
1966年製作とあって、交通量も運転の乱暴さも今では考えられないくらい。横断歩道で旗を出しているのに自動車が止まりませんからね。
息子をひき逃げされた貧乏人の母親高峰秀子が、ひき逃げした金持ちの司葉子のところに家政婦の紹介所を介して勤務する(今だったらすぐ身元がバレるだろう)。
復讐を考えていたらしいのが途中から息子と年恰好が近い男の子に情が移ってしまうのが、意外と甘くなく描かれる。
松山善三のオリジナル脚本は太い幹から話を広げていくより「野獣狩り」ばりに人物それぞれに細かい展開を施していくといった趣。
成瀬巳喜男の演出はオーソドックスな画作りにときどきハイキーな明かりを当てたりカメラを斜めにしたりとケレンを入れてくるのが、意外な感じもする。
「天国と地獄」でも大会社の重役のしょぼくれた運転手をやっていた佐田豊が、ここでも尻拭いを押し付けられる運転手役。とことんついてない役回りです。