J・D・サリンジャー(1919~2010)も2019年で生誕百年になるが、1951年発表の「The Catcher in the Rye」は今もなお全世界で愛読されている。日本では野崎孝訳「ライ麦畑でつかまえて」(1964)や村上春樹訳「キャッチャー・イン・ザ・ライ」(2003)を多くの人が読んでるだろう。しかしサリンジャーの意向により、舞台化、映画化は永遠にない。でもこの作品をめぐる映画は存在する。「ライ麦畑をさがして」(2003)という映画があったけど、今度また「ライ麦畑で出会ったら」(Coming Through the Rye、2015)というアメリカ映画が公開されている。
1969年のペンシルバニア州。「学校一冴えない」高校生のジェイミー(アレックス・ウルフ)は、学校に不満を持ち「ライ麦畑でつかまえて」の主人公ホールデンに自己投影している。卒業制作として「ライ麦畑」を舞台で上演することを思いつくが、先生に相談すると作者J.D.サリンジャーの許可が必要だと言われる。連絡を取ろうとするがサリンジャーの居所が判らない。学校でいじめを受け飛び出したジェイミーは、週刊誌で知ったサリンジャーが住む田舎町を訪ねる決心をする。演劇サークルで出会ったディーディー(ステファニア・オーウェン)は彼を見かねて家の車で一緒に来てくれる。果たしてサリンジャーには会えるのだろうか。
(ジェイミーとディーディー)
ジェイミーが通う高校は私立の全寮制男子高校なので、演劇授業の発表公演では公立校の女子高生を頼むことになっている。ジェイミーは「ロミオとジュリエット」の端役をやって、ジュリエットの女の子に焦がれている。そんなとき、一緒に活動したディーディーが話しかけてくれるけど、ジェイミーは美人生徒ばかり見てて。そんなディーディーがすごく「いい子」で、そんな子が車で一緒に行ってくれるなんて…。日帰り出来なくて泊ったり…。はっきり言ってサリンジャーに会えても会えなくても、もうどうでもいいじゃんというシチュエーションなんだけど、うぶな男子の心は複雑。
はっきり書いてしまうけど、なんとジェイミーはサリンジャーに会えた。脚本、監督、製作を務めたジェームズ・サドウィズ(1952~)は「これは実話で僕に起きた出来事だ。映画内でサリンジャーに会いに行くまでは、話の85%が僕の実体験で、それ以降の話では99%が僕の実体験になっている。」と語っている。偏屈で有名なサリンジャーは、世界的な人気作家になったら田舎町に引っ込んで隠遁生活を送った。多くの若者が一目サリンジャーに会いたいと出かけたが、69年段階では誰も会えなかっただろうと思っていた。地域住民は皆迷惑していて「サリンジャー?誰?知らないな」みたいなことを言う。住所が判らないのに、どうして会えるのかは映画で確認を。
(サリンジャー役のクリス・クーパー)
僕は中学を卒業して高校に入るまでの春休みに初めて野崎訳を読んだ。ものすごく感動して、この本は毎年読み直そうと心に決めた。次の年は読んだけど、もう次はなくてその後一回ぐらい、そして村上訳で読み直したぐらいになってしまった。でも「卒業生に薦める本」みたいなリストには必ず入れてきた。この映画はすごい大傑作というわけではなく、サリンジャーに関心がない人にも面白いかどうかは僕には判らない。
でもアメリカの風景が素晴らしく、またジェイミーとディーディーの行方も気にかかって、僕にはステキな青春映画だった。当時のアメリカはベトナム戦争中で、学校なんか嫌いだというのは簡単だけど中退すると徴兵される可能性があった。そんな時代相を理解しておかないといけない。今後サリンジャーの伝記映画「ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー」という映画の公開も予定されている。改めてサリンジャーを振り返る時期になったのかもしれない。
1969年のペンシルバニア州。「学校一冴えない」高校生のジェイミー(アレックス・ウルフ)は、学校に不満を持ち「ライ麦畑でつかまえて」の主人公ホールデンに自己投影している。卒業制作として「ライ麦畑」を舞台で上演することを思いつくが、先生に相談すると作者J.D.サリンジャーの許可が必要だと言われる。連絡を取ろうとするがサリンジャーの居所が判らない。学校でいじめを受け飛び出したジェイミーは、週刊誌で知ったサリンジャーが住む田舎町を訪ねる決心をする。演劇サークルで出会ったディーディー(ステファニア・オーウェン)は彼を見かねて家の車で一緒に来てくれる。果たしてサリンジャーには会えるのだろうか。
(ジェイミーとディーディー)
ジェイミーが通う高校は私立の全寮制男子高校なので、演劇授業の発表公演では公立校の女子高生を頼むことになっている。ジェイミーは「ロミオとジュリエット」の端役をやって、ジュリエットの女の子に焦がれている。そんなとき、一緒に活動したディーディーが話しかけてくれるけど、ジェイミーは美人生徒ばかり見てて。そんなディーディーがすごく「いい子」で、そんな子が車で一緒に行ってくれるなんて…。日帰り出来なくて泊ったり…。はっきり言ってサリンジャーに会えても会えなくても、もうどうでもいいじゃんというシチュエーションなんだけど、うぶな男子の心は複雑。
はっきり書いてしまうけど、なんとジェイミーはサリンジャーに会えた。脚本、監督、製作を務めたジェームズ・サドウィズ(1952~)は「これは実話で僕に起きた出来事だ。映画内でサリンジャーに会いに行くまでは、話の85%が僕の実体験で、それ以降の話では99%が僕の実体験になっている。」と語っている。偏屈で有名なサリンジャーは、世界的な人気作家になったら田舎町に引っ込んで隠遁生活を送った。多くの若者が一目サリンジャーに会いたいと出かけたが、69年段階では誰も会えなかっただろうと思っていた。地域住民は皆迷惑していて「サリンジャー?誰?知らないな」みたいなことを言う。住所が判らないのに、どうして会えるのかは映画で確認を。
(サリンジャー役のクリス・クーパー)
僕は中学を卒業して高校に入るまでの春休みに初めて野崎訳を読んだ。ものすごく感動して、この本は毎年読み直そうと心に決めた。次の年は読んだけど、もう次はなくてその後一回ぐらい、そして村上訳で読み直したぐらいになってしまった。でも「卒業生に薦める本」みたいなリストには必ず入れてきた。この映画はすごい大傑作というわけではなく、サリンジャーに関心がない人にも面白いかどうかは僕には判らない。
でもアメリカの風景が素晴らしく、またジェイミーとディーディーの行方も気にかかって、僕にはステキな青春映画だった。当時のアメリカはベトナム戦争中で、学校なんか嫌いだというのは簡単だけど中退すると徴兵される可能性があった。そんな時代相を理解しておかないといけない。今後サリンジャーの伝記映画「ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー」という映画の公開も予定されている。改めてサリンジャーを振り返る時期になったのかもしれない。