今日は東京で「舗装マネジメント研修」が開催されました。
これは、昨年国土交通省から「舗装点検要領」という文書が出されたことを受けて開催された自治体職員向けの勉強会です。
道路に付属する構造物にはいろいろありますが、おおきなところでは橋、トンネルがあり、舗装面も道路構造物に位置付けられます。これ以外にも看板だとかガードレールなどもありますが、大物と言えば、橋、トンネル、舗装の三つ。
このうち橋とトンネルは、これが通れなくなると物流や交通が大変なことになるということから、しっかりとした点検要領が定められていて、5年に一度点検しなさいということになりました。
しかし舗装に関しては、どこか「まあ傷んだといっても、走られないわけではないでしょう」ってな調子で、かっちりした点検要領が作られずにきました。
国がまだそんな調子だと、地方自治体も舗装を修繕するという機運が湧きにくく、つい点検や修繕は後回しになってきました。
しかしさすがにここへきて、日本中の道路の痛みが進行してきて放ってはおけなくなりました。
舗装というと、つい表面のアスファルト部分の痛みが目について、そこがひび割れたりぼろぼろになったのならアスファルト部分だけを打ちかえればよい、と考えがちです。
しかし表面が割れるとそこから水が入って、舗装はアスファルトを支えている砂利の層(路盤といいます)も傷めてしまうので、上だけ修理してもやがてまた割と早く傷んでくるということをくりかえしてしまいます。
道路の痛みは、アスファルトだけではなくて路盤まで傷んでいないかということを見極めたうえで修繕計画を立てるべきなのですが、そういう細かいことを財政に説明して納得させるのがいままでは難しかったのです。
今日のパネラーのお一人で北海道科学技術大学からお越しの亀山先生は、「説明できないことにはお金はつかないんです。だから今から修繕記録を蓄積して、一見痛みがそれほどではなくても、早めに修繕することが結局安上がりになるということを証明して説明できるようにしなくてはいけない。この点検要領ができて、ようやくその端緒ができた、ということなんです」と説明してくださいました。
説明できないことにはお金がつかない。自分だけが直感的にわかるのではダメなんです。
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その一方で、もう一つ今回の点検要領が特徴的なことは、修繕するかどうかの判断で「目視で良い」とされたことです。
これまでは、ひび割れ率が40%とか、わだち掘れが40ミリなどといった基準が一応あって、それに至ったものは修繕するとしてきたのですが、この調査をするのに専用の検査自動車があってこれが非常に高価だったことが調査そのものを妨げている要因の一つでした。
今回の改定では、そこの判断は道路管理者の裁量におおきく委ねたところがあり、簡便で安価な調査手法で現状を把握して調査計画を立てることができるようになりました。
今日の研修会でも早速有名電機メーカーのT社が、ハンディカメラで道路を撮影した画像を送ってくれれば、その画面上のひび割れを計測してひび割れ率を見えるかしてくれるというサービスをプレゼンしていました。
AIが発達してくることもあって、現状把握に様々な業界のアイディアと工夫が盛り込まれて、技術が発達ししかも安価になってくることが期待できそうです。
もっとも、こうした努力によって修繕すべき箇所が把握されても、最後に予算がなくて直せない、ということも当然予想されます。
北海道の人たちは我慢強いので、ちょっとくらい道路が悪くても「まあ国にも地方にもお金ないんだべさ」と我慢してしまうかもしれません。
道路が悪くて、物流や観光が良くなるはずがないのですから、少しくらいは要求水準を高めるべきです。
北海道の道路を良い形で後世に残してゆけるかどうかは、今の世代の頑張りが大事なのだ、ということを考えさせられた今日の研修会でした。