'15.01.20 『きっと、星のせいじゃない』(試写会)@有楽町朝日ホール
CheRishさんで当選 いつもありがとうございます! 実はCheRishさんでは『エクソダス』も当たっていたのだけど、体調崩して行けなかった 『エクソダス』お声掛けしてキャンセルしてしまった、こぶたさんをお誘いして行ってきたー♬
ネタバレありです! 結末にも触れています!
「17歳のヘイゼル・グレイス・ランカスターは末期ガン患者。両親に勧められてイヤイヤ出席したガン患者の集会で、オーガスタス・ウォルターズと出会う。自分の病状を気にして、彼に恋することを戸惑うけれど、オーガスタスの一途な思いが、ヘイゼルにある奇跡を起こす・・・」という感じの話。実はあまり期待せずに見たのだけど、これはなかなか良かった。ありがちな難病モノだろうと思っていたのだけど、これは青春映画で恋愛映画。そして、家族の映画でもある。
公式サイトや、Wikipediaによりますと、2012年1月10日に出版され、ベストセラーとなったジョン・グリーンの「さよならを待つふたりのために」の映画化。この作品は、ジョン・グリーンが小児病棟で牧師見習をしていた時に知り合った、エスター・グレース・アールという少女との出会いをきっかけに描かれたそうで、彼女は2010年に16歳で亡くなっている。そのためもあってか、映画化の話が出た時、グリーンは乗り気ではなかった。『トワイライト』(感想記事『トワイライト ~初恋~』、『ニュームーン/トワイライト・サーガ』)シリーズでもおなじみのプロデューサー、ウッィク・ゴットフリーの「あなたはガンの本を書いたわけではないし、私たちもガンの映画を撮るつもりはない」という言葉で、映画化を許可したとのこと。
監督はジョシュ・ブーン。自伝的作品『Stuck in Love』で長編デビュー。デビュー作にして、ジェニファー・コネリー、ローガン・ラーマン出演というのは、実力が認められたと言えるのかな? ちなみに今作にも出演しているナット・ウルフも出演している。脚色はスコット・ノイスタッター&マイケル・H・ウェバー。2人はウェバーが1995年トライベッカ・プロダクションズ・インターンシップに応募した際に、ノイスタッターが雇用して以来コンビを組むことが多く、2人の共同作品としては『(500)日のサマー』(感想はコチラ)が有名。実際、批評家などの間では、シャイリーン・ウッドリーと脚本の評価が高いのだそう。ちなみに2人の次回作は2015年公開の『ペーパータウン』で、なんとこちらにもナット・ウルフ出演! ナット・ウルフくん売れっ子?!
2012年1月31日、20世紀FOX傘下のFOX2000が映画化権獲得。2013年2月19日監督と脚本家が決定。3月19日シャイリーン・ウッドリーの主演が決定。原作者のジョン・グリーンはメイ・ホイットマンに演じて欲しかったようだけれど・・・ 5月10日にはアンセル・エルゴート、7月23日にはローラ・ダーン、ナット・ウルフの出演が決定。9月6日にはジョン・グリーンがtwitterで、ヴァン・ホーテン役をウィレム・デフォーが演じるとtweetしたとのこと。ちなみに、ジョン・グリーン自身もヘイゼルのカンニューレが何なのか聞いてしまう少女の父親役でカメオ出演したそうだけれど、残念ながら公開版ではカット 2014年9月16日に全米で発売になった、Blu-ray&DVD版には収録されているとのこと。2013年8月26日ペンシルベニア州ピッツバーグで撮影開始。重要なシーンとなる教会は、ピッツバーグ郊外のレバノン山にある聖パウロ聖公会で行われたのだそう。そして、もう1つ重要なシーンであるアムステルダムの運河沿いのシーン。なんと、このシーンで使われたベンチが2014年7月2日に盗まれてしまい、現在も見つかっていないのだそう。シャイリーンもしくは、アンセルのファンの仕業なのかは不明。2014年6月6日公開。全世界で3億400万ドルの興収を記録。Rotten Tomatoesの支持率は80%、6.8点を得たのだそう。
さて、長々Wikipediaや公式サイトを見れば分かることを書いてきましたが、一応個人メモ的なものなので(o´ェ`o)ゞ ということで本題! 主人公のヘイゼル・グレイスは映画冒頭から末期の肺ガンであり、そのことを本人も知っているという状態から始まる。13歳の時に発病し、一時は昏睡状態に陥ったヘイゼル・グレイスは、投薬による経過状態を提出する、いわゆる実験台になることで、開発中の薬を使用。これが奇跡的に効果を発揮し、現在は小康状態を保っている。とはいえ酸素ボンベを手放すことはできず、学校に通うこともできない。当然、完治したわけではなく、いつ容体が急変するかも分からない。末期ガンであることを自覚しているなんて、主人公が大人であっても見ている側も辛いけれど、それがまだ17歳の少女であることがより辛い。13歳までの彼女にはいろいろな夢があったでしょうけれど、現在の彼女には1年後すら夢見ることはできないわけで、なので母親から勧められたガン患者の集いにもしぶしぶ参加している。アメリカ映画でよく見かける、ガン患者やアルコール中毒患者など、共通の問題を抱えた人々が集い、円形になってお互いの話を聞くあれ。あれを何て呼ぶのかイマヒトツ分からないのだけど、『ラビット・ホール』(感想はコチラ)の記事にも書いたけど、この集いで救われる人はたくさんいると思うのだけど、向いていない人もいるとは思う。ただし、ヘイゼル・グレイスはここで運命の出会いをするので、この時点で彼女が参加を渋っているのは、その運命との落差を出しているだけかも? そして後の伏線というか、常に彼女の根底にあった思いというか・・・
母親に連れられて、いつもの集いにやって来たヘイゼル・グレイスは、入り口で見慣れない青年とぶつかる。会場で、自分に熱い視線を送ってくる彼は、1つ年上のオーガスタスで、親友であるアイザックの付き添いで参加したのだった。眼球にガンができたため、片目を摘出したアイザックは、もう片方の目にも転移していて、近々摘出手術を受けることが決まっている。でも、自分には素敵な彼女がいるから幸せだと語る彼は、やや強がっている気がしなくもないけれど、そうやって自分を保っているのかも・・・ 高校のアメフト部のヒーローだったオーガスタスは、骨肉腫で右足の膝から下を失った。でも、今は再発もなく元気だという。オーガスタスが人の記憶に残りたいと発言すると、人類が滅亡してしまえば意味がないと発言するヘイゼル・グレイス。どちらの意見も間違っているわけでないし、ここはお互いの意見を発表し合う場所なのだから、反対意見が出てくることもある。だからといって、全否定するような発言をするのはなかなかスゴイなと思ったりするけれど、不思議と嫌悪感はない。生意気で嫌な女の子だとも思わないし、自暴自棄になって破滅的な考え方をする子だとも思わない。彼女の思考がそういう傾向にあるのは確かだし、それには間違いなく病気が関係していると思うけれど、その病気ときちんと向き合って、真剣に生きていることが伝わって来るからだと思う。
オーガスタスも同じ気持ちだったのか、自分の意見に反対意見を唱えられても、ますます彼女に惹かれた様子。早速、猛アプローチ。ヘイゼル・グレイスを映画に誘う。てっきり映画館へ行くのかと思ったら、向かったのはオーガスタスの自宅。自宅には彼の両親もいて、ヘイゼル・グレイスを快く受け入れてくれる。舞台となっているのは、ペンシルベニア州の田舎町。映画館もそんなに近くにはないのかもしれないし、オーガスタスは現時点ではガンの再発はしていないとはいえ、全くの健康体とは言えないのかもしれない。なので、自宅の地下には彼の趣味の部屋が作られている。この部屋で映画を見ることが彼の楽しみ。結局、映画を見たんだっけ? 見てなかったような気はするけれど、映画の好みも、読んでいる本も全然違うのに、2人の会話はどんどんはずんで、とっても気が合っていることが分かる。その感じを見せるのが上手い。2人が恋に落ちることを知ってて見ているわけだから、伝わって当然という気もするけれど、その過程に共感出来たり、好感が持てるって重要。そういう意味では、とっても良かったと思う。
2人が使っているのってメッセンジャーなのかな? アメリカの10代の子たちが、どのツールを使って会話しているのか分からないのだけど、LINEではないよね? まぁ、LINE的なツールを使って会話をするんだけど、このシーンがカワイイ! 2人のウキウキ感もそうなんだけど、メッセージが手描きっぽい吹き出しで表示される。この感じがとってもカワイイ。一つ間違えると、やり過ぎだったり、あざとかったりしちゃうけど、そうはなっていない。本当にポップでカワイイ 2人が盛り上がったのは、ヘイゼル・グレイスの愛読書「大いなる痛み」について。どうやら、主人公は若くして亡くなってしまい、未完成のような形で終わっているらしく、2人が気になっているのは、その後残された人々がどう過ごしたか。もちろん2人で話していても正解は出ない。だったら作家に聞いてみようとなるわけで、それはヘイゼル・グレイスが既に試し済み。残念ながら返信はなかった すると、数日後オーガスタスからビックリニュースが! なんとヴァン・ホーテンの秘書から返信があったというのだった。早速、ヴァン・ホーテンにメールするヘイゼル・グレイス。彼からの返事には、2人が聞きたかった答えは書かれていなかったけれど、アムステルダムに来ることがあれば会いに来て欲しいというメッセージが! 大興奮のヘイゼル・グレイス。母親のフラニーも喜んでくれるけれど、ヘイゼル・グレイスの治療にお金がかかっている一家には、アムステルダムに旅行する余裕はなかった。まぁ、ヘイゼル・グレイスの場合、健康な女子高生が旅行するのとはわけが違うだろうし・・・
この件をオーガスタスに話すと、彼は難病の子どもたちの夢を叶えるウィッシュ・プロジェクトを思いつく。でも、ヘイゼル・グレイスは既にディズニーランドに行って使ってしまっていた まぁ、お気づきかと思いますが、この件はまだウィッシュ・プロジェクトを使っていないオーガスタスが、彼が友人であるヘイゼル・グレイスと共に、共通のファンであるヴァン・ホーテン氏に会いに行きたいと申請し、承認されることで解決する。この辺りをご都合主義と感じるかどうかってこともあるけど、2人の思いを叶えてあげたいという観客の思いは、プロジェクトの主旨とピッタリ一致して全く気にならない。それは、前述した手描きの吹き出しが表示されるようなポップな描き方と相まって、おとぎ話的な魔法のような感覚で見れたりするからかもしれない。
夢が叶うかもしれないということで興奮したのか、ヘイゼル・グレイスは肺に水が溜まって呼吸困難となり、昏睡状態になってしまう。心配したオーガスタスは毎日病院に通うけれど、家族以外の面会は不可とのことで、ICUで眠るヘイゼル・グレイスのそばに行くことも出来ない。実はオーガスタスがこの時病院に通っていたことは、後に大変ショックなことに繋がるのだけど、この時点では全く何の情報も与えられていないので、ヘイゼル・グレイスはもちろん見ている側も分からない。でも、その事実を後から知ることで、彼の誠実な人柄や、それゆえの苦悩を知ることになる。それはとても良かったと思う。
一命を取りとめたヘイゼル・グレイスは一部の医師の反対に合うけれど、賛同してくれた女性医師の尽力もあって、無事(?)アムステルダムに行けることになる。同行するのはオーガスタスと母親のフラニー。初めての海外旅行に興奮気味の2人。母はなるべく2人の時間を作ってくれる。実はヘイゼル・グレイスは自分の病状を考えて、オーガスタスと恋人同士になることをためらっていた。それは、残された彼を思ってのこと。でも、母としては彼女に恋して欲しかったのだと思う。それは単純に恋も知らずに娘を死なせなくないという、親心のエゴ的なものではなく、恋することによって得る喜びや、見えて来る世界を見せてあげたいというような・・・ まぁ、母親がずっと一緒では、友人どうしでも楽しめないけれど(笑)
オーガスタスはスーツ、ヘイゼル・グレイスは母親が用意してくれていたワンピースを着て、ヴァン・ホーテン氏が予約してくれたレストランへ向かう。2人はウォルターズ夫妻として通されて、最高のおもてなしを受ける。全てヴァン・ホーテン氏が用意してくれたこと。シャンパンを飲む2人があまりにキラキラしてて、見終わったらシャンパン飲みたくなって、乾杯しちゃった(笑) 2人がシャンパンを飲むシーンは後にもう一度出てくる。このシーンとの対比となっているけれど、どちらも印象的でいいシーン。末期ガン患者がお酒飲んで大丈夫なのか?とか、ヘイゼル・グレイスは未成年なのでは?というツッコミは野暮! ホントに素敵なシーン。そして少々ベタな展開のこのシーンが、こんなにキラキラしているのは、2人の命の輝きでもある。
そんな素敵な夜をプレゼントしてくれたヴァン・ホーテン氏との対面に胸を弾ませて向かったものの、ドアベルを鳴らしても反応がなく、諦めかけたところに美人秘書が迎え入れてくれたものの、アパートの中は散らかり放題。なんだか今まで感じていた紳士的なイメージと違うような・・・ 現れたのはウィスキー片手にガウン姿のだらしない中年男。どうやら今回のメールなど一部始終は、美人秘書が独断でしていたことだったらしい。完全にアル中という様子で、2人の相手をする気など一切なく、呂律もあやしく毒舌ばかり。あなたに会いにわざわざ来たのにと言っても、茶化してばかりで話にならない。秘書も呆れた様子。怒りをぶつけてヴァン・ホーテン家を後にしても、傷ついた心は癒えない。ヴァン・ホーテンがもともと嫌な人物なのか、スランプでアルコールに溺れてこんなことになってしまったのか、この時点では不明だけど、例えどんな状況だろうと、礼儀正しく挨拶した2人に対して、こんな態度はないわけで・・・
追って来た美人秘書がお詫びにアンネ・フランクの家へ案内してくれることに。「アンネの日記」は読んだけれど、その舞台となった隠れ家が、映画で重要な場所として描かれる。まだ10代だったアンネには、この家の中から出ることは出来なかった。彼女がこの家を出た時は、ゲシュタポに発見されて、アウシュビッツへ移送される時だった。そして、彼女はそこで亡くなった。唯一の救いは、この家で一緒に隠れていた一家の息子と淡い恋をしたこと。肺ガンのヘイゼル・グレイスにとって、階段の登り降りは大変な重労働で、直ぐに息が切れてしまう。隠れ家にはエレベーターがないので、美人秘書は諦めようと言うけれど、ヘイゼル・グレイスは行きたいと言う。読書好きの彼女は「アンネの日記」を読んでいたのかもしれないし、簡単に諦めたくはなかったのかも。隠れ家なので、当然最終的には狭く急なハシゴ段になる。苦しそうな息をしているヘイゼル・グレイス。酸素ボンベもオーガスタスに託し、それでも頑張って登る。やっと最上階のアンネたちが暮らした部屋に着いた感動で、ヘイゼル・グレイスとオーガスタスはキスをする。すると自然と周りから拍手が もちろん、酸素ボンベを抱えた彼女の頑張りを見ていたからだけろうれど、普通だとベタ過ぎると感じてしまいそうなこのシーンが、とっても映画的で素敵な場面に見える。そういうのが上手い。
その夜、2人は結ばれる。自分の足は膝から下がないのだと告白するオーガスタスを気遣うヘイゼル・グレイス。ここも素敵なシーンだった。そして翌朝、ヘイゼル・グレイスを散歩に誘ったオーガスタスは、運河沿いのベンチで衝撃的な告白をする。ヘイゼル・グレイスが緊急入院していた時、腰に痛みを感じて精密検査を受けた。結果は、全身にガンが転移していた。もう、手の施しようがない・・・ そんな展開になると思っていなかったので、自分も衝撃を受けたのか、その後ヘイゼル・グレイスがどう答えたのか、それに対してオーガスタスがどう答えてこのシーンが終わったのか覚えていない。次に思い出せるのは、3人の帰国をヘイゼル・グレイスの父親が迎えてくれた空港のシーン。自分でもちょっとビックリ∑(*゜ェ゜*)
地元に戻り気丈に振る舞っていたオーガスタスだけど、ヘイゼル・グレイスは夜中に彼からの電話で起こされる。タバコを買いにガソリンスタンドへ来たけれど、動けなくなってしまったと言うのだった。こんなことも自分一人で出来なくなってしまったと泣くオーガスタス。辛い・・・ 人は誰でも皆死ぬ。突然の事故で亡くなるのでなければ、病気ではなく老衰であっても、体力が落ちて行くのだろうと思う。でも、まだ18歳の彼のこの姿を見るのは本当に辛い・・・
ヘイゼル・グレイスと親友のアイザックは、ある日オーガスタスから教会に呼び出される。自分の大切な人だけで生前葬をしたいというのだった。以前頼まれていた弔辞を述べる2人。それぞれとっても良かった。ヘイゼル・グレイスもアイザックもガン患者だから、自分たちの命の期限と向き合っている。その上で出てきた言葉はとても素直。そして、そういう3人だから分かり合えるものがあるのだと思う。
ヘイゼル・グレイスのナレーションで、病で死の床にある患者は、死期が近づくと何故か体調がとても良くなる日があるのだと言う。嘘のように体が軽く、痛みもない。一瞬治ったのではないかとさえ思う。でも、それは錯覚で、その数日後亡くなることが多いという・・・ そんな1日だったのか、ヘイゼル・グレイスとオーガスタスはピクニックに出かける。そこで2人はシャンパンを飲む。アムステルダムのキラキラしたシャンパンとは違うけれど、このシーンもしんみりしたシーンではない。穏やかなこのシーンも好きだった。
数日後、オーガスタスは亡くなった。ヘイゼル・グレイスのナレーションによれば、最後は苦しんだようだけれど、そのシーンは描かれない。前述したとおり、製作者の意図としては"ガン"の映画ではないということなのでしょう。オーガスタスの葬儀で、弔辞を求められたヘイゼル・グレイス。本当に言いたいことは別にあったけれど、皆が求めているであろう弔辞を述べる。それでいい。それが、配慮であり、優しさでもある。真実がどうであれ、自分が思っていることをそのまま発言することが、人を傷つける場合もある。時と場合を考えるというのは、彼女が大人になった証拠。
帰ろうとしていると車の窓を叩いてくる人物が・・・ ヴァン・ホーテンだった。実はオーガスタスは、あの後も彼と連絡を取り合っていて、彼の葬儀に参列して欲しいとお願いしていたのだった。2人が大好きだった「大いなる痛み」は実は彼の実体験。残された家族の1人はヴァン・ホーテン自身だった。彼は今もその苦しみから抜け出せていない。彼は何か抽象的なことを、ヘイゼル・グレイスの問いの答えとして語るけれど、ヘイゼル・グレイスの胸を打つことはなかった。ヴァン・ホーテンから受け取ったオーガスタスの手紙を読み、涙を流すけれど、悟ったような表情で車を運転し、墓地を後にするヘイゼル・グレイスの姿が印象的。きっと、彼女なりの「大いなる痛み」の答えを見つけたのだと思う。
自分が愛する人を残して逝くと思っていたヘイゼル・グレイス。でも、自分が残される側になったことで、その痛みを抱えて生きていくことは、辛いことばかりではないのだと気づいたのかもしれない。『ラビット・ホール』(感想はコチラ)の中で、自身も息子を亡くした母親が、事故で息子を亡くした主人公に、悲しみを小石に例えるシーンがある。「石はいつかポケットの中に入る大きさになる。ポケットにあることを忘れる時もあるし、時にはポケットに手を入れることもある、それでもポケットに石を入れて生きていくのは、決して辛いことではない」という主旨のセリフが思い出される。とはいえ、これは先日14年3ヶ月一緒に暮らした飼い猫を亡くした時、お友達のtomocoさんが引用してくれた言葉でもあるのだけど・・・
キャストは良かったと思う。若い主演2人を支えたベテラン俳優たちは良かった! 母親のローラ・ダーンは、久しぶりに見た気がするけど、髪型は以前のままの前髪厚めながら重さを感じない無造作ヘア。以前と変わらない髪型ゆえに老けた感が漂うけれど、末期ガンの娘を持つ母親だからむしろOK! おそらくフラニーとしても初めてのアムステルダムだったと思うけれど、2人を送り出した後も娘を心配してホテルの部屋で過ごしていたのじゃないかと思わせる。それが正解なのかは分からないけれど、そう思ったのはローラ・ダーンの演技ゆえ。良かったと思う。ヴァン・ホーテン役のウィレム・デフォーは、怖くて滅茶苦茶で、人を怖気させるけど、寛大で魅力的な人物をということでキャスティングされたそうだけれど、納得という感じ。初対面の嫌なヤツ感丸出しの時ですら、魅力的だった。結局、彼の助言は必要なくなってしまったヘイゼル・グレイスだけど、オーガスタスを支えていたのは、彼とのやり取りもあったのだと思うので、全く描かれていないそれを感じさせたのはさすがの演技。
オーガスタスのアンセル・エルブートは、アメフト部のスター選手という、いわゆるハイスクール・ヒーローから一転、ガン患者となってしまったわけだけれど、それでも失わない真っ直ぐさを感じさせていたと思う。演技が特別上手いとは思わなかったけれど、本人の一生懸命さが役にも反映して、それが胸打つこともある。『ダイバージェント』(未見)に続いての、シャイリーン・ウッドリーとの共演だそうで、息も合っていたように思う。ヘイゼル・グレイスのシャイリーン・ウッドリーは、『ファミリー・ツリー』 (感想はコチラ)でも上手いと思っていたけど、この演技も良かった。どうしてもこの役が演じたくて、原作者のジョン・グリーンに手紙を書いたそうだけれど、150人いたヘイゼル・グレイス候補の中から、50人に会ったというジョシュ・ブーン監督は、10~15秒で彼女に決定したと語っている。まぁ、脚色もありかもだけど(笑) 『ファミリー・ツリー』の時より、やや丸くなってしまった印象で、時々末期ガン患者に見えないくらい健康的だったりもするけど、全編鼻チューブで熱演していたし、これは"ガン"の映画ではないのでOK! 一生懸命生きているヘイゼル・グレイスの思いが伝わって来た。
"ガン"の映画ではないと言いつつも、ガン患者が主人公なのだから、当然治療シーンなども出てくるし、会話にも登場する。だから、感想もどうしても、ガン患者であること前提とした内容になっている。でも、これは製作者が作者に語ったとおり、あくまで"ガン患者"を主人公とした、青春映画であり、恋愛映画であり、家族の物語でもあるのだと思う。そして、どう生きるか、どう死ぬのかという、尊厳の映画でもあるのだと思う。それこそが、作者が気にしたことであり、製作者が守りたかった部分なのかなと思った。
重いテーマをポップに見せたのが良かった。前述したけど、2人の会話の手描きの吹き出しがとってもカワイイ。ヘイゼル・グレイスのポップな部屋も好き。アメリカの小さな田舎町と、アムステルダムという対比も良かった。
今、青春を過ごしてる若い人たち、もしくはその親世代の方にオススメ! 難病モノではあるけどデート映画としてもいいかも? シャイリーン・ウッドリー&アンセル・エルブート好きな方是非!
見た後、シャンパン飲みたくなる! あと、Okayって言いたくなるかも?←ないか(笑)
『きっと、星のせいじゃない』Official site