ジャズのジャムセッションのように一人一人の俳優が役を生き、その上で他の役者と反射しあって、人間集団としても生きていくのがまことにスリリング。 ちょっとジョン・カサベテスを思わせる演出力。
恋人の母親の誕生パーティの、大勢の人間が勝手に喋っているようで全体としてアンサンブルが成立しているのを据えっぱなしで通して撮ったシーンなど、すごい。
一見してただ人と待ち合わせをしているだけなのだが、あちこちでズレや不手際が重なっていく出だし。旧社会主義国の非効率性の表れでもあるだろうが、それがたとえばヒロインが恋人の男に、もし自分が妊娠したらどうするか聞き、結婚すればいいだろうといった「わかっていない」答えが返ってくるあたり、国の体制を越えた普遍的な意識のズレが鮮やかに表れている。
堕胎した、人間の形をしていない胎児を映画でまともに見せたのは初めてではないか。
(☆☆☆★★★)