豆豆先生の研究室

ぼくの気ままなnostalgic journeyです。

“メグレ警視” VS “フロスト警部”

2008年07月26日 | テレビ&ポップス

 “メグレ警視 ベンチの男”と“フロスト警部 ゆがんだ愛”を見た。

 どちらも家族のなかで起きた犯罪がテーマである。どちらも、テレビの向こう側にいる視聴者を計算しすぎている。
 純粋な(とぼくが考える)“メグレもの”、“フロストもの”としては、挟雑物が多すぎる印象であった。

 “メグレ警視とベンチの男”は、メグレが自分の担当した事件の裁判(予審?)で、未成年者である被告人の弁護士から尋問を受けるシーンから始まる。
 弁護士が、「あなたは被告人に対して暴力をふるったことはないか?」と質問されると、メグレは、「父親が息子に対してするようにしたことはある」と答える。
 さらに弁護士が「あなたには子どもはあるのか?」と質すと、メグレは、「かつて娘がいたが、幼くして他界した」と答える。

 メグレものでは、メグレ夫人は時おり登場するが、メグレの子どもは登場しない・メグレに子どもがいたかどうかは好事家たちの議論の対象らしいが(確か長島良三氏の“メグレ”関連書のどこかに、「メグレには女の子がいたが幼くして亡くなっている」と書いてあった)、テレビ版では、このシーンで明らかになる。
 原作(の翻訳)の『メグレ警視とベンチの男』(矢野浩三郎訳、河出書房)には、この法廷での証言シーンはない。

 いずれにしても、このことが伏線になって、テレビ版“メグレ警視とベンチの男”では、被害者である中年男性とその娘のエピソードが描かれる。被害者の男は、会社を首になったことを家族に隠して3年間パリの街角のベンチに座って、時おり悪事とアバンチュールを楽しんでいる。
 偶然それを目撃した娘は、そのことをネタに父親から金を無心する。メグレは取調室でその娘の頬を平手打ちにする。「お父さんの代わりに殴る」と言って。

 しかし、ぼくはこの流れは必要ないと思う。“メグレ”ものとしては、失職したことを恐妻に隠して、3年間パリのベンチに座り続けた男の物語だけで十分な気がした。
 メグレに「お父さん」の役割など期待しているファンなどいるのだろうか、と思う。

 これに対して、“フロスト警部 ゆがんだ愛”も、家族内部で起こった犯罪を扱っているが、これについては続きで・・・。

 * 写真は、FOX CRIME “メグレ警視 ベンチの男”(原題は、“Maigret et l'homme du banc”)のラスト・シーン。
 パリ郊外の、元売春婦が経営する「曖昧宿」(翻訳本ではそう訳されていた)を後にするメグレ。