気ままに

大船での気ままな生活日誌

谷川俊太郎展

2016-10-26 05:57:51 | Weblog

おはようございます。旅先の賢島からの投稿です。これも、だいぶ前に覗いてきた展覧会のこと。三島大社の金木犀を見に行ったときだから、9月もおわりの頃だった。三島駅前に大岡信ことば館があり、そこで、谷川俊太郎展が開催されていたのだ。まだはじまったばかりで、観客もまばら、たっぷり、谷川俊太郎ワールドに浸ってきた。

いきなり、目の前に現れた谷川の処女詩集のうちの”二十億光年の孤独”に惹かれてしまった。まず、その詩を。

人類は小さな球の上で
眠り起きそして働き
ときどき火星に仲間を欲しがったりする

火星人は小さな球の上で
何をしているのか 僕は知らない
(或いはネリリし キルルし ハララしているか)
しかしときどき地球に仲間を欲しがったりする
それはまったくたしかなことだ

万有引力とは
ひきあう孤独の力である

宇宙はひずんでいる
それ故みんなはもとめ合う

宇宙はどんどん膨らんでゆく
それ故みんなは不安である

二十億光年の孤独に
僕は思わずくしゃみをした

なんと18歳の作である。俊太郎は勉強嫌いで、ほとんど学校に行かず、それでも都立高校に入ったが、途中、定時制に移り、やっと卒業し、ぶらぶらしていた。そのときにノートに書くつけていた詩である。父親は著名な哲学者の谷川徹三である。ぼくの散歩道の東慶寺にお墓があるので、馴染みがある。大学にも行かず、職にもつかない俊太郎に業を煮やし、これからどうするんだ、と問い詰めた。そのとき、こんなものを書いているとノートを差し出した。徹三は、若き日に自分も詩を書き、文芸評論もした経験がある。ノートに書かれた詩の新しい叙情性におどろき、◎〇Xをつけて評価もした。そのあと、友人で詩人の三好達治に送ったところ、彼にも認められ、一気に詩集として刊行されることになったのだ。

二十億光年の孤独が書かれたノート。徹三がつけた◎がみえる。

こうして、展覧会が始まるのだが、詩人俊太郎のその後だけではなく、マルチ人間としての活躍ぶりも紹介される。

文化人たちとの交流 堀口大学、小林秀雄、室生犀星、三島由紀夫、サトウハチローとの書簡

谷川俊太郎の詩作品/本人の朗読などによる紹介&写真作品

谷川俊太郎の映像作品 言葉を軸に、あるいは言葉を排除した実験的作品

谷川俊太郎のラジオコレクション なんと180点ものラジオを所持していたとのこと。現在は京都工繊大に寄贈。

展覧会最後の方に谷川俊太郎の自筆の言葉

本当の事を云おうか
詩人のふりはしているが
私は詩人ではない

谷川俊太郎

ぼくは、おもわずくしゃみした(笑)。たしかに、ただの詩人ではない。何もかもお見通しの大詩人なのだろう。

売り場でこの詩集を買って、今でも、ときどき、読んでいる。


それでは、みなさん、今日も一日、お元気で!

 

 

コメント (2)
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