北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

客が選ばれる時代 ~ 除雪者の声を聞け

2015-01-10 21:24:41 | Weblog

 

 我が家のお向かいはある会社の排雪サービスを購入していて、年が明けたこれからは週に一度、家の前に積んだ雪をホイールローダーとダンプが来て運んでくれます。

 お向かいは高齢者なので道路の除雪は手伝っているのですが、今朝は丁度私が除雪をしていた時にドーザがやってきました。

 排雪作業は壁から数十センチは取らずにその前の雪を積んでゆくのですが、(もう少し持って行ってもらえると楽なのに)と思っていました。

 ダンプが一杯になり、一度作業が中断したところでオペレーターのおじさんに、「壁際を削ってもいいですか?」とサインを送ってみたところ、「いやあ、勘弁して下さい~」という声が返ってきました。

「ダメなんですか?」と訊くと、「作業場は壁から50センチ離して雪を取ることになっていて、それも本当は壁際に積むんじゃなくて壁の前に積んだ雪を取ることになっているんです。さすがにそれは無理だと思うので持っていきますが…」

 そうして最後には、「そういう風にしないと、持っていく雪が増えて切りがないんですよ。もう持っていく先がなくて」と渋い顔。

「そういえば運ぶ雪はどこへ持っていくんですか?」
「この界隈だったら盤渓へ行く途中の大きな公園だけど、そこは5万立法メートル入れたらそれで後は受け入れないことになってる。だからそこが終われば、もっと遠くの雪捨て場へ行くんだけどそうなると効率が一気に悪くなるんです。もうお宅さんの住んでいるこの辺りは雪捨て場がないから、排雪業者もやりたがらなくてどんどん手を引いてるよ。まあ根本的にはこれだけの町を作っておきながら雪の処理のことを考えていないまちづくりの問題だと思うけどね」

 重機のオペレーターの方から「まちづくり」という単語を聞くとは思いませんでした。しかし確かに出る雪を処理することがいつまで経っても実現できていないというのですから、雪国の百万都市なんてどれだけ誇れるものやら。


       ◆  


「やっぱり作業は大変ですか?」と、今度は作業の大変さを訊いてみました。

 すると、「賃金も安いし夜は寝られないし、冬の排雪ならだれもやりたがらないよ。うちは元請けの夏仕事をやっているんでその付き合いだよ。まあ元請けさんとこの部長さんがすごくいい人だから、その人でもってるんじゃないかな」

「いやなお客もいますか」
「いるね。玄関前に少し残った雪を『なんでこれも持っていかないんだ』って電話する人とか、『いつくるかを紙に書いて事前に配ってくれ』とかね。とてもそこまではやっていられないってことを理解してくれない」

「そういうクレーマーはどうするんですか」
「いま受け元には『ブラックリストを作ってくれ』って言っているよ。『三回クレームが来たら、次の年は契約しないでくれ』ってね」

「それはすごい!」
「でもね、本当に数軒なんだけど受け元に『いつもやってくれる方は本当によくやってくれるので感謝しています』って電話をくれる人とか、行くたびに温かい缶コーヒーを皆の分用意して待っていてくれる人もいるのさ。それを見ると、(ああ、ここだけはやってあげなくちゃなあ)と思うんですよ」


 そういっているところへダンプが戻ってきたので会話は終了。再び雪を積みだす作業が始まりました。

 それにしても、作業を頼む客の側にブラックリストが作られるかもしれないというのはちょっとした驚きです。

 売り手市場か買い手市場かで考えると、除雪事業者はどんどん減っていてこのままではサービス自体が買おうと思ってもどこもやってくれない時代が来るかもしれません。

 良い客でなければサービスを買うことすらできな時代と言うのは面白い。世の中、何でもお金で解決できると思ったら大間違いなんですね。

 良い客、というよりも他人のことを思いやれるような、真っ当な人間として生きていきたいですね。

 

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