今夜はネットの勉強会。タイトルは「ネットによる地域振興」というものですが、地域SNSなどに参加している私などにとってもとても興味深い内容でした。
講師はNPO法人TRYWARP代表理事の虎岩雅明さん。名前はいかついのですがとても優しそうな好青年と言った感じです。
この方の活動は、千葉大学の在学中に「街で挨拶ができる人を一人でも増やしたい」という思いから始めた、地元の初心者にパソコンを教えるボランティア活動です。名付けて「パソコンプレックス解消大作戦」。
団体はサークル活動からその後NPO法人になりましたが、やっていることは大学生を使ってパソコン初心者に対して「パソコンをやってみたい」と思ってもらうようにすることだけです。
ただそのアプローチが極めてユニーク。なにしろ教える学生はパソコンのクロウトではダメでパソコン素人の方が良いというのです。
パソコンを少しでも知っている学生になると「クリックしてください」「クリックって何?」「マウスのボタンを押すんですよ」「マウスってどれ?ボタンはどれ?」というくらいの初心者の理解のなさに呆れてしまいます。その結果、ついついどうするかを教えてしまい、それが逆に受講者にはプレッシャーになりパソコンから遠ざかるという本来の目的を達成出来ないのだとか。
だから教えに行ってもらうのは素人の学生さんが良くて、「これはどうしたらよいのかね?」と訊かれても一緒になって「あれー、これを押すんですかね…」「いや、こっちだったような気がするが…、あ、やっぱりそうだった」「わー、すごいですね。なんだできるんじゃないですか」と逆に大学生と一緒に悩むようになり、それが却って良いのだとか。
「世の中って、年長者が敬われて社会のルールをなんとなく仕切って、それを若いうちは我慢して歳を取って行くという順番ですよね。ところがパソコンのような新技術は、そこでの力関係が逆転してしまうので不自然なんですよ。だからパソコンをできない学生を当てるくらいでちょうど良いんです」
地域のパソコン講習会での究極の目的は、依頼者がパソコンを使えるようになるというよりも、パソコンをやってみたくなることに主眼がおかれています。だからむやみに教えない。
また、パソコンでしかできないこと、自分でしかできないことに絞ってやりたくなってもらうことを大事にしていて、それを突き詰めると最後には「お友達と連絡を取り合う」ということに絞られるというのです。
「メールは嫌い、習わなくてもいい」という人もいるなかで、日本語入力も実はメールソフト上で作ってもらい、「そこをぽちっと押してみてもらえますか?あ、成功です。これでお友達にメールが送られましたよ」とやる。
すると同じ部屋で練習をしている人のところにメールが飛んで「なんだ、口で言え!」なんてなことになる。それがやってみればやれる、それは楽しい、という喜びと楽しみに繋がって行くのです。
もちろん、本格的な設定や機械の購入も求められればサポートはするので、パソコンのよろず相談相手として共感を得ているのです。ついついパソコンを上から目線で教えたくなってしまう私にも目からウロコの方法論でした。
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この虎岩さんは西千葉で地域SNSであるアミッピーの管理運営も行っていますが、そこでも入会に本人確認を求めたり、ネット言葉は使わない、使わないコミュニティは作らない、などといったルールを決めて健全な運営を実現しています。
サポートのための経費はパソコン関係の別事業での収益をあてていますが、広告はとっていないとのこと。
地域SNSは「出会い系」ではなくて「出会った系」というのが虎岩さんの持論で、ネット上で出会うのではなくて、リアルな場で出会った後で連絡や親交を深めるために使う道具がネットでありSNSであるというのです。
今やこの活動は世界最大手のソフト会社M○○ソフト社からも支援してもらったり、国内マスコミや中央省庁からもいくつもの賞を受賞して注目が集まっています。
「いくら日本でも、パソコンが使える人なんてほんの一握りでそれ以外の世の中のほとんどの人はパソコンが使えない素人も同然なんです。そんな人たちに『パソコンを勉強しろ』というだけでは意味が無くて、現実にパソコンの世界は楽しいんだと思うような橋渡しをする活動ってやっぱりこれからのニーズがあると思うんです」
家計簿だとか計算だとかパソコンにはいろいろな使い道がありますが、人に任せてしまえるものはもうい覚える必要はないと割り切って、通信連絡のように人には任せれられず自分でなくてはできないことに絞って楽しみを伝えるというのはとても面白いお話でした。