行きつけの床屋さんの話。
先日「Lineで時間もわかる予約システムができました」と連絡がありました。
床屋さんとは古い予約の連絡もLineでやりとりをしていましたが、この度そのLineから予約システムが展開できて、空いている時間帯も把握できるようになりました。
空き時間は1時間単位で、毎正時から翌正時までが一コマです。
実際には、入れた予約をお店側で確認して再度「大丈夫です」と連絡を入れてくれることになるのですが、空いている時間が分かるので双方にとって安心な形になりました。
「これでずいぶん便利になりましたね」というと、いつも髪を切ってくれる床屋のKさんは「まあ良いところと悪いところがあるんですが」と苦笑い。
「良いところは、お客様が床屋さんで絶対に切ってくれるかどうかがわかることですよね。でもこちらでは、予約のシステムが一時間単位で組まれているのに合わせられるか、ということがあるんです」
「それはどういうこと?」
「例えば前のお客さんがパーマのように長く時間がかかる方だったりしたら時間がずれちゃうじゃないですか。それをお客様が『この時間に予約したのに』と不快に思われるかどうか」
「なるほどね」
「それに、僕が髪を切るんだったら1時間で大丈夫なんですが、若手のまだ不慣れな子が担当すると1時間以上かかってしまったりするかもしれず、1時間単位というのも微妙なところです。まあ問題は、そのことをお客様がどう思うかなんですけどね」
あくまでも時間がずれたりするような運用も、お客さんがそれをどう思うかだ、というところに(わかってるなあ)と思います。
会話をしていて、Kさんの修業時代の話になりました。
「そもそも理容師の免許を取ってからどれくらいで実際に髪を切れるようになるんですか?」
そう訊くとKさんは、「僕は最初のお店でアシスタントとして髪を切る以外のお店のことができるようになるまで2年かかりました。今のうちのお店で言うと、本人のやる気とセンスの問題もありますが、お客様の髪を切れるようになるにはそこから1年半というところでしょうかね」
「免許を取ったらすぐに髪を切れるわけじゃないんですね」
「ええ、アシスタントとしては顔剃りとか掃除とか備品の用意、あとは電話の応対とか接客なんかも見られます。これらができるようになってから初めて人の髪を切れるようになりますが、それでも最初は友達だったり周りのスタッフの髪などで練習させてもらって修業を続けるんです」
「ここまでできるようになったらお客さんの髪を切ってよい、という基準ってあるんですか?」
「うちは作ってます。できていなかったら、『こことここの項目がまだ未熟だよね』と話し合います。見極めは先に働いていた3人の総意で、このお店が求める水準に達しているかどうかを事前に設定してある技術項目の出来不出来で判定します。なんとなく恣意的な運用なんかができないように気を付けています」
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組織の中で人を育てるってなかなかに難しいテーマです。
大きな会社でも、できることとできないことを明確にして本人と話し合うなんてなかなかできない人材育成方法ですが、こちらの床屋さんではしっかりとやられているようです。
目に見えやすい手業だから、ということもありそうですが、ちゃんと接客や電話応対も本人評価にはいっているというのが驚きでした。
客商売ではお客様に不快な思いをさせないことはとても重要なスキルなんだそうで、それだけ重要視されているとのこと。
若いのにしっかりしてるなあ、と改めて感心したのでした。
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