朝日新聞の営業からタダ券をもらったので、サントリー美術館で開かれている「京都・智積院の名宝」を見てきた。「抒情と荘厳--等伯プロデュース、国宝障壁画一挙公開」という長い副題(キャッチ・フレーズ?)がついている。
六本木の東京ミッドタウンに出かけるのは久しぶり。前回は何を見に行ったのか、何の用事で出かけたのかも思い出せない。
智積院(ちしゃくいん)には10年近く前に、イギリスに旅立つ息子に少し日本の伝統文化を知っておいてもらおうということで京都、奈良に出かけた際に訪れた。
あいにく三十三間堂で時間を食っている間に、智積院の閉館時間が迫ってしまい、残念ながら中には入れなかった。そんな因縁があったので、招待券を貰ったのをよい機会に出かけてきた。
副題にもある通り、長谷川等伯および息子の長谷川久蔵の障壁画を中心に、その他智積院に所蔵されている書画が展示されている。「等伯プロデュース」の意味は不明。
目玉というか呼び物というべき展示物は、やはり等伯の「楓図」(冒頭の画)と、久蔵の「桜図」なのだろう。
幸い亡父の蔵書の中に「障壁画全集・智積院」(美術出版社、昭和41年、上の写真)という本があったので、予習、復習ができた(「楓図」「桜図」の写真も同書から)。
等伯の画には亡父の書き込みがあって、「原物の幹の色はこれほど緑黄色でなく、濃い茶色の地に黒に近い部分が入っている。他の部分は各種色刷中最も原物に近い色が出ている。昭和42年10月13日記」とメモがある。
久蔵の「桜図」(下の写真)については「この画家は、金色を諧調の空間とする。もとよりそれは、春という季節の大気を象徴する役割を負わせた金雲である。・・・」その他の解説(水尾比呂志)に朱線が引いてあった。
今回見た原物は、この画集の図録よりも、はるかに色褪せていた。亡父が原物を見た昭和40年代からの60年近くの間に、さらに色褪せてしまったのだろうか。
やまと絵も研究テーマの一つにしていた亡父と、展覧会と画集を通して会話することができた。
こうして、13日の金曜日は無事終わった。
2023年1月13日 記