北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

お茶をデザインで売る ~ 味や産地じゃないんだな

2023-07-10 23:17:04 | Weblog

 

 この週末の孫の誕生会をニセコの保養所で過ごしたことは昨日書いたとおり。

 保養所を後にして、「さて、ニセコで観光でも」と考えて向かったのはお茶にまつわるさまざまな商品の開発販売と文化発信をしている"La Villa LUPICIA"。

 こちらの会社は世界中の茶葉を仕入れてブレンド、焙煎、容器デザイン、販売を行うお茶屋さんです。

 もともとは東京でビジネスを展開していましたが、2017年になんと本社を東京から北海道のニセコに移して話題になりました。

 ルピシアの会長である水口博喜さんの突飛な行動に注目したインタビュー記事はネットで見ることができますが、水口さんは本社移転の理由として「自然の中に身を置くともっとクリエイティブになれる」ことを挙げています。
 
【NHKインタビュー記事『なんでニセコへ本社移転?移住した社員たちのホンネは』】 2022年4月28日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220428/k10013601511000.html


 さらには、「人間にしかできないこと、それは『四季を感じること』だと思った。都会にいると感じられないが、北海道は雪がとければ山菜、夏には海産物と次々に楽しみが生まれてくる。自然に身を置くともっとクリエイティブになれるんじゃないか、そう考えたんです」とも。

 ただ社員の中には東京からニセコへ移ることに抵抗があったり、いろいろな事情でできなかったりする人たちもいて、本社機能の一部は東京に残しているとのこと。

 ただ、デザインと発想がビジネスの重要な要素になっているところは、どこに会社があるかという価値って実は重要なのではないか、とも思えます。


    ◆


 さて、こちらのお店では実際に紅茶を中心にしたお茶関連商品のほかに、その場で飲めるお茶ドリンクやパン、お菓子類、アイスクリームなどの販売も行っています。

 並ぶお茶を見ていると、パッケージやラベルのデザインがとても多様で特徴的です。

 紅茶も世界の様々な地域から取り寄せたお茶が並び、さらにそれらにいろいろなフレーバーを加えたフレーバーティーも人気のよう。

 私が関心を持つ日本の緑茶はどうかな、と見ると、静岡や九州など産地を売り物にした商品展開はほとんどありません。

 緑茶のパッケージを見ても産地表示は「日本国内」とあるだけ。

 これって、静岡県の中でも掛川茶だ菊川茶だ、御前崎のお茶だ、と産地を競う売り方からすると「???」な感じ。

 消費者に対して産地がどこでそれによる味の違いに興味を引かせるのではなく、パッケージの可愛さやそれが与える雰囲気に対して対価を払ってもらえばよいという売り方です。

 お茶の産地や味ではなく、お茶が与える良い感じの雰囲気こそが売り物だ、というのは静岡ではなかなか見当たらない売り方で(これが売りなのか!)と私には目からウロコでした。

 ドリンクで飲めるお茶の中にも紅茶に交じって緑茶がありましたが、ここで売っていたのは「八女(やめ)のゆたかみどり」の冷茶でした。

 産地と品種で売るなら、「掛川のやぶきた深蒸し茶」でも「御前崎のつゆひかり」でも良さそうなものですが、そうではないところがルピシアのビジネスなのでしょう。

 ただルピシアではお茶にまつわる冊子を長年にわたって発刊して来て、広い意味でのお茶文化を発信し、お茶に対する好感度を上げ、お茶が好きな自分が素敵であるという発信をし続けているという戦略は素晴らしいところがあると思います。

 ショップの横には長年にわたってルピシアが生み出してきたデザインを展示する"プチミュゼ(小さな博物館)"も併設されていて、これを一通り見るとお茶文化のすばらしさに舞い上がるような仕掛けにもなっています。

 自分たちは何を売っているのか?

 商品を売ることを通じて消費者に満足と幸せを与えている。

 そんなポリシーが伝わってくるトータルデザインの空間を味わいました。

 
     ◆


 隣接する敷地にはレストランも展開していて、結構なお値段ですがニセコでリゾートを楽しむ人たちならばそれほどのことではないのかもしれません。

 ニセコという場所の魅力を力に変えて、このお店があることでニセコの魅力も増している、そんな物語の相乗効果を感じたのでした。 

コメント
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