シリーズ5作目にしてこういう切り口があったかと感心する。
大沢樹生扮するホストが金持ち女に唆されて殺人に手を染めてというあたりから細かいツイストを重ねたあげく、監禁の館に紛れ込んでしまう展開が鮮やか。
もともと監禁ものは場所も人物同士の力関係も変化がないから単調になりがちなのだが、そこに外部からの人間を関わらせた分、ずいぶんドラマ的に面白くなった。
佐野史郎のヘンタイぶりはさすがだが、そのままだったらややまたかと思わせかねないのを、別の男の視点を加えたことで一段とイヤらしくなった。
そしてこの実にしょーもないホストが、監禁されている少女に対して白馬の騎士みたいになるのかと思うと、結局徹底してしょーもないまま通すのが逆に爽快。美化していない分、これはこれなりにひとつの「生き方」かと思わせる。
男に監禁されていた少女が「救われる」のではなく、自分の足で出て行くドラマとして構成して、成功している。
監督の若松孝二は、日本の監禁ものの原点みたいな「胎児が密猟するとき」を作っている人だが、屋内の官能シーンだけでなく、屋外の雪に埋もれた風景で徹底して役者を過酷に歩かせて、体をはった迫力を引き出しているのは、さすが。
(☆☆☆★★)
後註・四方田犬彦「パレスチナ・ナウ―戦争・映画・人間」によると、ヒロインが監禁されていた館から出て行くシーンで流れるのは、パレスチナ国歌だそう。若松孝二は1971年に足立正生と組んで「赤軍PFLP 世界戦争宣言」を作っている。詳しい意味は同書参照。
まったくといっていいくらい無視された映画だが「シンガポール・スリング」も「戦士」の誕生を描いたという意味で「赤P」とつながっているということか。
完全なる飼育 赤い殺意 - Amazon
大沢樹生扮するホストが金持ち女に唆されて殺人に手を染めてというあたりから細かいツイストを重ねたあげく、監禁の館に紛れ込んでしまう展開が鮮やか。
もともと監禁ものは場所も人物同士の力関係も変化がないから単調になりがちなのだが、そこに外部からの人間を関わらせた分、ずいぶんドラマ的に面白くなった。
佐野史郎のヘンタイぶりはさすがだが、そのままだったらややまたかと思わせかねないのを、別の男の視点を加えたことで一段とイヤらしくなった。
そしてこの実にしょーもないホストが、監禁されている少女に対して白馬の騎士みたいになるのかと思うと、結局徹底してしょーもないまま通すのが逆に爽快。美化していない分、これはこれなりにひとつの「生き方」かと思わせる。
男に監禁されていた少女が「救われる」のではなく、自分の足で出て行くドラマとして構成して、成功している。
監督の若松孝二は、日本の監禁ものの原点みたいな「胎児が密猟するとき」を作っている人だが、屋内の官能シーンだけでなく、屋外の雪に埋もれた風景で徹底して役者を過酷に歩かせて、体をはった迫力を引き出しているのは、さすが。
(☆☆☆★★)
後註・四方田犬彦「パレスチナ・ナウ―戦争・映画・人間」によると、ヒロインが監禁されていた館から出て行くシーンで流れるのは、パレスチナ国歌だそう。若松孝二は1971年に足立正生と組んで「赤軍PFLP 世界戦争宣言」を作っている。詳しい意味は同書参照。
まったくといっていいくらい無視された映画だが「シンガポール・スリング」も「戦士」の誕生を描いたという意味で「赤P」とつながっているということか。
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