくなります。特に今年は、今年は風が強かったり弱かったりしたためにマリモの上に泥が溜まった状態になり、急速にマリモが減少しました。
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その結果、ミーヴァトン湖のマリモは、2007年には調査を開始した1979年のなんと2%にまで減少してしまいました。
この状態が続けばあと数年でミーヴァトン湖からマリモは消滅してしまでしょう。しかし希望を失わず最善を尽くしたいと思います。
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【恐るべきミーヴァトン湖での減少の実態です!】
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最後は若菜さんの発表です。
球状マリモを含む阿寒湖の特性としては、カルデラからできた古阿寒湖ができたのですが、その湖は一度せき止めていたところが切れて湖の水位が下がっていた時期があったと考えられています。
その結果川筋ができて、今の湖底には谷地形が形成されたのです。
さらにその後に再度せき止められて現在の湖に至るのですが、この湖底の地形的な複雑さが阿寒湖の特徴的な環境となっている。
地質も複雑です。球状マリモは波動が起きて転がってできますが、泥混じりの砂くらいのところに形成されます。
もう一つの要素は風ですが、風は強さと吹き抜ける距離が必要です。それはつまり、マリモを動かすためには湖に一定以上の大きさが重要になるということです。
さらにマリモは豊富な冷泉近くで生育しますが、これも阿寒湖は多様な湧水があって、これらがマリモの希少性を強調しているのです。
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若菜さんの結論は、「球状マリモの生成には特殊な環境条件とその緻密な組み合わせが必要であり、そのことが存在の希少性の基盤になっている」ということ。
調べれば調べるほど、マリモの不思議な生態と生息条件の厳しさが分かってきます。
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今日のような、マリモの国際的な研究者同士が情報を提供し合うという場面はおよそ初めて。
こうした関係がさらに深まることが期待されますが、それにしても、マリモの研究にはどうやら世界を見渡しても先達はいないようです。
私たちの前に道はなく、私たちの後に道ができます。
ミーヴァトン湖のマリモは絶滅の危機に瀕しています。
阿寒のマリモはやはり世界の財産なのではないか、という気持ちがどんどん強くなってゆきます。