なんでも新党準備中の若狭勝氏は「一院制」の憲法改正を重視しているらしい。細野豪志氏などが加わった新党は今月中にも結成されて衆院選に出るという話。その行方は別にして、この「一院制」という主張はどのように考えればいいのだろうか?
世界には「一院制」の国もあれば、「二院制(両院制)」の国もある。いまだ国会のないサウジアラビアを除き、世界の国はこのどっちかである。どっちもあるということは、一院制にも二院制にも、それぞれメリットとデメリットがあるということだ。二院制にはデメリットもあるんだから、この問題を考えてみるのはいいだろう。でも、僕は実現不可能な課題にあまり時間を使いたくない。
よく言われるのは、二院制の場合、両院の政党構成が同じだったら、同じ質疑を繰り返すだけ時間のムダ。両院の政党構成が違っていたら、両院が違うことを決めるから何もできなくなる。現在の日本では、衆参両院とも与党が圧倒的に多数だから、結局内閣提出法案は必ず成立するはずだ。だから「参議院はいらない」となりやすい。だけど、2007年から2009年の自民党内閣、あるいは2010年から2012年の民主党内閣では、参議院で与党が過半数を持っていなかった。当時はそれが「決められない国会」と呼ばれていた。これは問題なのだろうか?
日本の場合、衆議院が優先と決められているけれど、法律案の審議などは同等の権限を両院が持っている。内閣総理大臣の指名、予算案、条約などは確かに衆議院が優先するが、具体的な政策を進めるための法律は衆参で議決が一致しないと成立させられない。参議院議員は解散がないから、最短でも次の参院選までの3年間は政権が行き詰まり続ける。
参議院議員が6年任期、3年後とに半数改選という規定が、時には「政治の停滞」を生むということだ。しかし、ある意味では参議院の役割はそれだろう。「衆議院に待ったをかけること」である。そこまで行かなくても、法案成立まで時間がかかるから、反対する野党には意味がある。その間に反対運動が盛り上がったり、政府側の答弁に問題があったり…ということがある。
そもそも何で日本は二院制なのか。大日本帝国憲法では、衆議院と貴族院が置かれた。貴族院は身分制議会だから、仮に衆議院で急進的改革に賛成が多くなっても、保守的で選挙を気にしない貴族院が葬り去る。それが日本の二院制の目的だったんだろう。実際に女性参政権は戦前に衆議院は通過していたが、貴族院で廃案になっている。だから、時には衆議院の妨害をするということこそ、第二院の役割と言えるのである。
戦後の日本国憲法では、貴族院は参議院となって残った。当初のGHQ案では一院制だったが、日本側の(特に憲法問題を担当した松本蒸治国務相の)反対で、二院制になった。もっともそれはGHQ側が「日本側に譲歩する」余地をあえて残した提案だったことも判っている。アメリカ本国は上下両院の二院制で、上院は6年任期、2年ごとに3分の1ずつ改選と、日本の参議院と似ている。
議会の歴史が古い国、英米仏などでは二院制が多い。身分制議会の名残りがあったり、連邦制の国が多いからである。日本はどっちでもないから、確かに一院制でもいいはずだ。一院制にすることで生じるデメリットをできるだけ解消する方策があるんだったら、一院制でもいい。
衆議院選挙しかなかったら、今の制度のままだったら「与党が圧勝する」可能性が高い。(ここ4回連続して、与党が3分の2を獲得している。)そのまま一院制にしたら、巨大与党の意のままに政治が進められてしまう。だから、「選挙制度を比例代表制に変える」とか「重要問題は国民投票で決める」などが考えられるだろう。そういうことを含めて議論するんだったら、「頭の体操」として「一院制」「二院制」のメリット、デメリットを国民的に議論してみてもいいと思う。
だけど、僕は最初に「実現不可能」と書いた。そう思っているのである。それは何故かと言えば、要するに「参議院で参議院廃止勢力が3分の2を占める」ってあり得るだろうか。会社だったら、この部門は撤退とトップが決断すれば、会社にとって歴史ある分野も一夜にしてなくなるかもしれない。だけど、そこで「社員投票で3分の2以上の賛成」がないといけないという決まりがあったら…?自分で自分たちのリストラに賛成するってあり得ないと思うけど…。
参議院議員は自分たちの仕事は国家的に重要な役割を果たしていると思っているだろう。いや、内心では衆議院のカーボンコピーで、自分たちは採決の時に賛成票を投じればいいだけと思ってる与党議員もいるかもしれない。でも公にはそう言えないだろう。野党議員の方は、間違いなく自分の役割は重要だと思っている。衆議院で「悪法」が通過した後でも、その法案を阻止できるかもしれない。それはひとえに参議院議員のわれわれの役割だと思っているに違いない。
それに実は「衆議院議員経験者の参議院議員」が多い。まあ、有り体に言ってしまえば、衆院選挙に落ちた人が知名度を生かして次の参院選に立候補したということだ。また参議院議員経験者の衆議院議員ある程度はいる。この場合は、優先院の議員に転身したいということだろう。かつての石原慎太郎がそうだし、蓮舫が衆院に出るとか言っていたのも同様の発想だろう。
それはおかしい、参議院は衆議院落選者の「失業救済機関」ではないなどと言われつつ、内心では議員はどっちもあった方がいいなあと思ってるんじゃないか。そういうことを考えると、現実問題として「参議院で参議院をなくす主張」が大多数を占めるとは考えられない。それはやむを得ないだろうと思う。デメリットしかないんだったら、それは「既得権にしがみつく」と言われるだろうが、参議院にはメリットもある。世界の重要国にも二院制の国が多い。
それを考えると、この問題こそ一番大事だと意気込むほどの問題だろうかと思う。現実にこの新党は参議院議員が何人集まるだろうか。参院で主張を広めていけるだろうか。今の日本でもっと緊急性があるテーマはいくらでもあるんじゃないだろうか。僕は条件付きで一院制賛成者なんだけど、いまそれを求める気持ちはない。もっと優先順位が高いことを議論した方がいいと思うけど。
世界には「一院制」の国もあれば、「二院制(両院制)」の国もある。いまだ国会のないサウジアラビアを除き、世界の国はこのどっちかである。どっちもあるということは、一院制にも二院制にも、それぞれメリットとデメリットがあるということだ。二院制にはデメリットもあるんだから、この問題を考えてみるのはいいだろう。でも、僕は実現不可能な課題にあまり時間を使いたくない。
よく言われるのは、二院制の場合、両院の政党構成が同じだったら、同じ質疑を繰り返すだけ時間のムダ。両院の政党構成が違っていたら、両院が違うことを決めるから何もできなくなる。現在の日本では、衆参両院とも与党が圧倒的に多数だから、結局内閣提出法案は必ず成立するはずだ。だから「参議院はいらない」となりやすい。だけど、2007年から2009年の自民党内閣、あるいは2010年から2012年の民主党内閣では、参議院で与党が過半数を持っていなかった。当時はそれが「決められない国会」と呼ばれていた。これは問題なのだろうか?
日本の場合、衆議院が優先と決められているけれど、法律案の審議などは同等の権限を両院が持っている。内閣総理大臣の指名、予算案、条約などは確かに衆議院が優先するが、具体的な政策を進めるための法律は衆参で議決が一致しないと成立させられない。参議院議員は解散がないから、最短でも次の参院選までの3年間は政権が行き詰まり続ける。
参議院議員が6年任期、3年後とに半数改選という規定が、時には「政治の停滞」を生むということだ。しかし、ある意味では参議院の役割はそれだろう。「衆議院に待ったをかけること」である。そこまで行かなくても、法案成立まで時間がかかるから、反対する野党には意味がある。その間に反対運動が盛り上がったり、政府側の答弁に問題があったり…ということがある。
そもそも何で日本は二院制なのか。大日本帝国憲法では、衆議院と貴族院が置かれた。貴族院は身分制議会だから、仮に衆議院で急進的改革に賛成が多くなっても、保守的で選挙を気にしない貴族院が葬り去る。それが日本の二院制の目的だったんだろう。実際に女性参政権は戦前に衆議院は通過していたが、貴族院で廃案になっている。だから、時には衆議院の妨害をするということこそ、第二院の役割と言えるのである。
戦後の日本国憲法では、貴族院は参議院となって残った。当初のGHQ案では一院制だったが、日本側の(特に憲法問題を担当した松本蒸治国務相の)反対で、二院制になった。もっともそれはGHQ側が「日本側に譲歩する」余地をあえて残した提案だったことも判っている。アメリカ本国は上下両院の二院制で、上院は6年任期、2年ごとに3分の1ずつ改選と、日本の参議院と似ている。
議会の歴史が古い国、英米仏などでは二院制が多い。身分制議会の名残りがあったり、連邦制の国が多いからである。日本はどっちでもないから、確かに一院制でもいいはずだ。一院制にすることで生じるデメリットをできるだけ解消する方策があるんだったら、一院制でもいい。
衆議院選挙しかなかったら、今の制度のままだったら「与党が圧勝する」可能性が高い。(ここ4回連続して、与党が3分の2を獲得している。)そのまま一院制にしたら、巨大与党の意のままに政治が進められてしまう。だから、「選挙制度を比例代表制に変える」とか「重要問題は国民投票で決める」などが考えられるだろう。そういうことを含めて議論するんだったら、「頭の体操」として「一院制」「二院制」のメリット、デメリットを国民的に議論してみてもいいと思う。
だけど、僕は最初に「実現不可能」と書いた。そう思っているのである。それは何故かと言えば、要するに「参議院で参議院廃止勢力が3分の2を占める」ってあり得るだろうか。会社だったら、この部門は撤退とトップが決断すれば、会社にとって歴史ある分野も一夜にしてなくなるかもしれない。だけど、そこで「社員投票で3分の2以上の賛成」がないといけないという決まりがあったら…?自分で自分たちのリストラに賛成するってあり得ないと思うけど…。
参議院議員は自分たちの仕事は国家的に重要な役割を果たしていると思っているだろう。いや、内心では衆議院のカーボンコピーで、自分たちは採決の時に賛成票を投じればいいだけと思ってる与党議員もいるかもしれない。でも公にはそう言えないだろう。野党議員の方は、間違いなく自分の役割は重要だと思っている。衆議院で「悪法」が通過した後でも、その法案を阻止できるかもしれない。それはひとえに参議院議員のわれわれの役割だと思っているに違いない。
それに実は「衆議院議員経験者の参議院議員」が多い。まあ、有り体に言ってしまえば、衆院選挙に落ちた人が知名度を生かして次の参院選に立候補したということだ。また参議院議員経験者の衆議院議員ある程度はいる。この場合は、優先院の議員に転身したいということだろう。かつての石原慎太郎がそうだし、蓮舫が衆院に出るとか言っていたのも同様の発想だろう。
それはおかしい、参議院は衆議院落選者の「失業救済機関」ではないなどと言われつつ、内心では議員はどっちもあった方がいいなあと思ってるんじゃないか。そういうことを考えると、現実問題として「参議院で参議院をなくす主張」が大多数を占めるとは考えられない。それはやむを得ないだろうと思う。デメリットしかないんだったら、それは「既得権にしがみつく」と言われるだろうが、参議院にはメリットもある。世界の重要国にも二院制の国が多い。
それを考えると、この問題こそ一番大事だと意気込むほどの問題だろうかと思う。現実にこの新党は参議院議員が何人集まるだろうか。参院で主張を広めていけるだろうか。今の日本でもっと緊急性があるテーマはいくらでもあるんじゃないだろうか。僕は条件付きで一院制賛成者なんだけど、いまそれを求める気持ちはない。もっと優先順位が高いことを議論した方がいいと思うけど。