未亡人に対する無償の愛の物語という点で、劇中しきりと上映される「無法松の一生」とだぶるようになっているのね。
経営が苦しくなってもピンク映画はかけないという方針は「純愛もの」としては仕方ないか知りませんが、実際問題として成人映画の作り手が今の日本映画のかなりの部分を支えているのだから、あまりいい感じはしない。そこまで奇麗ごとにしなくていいのではないか。
「ニューシネマパラダイス」みたいに映写機が一台しかないなんて初歩的な考証上の大ポカが目立たないのはいいけれど、案外映画人が描く映画館って、リアルではない。
よく映画館が閉館する時だけ押しかける連中っているけれど、それだったら普段から行けばいいだろうと思う。だからラスト・ショーで客が押しかけているシーン、なんだかひっかかった。
それに昔の映画館がそんなに懐かしがるようないい場所だったわけないのだ。汚くて寂れてて無愛想でぎすぎすしてて。シネコンは味気ないには違いないが、それにとって代わられたのには、それなりの理由があってのこと。
(☆☆☆)