日本建設機械施工協会北海道支部の総会で講演をしてきました。
今回の講演は、機械課長としての職責に関わるものではなくて『自由なテーマで結構ですから』と事前に言われていたので、喜んで「二宮尊徳と報徳思想について」というタイトルで自由にやらせていただきました。
こういう形の講演会は珍しいのですが、人生の先輩諸氏を相手にしつつも、私が日頃からチャンスさえあれば伝えたいと思っていた報徳について、1時間20分にわたって思いのたけを伝えました。
ところが今日の総会には施工協会の東京本部から辻さんという会長も見えていて挨拶やら中央の動向についてお話をしてくれたのですが、今日はとんぼ返りと言うことで私の話が聞けないことをちょっと残念がっていました。
そして総会の途中の休憩時間に私のもとへつかつかと歩いてきて、「ところで小松さん、今日はどのようなお話をされるの?」と話しかけてくれました。
そこで私が「日本にも道徳と経済を融合させた経済思想があるということを教養として知っていただきたいと思います。特に経済至上主義の世間に対するアンチテーゼとしての報徳は生き方としてはアリだと思いまして」と言うと、会長は驚いたように、「実は私の家は近江商人の出なんだよ」とおっしゃいます。
「おお、すると『三方よし』ですね。『売り手よし、買い手よし、世間よし』という商売の価値観はまさに報徳に通じるところがあると思います」
「そうなんだよ、今のような"行き過ぎた価格競争はいけない"ということで品質確保法というような法律もできたんだけど、世間が全体としてそういう機運にならないんだよ」
「おっしゃる通りです。多少迂遠な道ですが、公共事業を直接語ることよりも、報徳思想や三方よしのような価値観念を語り広めるところから始めないといけないのではないかと思います」
「ああ、今日はあなたの話が聞きたかったなあ(笑)」
辻さんはそこで時間切れでお帰りになりましたが、私の方も今度は三方よしの哲学についてお話を聞きたいと思いました。
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さて、報徳の方はざっくりいうと、尊徳先生の生涯、その思想、影響を受けた経済人、そして北海道と報徳との関わりという形にまとめて、こちらもフルに80分にわたって存分にお話ができました。
実は北海道で、まともに報徳について語り尽くした講演をしたのは初めてでした。
聞かれた方も、二宮金次郎の銅像があることは知っているけれど彼が何をしたのか何を考えたのか、日本社会にどういう影響を与えているのか、などについてはおそらく考えたことがなかったでしょうから、皆さん興味深く真剣に聴いてくださって、こちらも本当に気持ちの良い時間でした。
終わった後の懇親会で感想を伺うと、
「あ、これは小松さんは思ってなきゃ言えない内容だよな、と思いました」
「講談みたいで楽しかった」
「経営学と言うと、皆ドラッカーやマネジメントの話ばかりするんだけど、なんだ日本にもっとすごいのがあったんじゃないか、と思いました」
「こんな話ができる後輩が開発局にいるとは思わなかった(笑)」
「『お天道様が見ているぞ』と言われたら日本人は背筋が伸びますね。それこそ神道の力なんだな、と思いました」
「(依田勉三や二宮尊親さんがいた)十勝に自主独立の気風がなぜ高いかが分かりました」
…といった感想の数々。
やはり心に響いた方は結構いたようで、「お願いしたら外でもやってくれますか?」というので、「休暇を取れば可能ですよ」とお答えをしておきました。
報徳については、掛川で学ぶことができた私が地域にお返しできる報恩だと思うので、できるだけご要望に応えたいと思います。
そうか、今日は私を知らない方たちに向かっての報徳デビューだったんですね(笑)
お聞きいただいたみなさん、ありがとうございました。