90歳になる母親が「マイナンバーカード(以下「マイナカード」)を取りたいんだけ」と言い出しました。
「おや、どうしたの」
「保険証がマイナカードに変わって今の保険証が使えなくなると困るからさ」
まあ言いたいことが分からないわけではありませんが、90歳になってそれほど急ぐ必要があるかなあ、と思いながら、「僕の方でちょっと市役所と相談してみるよ」と言って話を引き取りました。
親の希望はできるだけ叶えてあげたいと思う反面、急げばよいというわけでもなく、一番問題の少ない方法を再提案して不安を取り除いてあげるのが良いでしょう。
特に最近はマイナカードの様々な登録ミスからこれを忌避する声や挙句には返納するというようなパフォーマンスも喧伝されてちょっとした騒ぎになっています。
それを受けて政府では、暗証番号を自ら管理できない人には暗証番号不要とするなど、マイナカード取得困難者を減らす工夫も始まったようです。
両親の場合は暗証番号がなくて保険証として使えるマイナカードが現実的ではないかと思うのですが、それはどのように取得できるでしょうか。
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まず手始めに両親の住む市役所のホームページを見て、マイナンバーカードの取得方法を調べてみましたが、出張サービスで取得できる場合もあればリモートでパソコンやスマホによる申請も可能です。
ただ、今の申請のやり方では健康保険証として使う場合には必ず本人確認のための暗証番号を登録しなくてはならないようです。
この点を市役所へ電話して訊いてみました。
「マイナカードを保険証として使うには暗証番号登録が必要になるのですか」
「はいそうです」
「暗証番号登録はどのようにするのですか?」
「マイナンバー発行申請をしていただいて、できたカードをご本人様が市役所へ取りに来て本人確認をする際に登録していただきます」
「政府の方で暗証番号のいらないマイナカード発行と言う話が出ていますがそれはどのように対応していただけますか」
「まだ現場には具体的な対応が下りてきていないのでお答えしかねます」
「今保有している健康保険証はまだしばらくは使えるのですね」
「政府の方針では2025年の秋に今の保険証を廃止するという予定なので、それまではまだ使えます」
…とまあこんな感じで、両親が性急にマイナカードを取得する積極的な意味は感じられませんでした。
このやりとりを母に話して、「とりあえず今の保健証は使えるし、暗証番号不要のマイナカードの話しもふわふわしているから、ちょっと静観しよう」と言うことで納得してもらいました。
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そもそもマイナカードは本人確認をするという意味のもので、カード所有者と本人写真、さらに暗証番号と言うダブル・トリプルチェックが行えるのがポイント。
健康保険証としての機能や住民登録などはそれぞれのデータベースサービスとその都度リンクさせるもので、カードにそれらの情報が入っているわけではありません。
ご情報の入力や銀行口座との紐付けのミスなどもありますが、基本的にはプログラムやマニュアル、そして作業時のミスなので、行政の無謬性の咎め立てすぎるのはどうなのかな。
この手の個人登録は皆が参加してこそデータベースが力を発揮するものなので、参加しないということは社会の連帯・紐帯の力が弱まってしまう。
より良い社会を作るために参加しようよ、という思いに対して敢えてそうならないことを喜んでいる人がいるというのはちょっと残念です。
まあ我が親ながら90歳を過ぎてなお、新しい社会の流れについてゆこうとする意欲は立派ですし、良い形でサポートをして行きたいと思います。