今日は朝から「野生生物と交通」に関する研究発表会を聴講してきました。
この手の研究発表会の多くはコロナ下ではリモート開催だったものが多く、今日の発表会も会場に参加した形で行われるのは3年ぶりとのことでした。
開会のあいさつの後の特別講演は道庁環境生活部樋熊対策室の方による「北海道ヒグマ管理計画と諸課題への対応について」と題した、ヒグマ対策のお話。
北海道におけるヒグマは、自然動物の象徴でもある一方で農業被害や人的被害も大きな、しばしば害獣にもなる存在です。
一時は毛皮や熊の胆が売れるというのでいわゆる「春熊駆除」と言う形で制限なく狩猟の対象となっていた時期があります。
しかしそのために全道の熊の頭数が減って絶滅の可能性が出たことから春熊駆除は中止されました。
しかしそれと並行して隣地境界での営農放棄などによって熊が人里にきやすい環境になり、農業被害を及ぼしたり、果ては人との遭遇によって人的被害も出てくるようになりました。
そこで道庁では令和3年に「北海道ヒグマ管理計画」を策定し、人とヒグマの軋轢を緩和することを目指すと同時に、地域によっては絶滅の恐れのある地域個体群の存続を図ろうとしています。
【道庁 ヒグマ対策の手引き】
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/skn/higuma/higuma_taisaku.html
このあたりの最新事情は道庁のホームページをみていただくのが一番ですが、まだまだヒグマに対する知識が一般の道民にも欠けているところがあって、講師は「学校教育や社会教育を通じてヒグマの知識をもっと持ってもらいたい」と述べられました。
野生動物が鉄道や自動車と接触するという事故(=いわゆるアニマルアタック)は年々増えているのですが、その中でも熊とそれ以外のシカやキツネなどと違うのが、接触したのが熊の場合はハンターさんを呼んで死んでいることを確認しないと除去できないことです。
またもしも事故に会いながら死んでいない時はどうしたら良いかの判断が難しい、法律のエアポケットで宙ぶらりんな位置づけにもあります。
今では春熊駆除を止めたことで個体数は漸増の一途をたどっており、市街地に迷い込んで人間社会と接触するアクシデントも増えています。
また一方でハンターの高齢化によって適切に駆除できる社会の力は減りつつあります。
こうした課題を今後に向けて一つずつ解決してゆかなくてはなりません。
講師が述べて面白かったのは、「ゴースト熊」ということでした。
これは住民が「熊らしきもの」を見て警察に連絡することで、その多くは見誤りなのだそう。
そもそも熊もさすがに市街地にはそうそう出てくるものではありませんが、しばしば人を熊だと思ったり、落ちている糞を熊のものだと思い込んでしまうことなどで「熊らしきもの」が独り歩きして社会不安を増大させてしまうのです。
一方で登山や山菜取り、釣りなどで人間が熊の住処に入り込んでゆく場面も多くあります。
自然の中に入るためには、熊に対する正しい知識と正しい備え、対処の仕方などを十分に学んでからにしたいものですね。
北海道で森や林の中に入るときは熊鈴と熊スプレーは必須です。
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