この店は、昭和30年代の人ならずとも知られた豪徳寺の有名店だろう。
豪徳寺駅の(北口?)改札を出ると、真ん前にあって店先から玉子とメリケン粉(?)が混ざって焼ける匂いがプーンと漂っていた。
人形の形は大福様とか恵比寿様とかいった古典的なものだった(と思う)。
店内でも食べることができ、店にはいつもおばあさんがいたような気がする。
店内の匂いが記憶に残っている店では、この人形焼の他にも、コロッケを揚げる匂いが漂っていた石川屋、“蔵王屋豆腐店”(この店も同級生の家だった)、名前は忘れてしまったが牛乳屋などが思い浮かぶ。
牛乳屋は子どもの背丈くらいの高さまで壁に白いタイルが貼ってあり、大きな銀色の冷蔵庫が置かれていて、注文すると分厚くて重そうな扉を開けて、なかから牛乳を取り出した。アイスクリームも売っていた。「匂い」というより、ひんやりとした冷気が印象に残っている。
小津安二郎の映画の中には、こんな昭和30年代の商店街の佇まいが描かれたシーンはないだろうか。彼の映画には、撮影当時は何でもないような風景だが、今となっては「よくぞ映像に残しておいてくれた!」といったシーンがたびたび登場する。
話は戻って、明菓堂だが、先日歩いた時はシャッターが閉っていて、並びのモス・バーガーで喋った豪徳寺在住の友人の話では、最近は営業をしていないらしい。
マクドナルドやモス・バーガーなどにお客を食われてしまったのだろうか・・・。
2010/7/9 撮影