1万年もつづいたという縄文時代が、もしかしたら、日本人の全盛期だったのではないかと思うことがよくある。たしかに、自然にまかせる生活だったから寿命も30歳程度で、15歳くらいで結婚して、次の世代が大人になる頃に世を去る。総人口も多くないから、自然の恵みだけで十分、生きていける。部族間の争いはあったにしても、小規模で、通常は平和に暮らしている。余裕がなければ、わざわざ、土器に網目模様をつけたり、火焔型土器や、あんなに想像力豊かな土偶をつくったりしない。表面的な見方かもしれないが、少なくとも、弥生時代以降、現代に至るまで、縄文時代を超える時代はなかったとぼくは思っている。
東博で”縄文展/一万年の美の鼓動”が開催されている。はじまって間もなく、七夕の日に出掛けた。とても素晴らしい展覧会だった。目玉は、史上初の縄文の国宝、6件すべてが集結ということで、ぼくも、これら、とくに5体の国宝土偶に再会するのが楽しみだった。だから、ここでもいきなり土偶から入ろうと思う。しかし、国宝土偶5体のうち、実は、縄文の女神と仮面の女神の展示は7月31日以降ということを知り、肩すかしをくってしまった。(初日から並べてほしかった)でも、8月に、また、行くつもりなので、以下にそれらについても書こうと思う。この二つを抜かすわけにはいかないのでね。館内は写真撮影禁止なので、現地の博物館で撮ったものをここに載せようと思う。
まず、縄文国宝第1号となった、通称、”縄文のビーナス”から。ぼくがはじめて彼女に出会ったのは、今から30年以上も前。国宝になったばかりか、重文時代だったかの頃。松本からの帰途、茅野で下車し、博物館で初対面した。当時は、もちろんブログはなかったから、写真も感想文もない。そして、二度目は2009年12月、東博で開催された”国宝土偶展”で。このときは、縄文のビーナスを含めて、”中空土偶”(函館から出土)と合掌土偶”(青森県八戸)の3点だけが国宝だった。そして、三度目にお会いしたのは、茅野の博物館で、2014年9月。このときは、妹の”仮面の女神”が国宝になったばかりで、それも一緒に見ることができた。(そのあとすぐ2014年、10月、東博での日本国宝展で5体お揃いでも見ている。)ということで、まず今回で5度目となる(予定の)、”縄文のビーナス”から。そのあと”仮面の女神”を詳しく、ご覧いただきます。
縄文のビーナス(尖石(とがりいし)縄文考古館にて)
美尻と渦巻頭の、縄文のビーナス
縄文のビーナスは、約4000年から5000年前、縄文時代中期。全長は27センチ、重量は2.14キロ。昭和61年、茅野市の棚畑遺跡で出土。頭頂部が平らで、円形の渦巻き文が見られる。顔はハート形のお面のようで、切れ長のつり上がった目と小さなおちょぼ口。また、胸は小さいが、お腹とお尻は大きく張り出しており、妊娠した女性の様子を表している。つくりは骨格を組み立て、粘土で肉付けする方式。粘土には雲母が混ぜられ、金色に輝いている。
つづきまして、妹分の仮面の女神。これは同年4月に東博の新国宝指定展でも見ているので、今回で四度目となる。
仮面の女神 (尖石(とがりいし)縄文考古館にて)
仮面の女神は、約4000年前、縄文時代後期前半。茅野市湖東の中ッ原遺跡から出土。全長34センチ、重量2.7キロ。逆三角形の仮面をつけ、体は渦巻き文様。粘土紐を積み上げて作成、中空になっている。お墓の前の土に横たわるように形で掘り出された。右足ははずれていたが、これは当時、人為的にはずしたものとのこと。
ビーナスと仮面の女神の比較。小柄なビーナス。
さて、お次は、日本国宝展の半年あと、2015年7月、山形県立博物館で再会した”縄文の女神”。国宝に認定されたのは平成24年(2012年)。それまでは、地元では”縄文のビーナス”と呼ばれていたが、すでに、茅野の国宝・縄文のビーナスがいるので、これを機に、縄文の女神と呼称するようになった。
縄文の女神(山形県立美術館にて)正面から。頭部は半円形に丸く、複数の孔が開けられている。眼・鼻・口の表現がないのが特徴。
横から。明瞭な出っ尻です(笑)。
四番目は、合掌土偶。これは、八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館の所蔵。近くまで行ったが、見逃してしまった。でも、青森市の県立郷土博物館でも精巧なコピーを観ることができた。
ちょうど国宝になったばかりの頃で、八戸の駅だったか、ショッピングモールだったかに、こんな合掌土偶の模型が。
膝を立てて座り、胸の前で両手を合わせるその姿から、”合掌土偶”と呼ばれている。何かを祈っているようにみえる。ぼくは、土偶の五郎丸ポーズと茶化したことがある(汗)。土偶の体の一部に赤色顔料が検出され、使用時は赤く塗られていたいう説がある。
ぜひ、現地、函館市縄文文化交流センターで見てみたい中空土偶。頭から足先まで中空なので、その名がある。しかし、頭が空っぽというイメージなので、もっといい愛称をつけてあげたい。北海道唯一の国宝でもあるし、”縄文北の女王”とか。
8月にもう一度、行き、縄文のビーナスに会ってくるつもり。
(つづく)