prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「春の雪」

2005年12月06日 | 映画
主役二人はどう見ても華族って柄じゃないなあ、と思って見ていたが、もともと主に男の幼児性にのっとった、華族も平民も昔も今もない話。日本の華族って、ヴィスコンティの世界みたいに平民とはまったく別の世界という程の迫力ないし。
身分がどうの格式がどうのという枷の多い世界をこの原作者らしくメロドラマの趣向に使って見せるが、手紙の扱いや崇徳院の歌などの趣向のメリハリは今一つ。

つい最近、竹内結子が出産したばかりなので、撮影時何か月だったのだろうと余計なことを考えながら見ていた。ラブシーンで肩も見せないのは、そのせいか。
大楠道代、岸田今日子などベテラン勢が出る場面は、さすがに締まる。

「戯夢人生」「花様年華」の李屏賓の独特の華やかな感覚の撮影が、特に屋内場面をちょっとエキゾチックな感覚で見せている。
シャムの王子が出てくるのは輪廻の概念を語らせるためでもあるけれど、そういえばタイ(シャム)と日本は、王(皇)族が軸になって「上から」近代化した国ってところは共通しているな、と思った。

エルンスト・ルビッチの「パッション」の上映会のスクリーンの前に主人公二人を立たせてコントラストを見せる場面の才気。
ただマーラーの交響曲第5番をもろに使うのは、いささか恥ずかしい。
(☆☆☆★)



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