最近ずっと映画の話だけど、まだもう少し。「ここは退屈迎えに来て」という映画が公開されている。廣木隆一監督の意欲作で、とても面白かった。山内マリコのデビュー作の映画化で、富山県各地で撮影された映像がとても新鮮。映画は2004年から2013年までの時間と人物をバラバラにしてモザイク状に配置する。最初は人間関係がよく判らないけど、だんだんそういうことだったかと判ってくると、「地方」の青春の焦燥が見事にあぶりだされてくる。
橋本愛、門脇麦、成田凌らの若手人気俳優が活躍しているのに、限定的な公開でもったいない。「スター映画」の趣は全然なくて、廣木監督の「作家の映画」になっているからだろう。冒頭で「私」(橋本愛)がカメラマンの須賀さん(村上淳)運転の車に乗っている。東京に住んでいたけど、最近戻ってきてタウン誌の記者をしていてラーメン屋の取材に行くところ。このあと、友だちと会って高校時代に皆の憧れだった「椎名君」(成田凌)に会いに行くと言ったら、須賀も付いてくる。
友だちのサツキ(柳ゆり菜)が乗り込んでくると、自分も東京へ行きたかったとしゃべり始める。この映画はほとんどが登場人物たちのおしゃべりで、それがとっても面白い。「私」は東京で別れた彼がいたらしく、東京はそんないいとこばかりじゃないと言う。でもそれは東京へ行った人が言えることでしょ。こうしてこの映画は「東京と地方」という問題がテーマだなと思う。しかし、だんだん他の人物が出てくると、この「椎名」という男が影の主人公だと判ってくる。
高校時代の椎名は輝いていた。クラスの人気者で下級生からも憧れられていた。「あたし」(門脇麦)は高校時代から椎名と付き合っていて、判れた今もその思い出を引きずっている。遠藤という椎名グループにいた同級生と付き合っているけど、心は離れている。「プライドのない」遠藤はいつまでもくっついていたいらしいが。一方、「私」たちは懐かしのゲームセンターがまだあるのを見て、つい寄ると、そこに同級生の「新保」(渡辺大知)がいた。高校時代「チンポ」とからかわれていたが、彼の紹介で椎名はいま自動車教習所の教官になったのだという。
(左から椎名と「私」と「あたし」)
大阪に行った椎名も結局は戻ってきて、思うようにならない人生だったらしい。椎名の元カノの「あたし」も同じ。高校時代にヒーローだった男の、栄光と凋落。そこに「地方でくすぶる」人生が浮かび上がる。もう一組、東京でアイドルだった「森繁あかね」と友だちの「山下南」がファミレスで時々おしゃべりしている。彼女たちの「役割」は最後に判る。いくつもののエピソードが時間を行き来して語られる。オール富山ロケの風景が効果をあげて、見ていてまったく退屈しない。
廣木隆一監督(1954~)はピンク映画出身で長いキャリアがある。最近は商業映画のヒット作を連発していて、2017年は「PとJK」や「ナミヤ雑貨店の奇蹟」、2018年は「伊藤君 A to E」や「ママレード・ボーイ」と人気作を作った。その間に「彼女の人生は間違いじゃない」や「ここは退屈迎えに来て」のような、妥協なく日本の現実を見つめる映画を作っている。そこがすごいと思う。
原作の山内マリコは原作通り富山県の出身。小説第2作の「アズミ・ハルコは行方不明」も蒼井優主演で映画化された。小説を読んだことはないけど、大映で映画化された源氏鶏太「青空娘」がちくま文庫で再刊されたときの解説を読んでいた。昔の日本映画ファンになって東京のあちこちの映画館に通ったとあった。僕もよく行く映画館ばかりだから、どこかですれ違ってたのかも。
ちなみに源氏鶏太も富山県出身。正力松太郎や立川志の輔が真っ先に思い浮かぶ富山県出身者も今後は山内マリコになりそうだ。(そう言えば僕の大好きな作家、堀田善衛も富山出身だった。)東京と地方という問題も語りたい気があるけど、長くなるから止めておこう。僕の実感からすれば、東京東部も「地方」のような気がしてる。
橋本愛、門脇麦、成田凌らの若手人気俳優が活躍しているのに、限定的な公開でもったいない。「スター映画」の趣は全然なくて、廣木監督の「作家の映画」になっているからだろう。冒頭で「私」(橋本愛)がカメラマンの須賀さん(村上淳)運転の車に乗っている。東京に住んでいたけど、最近戻ってきてタウン誌の記者をしていてラーメン屋の取材に行くところ。このあと、友だちと会って高校時代に皆の憧れだった「椎名君」(成田凌)に会いに行くと言ったら、須賀も付いてくる。
友だちのサツキ(柳ゆり菜)が乗り込んでくると、自分も東京へ行きたかったとしゃべり始める。この映画はほとんどが登場人物たちのおしゃべりで、それがとっても面白い。「私」は東京で別れた彼がいたらしく、東京はそんないいとこばかりじゃないと言う。でもそれは東京へ行った人が言えることでしょ。こうしてこの映画は「東京と地方」という問題がテーマだなと思う。しかし、だんだん他の人物が出てくると、この「椎名」という男が影の主人公だと判ってくる。
高校時代の椎名は輝いていた。クラスの人気者で下級生からも憧れられていた。「あたし」(門脇麦)は高校時代から椎名と付き合っていて、判れた今もその思い出を引きずっている。遠藤という椎名グループにいた同級生と付き合っているけど、心は離れている。「プライドのない」遠藤はいつまでもくっついていたいらしいが。一方、「私」たちは懐かしのゲームセンターがまだあるのを見て、つい寄ると、そこに同級生の「新保」(渡辺大知)がいた。高校時代「チンポ」とからかわれていたが、彼の紹介で椎名はいま自動車教習所の教官になったのだという。
(左から椎名と「私」と「あたし」)
大阪に行った椎名も結局は戻ってきて、思うようにならない人生だったらしい。椎名の元カノの「あたし」も同じ。高校時代にヒーローだった男の、栄光と凋落。そこに「地方でくすぶる」人生が浮かび上がる。もう一組、東京でアイドルだった「森繁あかね」と友だちの「山下南」がファミレスで時々おしゃべりしている。彼女たちの「役割」は最後に判る。いくつもののエピソードが時間を行き来して語られる。オール富山ロケの風景が効果をあげて、見ていてまったく退屈しない。
廣木隆一監督(1954~)はピンク映画出身で長いキャリアがある。最近は商業映画のヒット作を連発していて、2017年は「PとJK」や「ナミヤ雑貨店の奇蹟」、2018年は「伊藤君 A to E」や「ママレード・ボーイ」と人気作を作った。その間に「彼女の人生は間違いじゃない」や「ここは退屈迎えに来て」のような、妥協なく日本の現実を見つめる映画を作っている。そこがすごいと思う。
原作の山内マリコは原作通り富山県の出身。小説第2作の「アズミ・ハルコは行方不明」も蒼井優主演で映画化された。小説を読んだことはないけど、大映で映画化された源氏鶏太「青空娘」がちくま文庫で再刊されたときの解説を読んでいた。昔の日本映画ファンになって東京のあちこちの映画館に通ったとあった。僕もよく行く映画館ばかりだから、どこかですれ違ってたのかも。
ちなみに源氏鶏太も富山県出身。正力松太郎や立川志の輔が真っ先に思い浮かぶ富山県出身者も今後は山内マリコになりそうだ。(そう言えば僕の大好きな作家、堀田善衛も富山出身だった。)東京と地方という問題も語りたい気があるけど、長くなるから止めておこう。僕の実感からすれば、東京東部も「地方」のような気がしてる。