prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

俳優座劇場プロデュースNo.82 『十二人の怒れる男たち』

2010年01月17日 | 映画
セットの汚し具合が相当に徹底している。蛍光灯など真っ黒な垢みたいなものがついていて、さらに、トイレの壁が紗で作られていて中に人が入ると照明がつき、中の様子を半透明になった壁を通して見えるようになるのだが、その壁にも漆喰のようなものが不細工に塗られているといった調子。

出てくる役者たちが、テレビで見るようなつるつるしたプラスチック製みたいなイケメンとはおよそ無縁で、皺も人生の垢もたっぷりついた中高年がずらっと十二人居並ぶとそれだけで迫力がある。陪審員制からすると男ばかり十二人というのは不自然のはずだが、この場合まず存在自体の厚みが理屈よりものを言う。

人種差別と移民排斥を大声で繰り返す十番の存在は、今になると日本でも十分すぎるほどアクチュアリティがある。

ラスト、最後まで有罪を主張した三番が自分の息子との葛藤を認めて折れたあと、最初に無罪を主張した八番ではなく、途中まで最も強力な有罪派だった四番に支えられて退場するのが「勝負に負けた」感じを薄らせた。

暑くてたまらない感じを、扇風機より全員が入れ代わり立ち代り冷水をしょっちゅう飲むことで表現している。


レジナルド・ローズ
翻訳
酒井洋子
演出
西川信廣

出演(配役順)
大滝 寛、荘司 肇、三木敏彦、立花一男
井上倫宏、岡田吉弘、高橋克明、松橋 登
小山内一雄、外山誠二、里村孝雄、松島正芳
高塚慎太郎、小林優太

・陪審員一号
8~11日 高塚慎太郎/12~17日 大滝 寛
・守衛
8~12・14・16日 小林優太/13・15・17日 高塚慎太郎


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