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【cinema / DVD】『ロンドン・リバー』鑑賞@WOWOW録画

2015-02-19 01:49:05 | cinema / DVD

『ロンドン・リバー』鑑賞@WOWOW録画

録画→最近見た映画③『ロンドン・リバー』ロンドン同時多発テロ発生時に、娘を探す母親と、息子を探す父親の、宗教や人種を越えた交流を描く。重いテーマで、悲劇だけど、それでも生きる姿に自分の方が励まされる。母親のブレンダ・ブレッシンと父親のソティギ・クヤテの演技が素晴らしい!


 


ネタバレありです! 結末にも触れています!


「夫を早くに亡くしドーバー海峡の島で1人で暮らすソマーズ夫人。2005年7月7日ロンドンで同時多発テロが起きたニュースをテレビで見る。ロンドンにいる娘を心配して電話をするけれど応答がなく・・・」という話。これは良かった。重いテーマを淡々と見せている。結末も辛いものだけれど、本当に伝えたかったことは別にあるのだと思うので、その辺りは心温まるというと語弊があるけど、少し救いになって見終わった後味は悪くはない。


ソマーズ夫人が亡夫のお墓参りをするシーンから始まる。穏やかで質素な暮らし。その中に飛び込んできたロンドン同時多発テロ(Wikipedia)のニュース。急にソマーズ夫人の様子が変わる。何度も電話をかけては留守番電話にメッセージを残す。でも、折り返し電話はない。近くに住む弟に留守を頼み、ロンドンへ急ぐ。娘がロンドンに住んでいて、そこで同時多発テロが起きたとすれば、もちろん心配して連絡すると思うし、連絡が取れなければ不安になるとは思うけれど、いきなりロンドンに向かうのは唐突な気がするのは、自分が母親じゃないからなのかな? でも、結局この予感は的中してしまうので、虫の知らせだったのかもしれない。


娘のアパートにやって来ると、大家は中東系の男性だった。この時点で犯人は逮捕されていなかったように思うけれど、アメリカで起きた同時多発テロ以降、世界各地で多発していたイスラム過激派による自爆テロなどもあり、ほとんどの人がイスラム系の犯人を想像したと思う。なので、ソマーズ夫人のこの反応を非難できないけれど、でも彼女の中に人種差別的な部分があったことも事実だと思う。


ソマーズ夫人は警察に行き娘の失踪届を出すけれど、このテロで失踪者の届け出が多く、手が回らない状況だと言われてしまう。担当した婦人警官の勧めにより、貼り紙を作成し町中に貼り出すことにする。藁をもすがる思いというけれど、そうせずにはいられない気持ちが伝わって来る。警察の言い分も分かるけれど、やっぱり被害者に冷たい気はした。とはいえ、この時点では被害者かどうかも分からないのだけど。


貼り紙を見た人物が連絡を取って来る。待ち合わせの場所に行くと、現れたのはドレッドヘアのアフリカ系の男性。思わず逃げるように帰ってしまうソマーズ夫人。実はこの男性、冒頭にも映っていた。ちょっと忘れてしまったのだけど、ソマーズ夫人の後を追って来たので通報したんだっけ? 詳細を忘れてしまったけど、要するに2人は警察に行く。そして、ドレッドヘアの男性は取り調べを受けることになる。この男性はフランス語しか話せない。フランス語を話せて自身もムスリムの刑事が尋問したところによると、このオスマンという男性は息子を探しにフランスからやって来たのだった。元々はアフリカ出身で、息子が6歳の時に単身フランスに渡り、それ以来家には帰っていない。息子を探しに来たけれど、彼のことは何も知らないと言う。そもそもは出稼ぎに行ったと言っていたように思うけれど、彼が一度も帰国しなかった理由は、金銭上の問題以外にあったのかについては語られなかったような? 


オスマンがソマーズ夫人に連絡を取ったのは、ソマーズ夫人の娘ジェーンが、彼の持っていた写真に息子アリと一緒に写っていたから。どうやらジェーンはアラビア語を習っており、イスラム系の学校に通っていたらしい。2人はそこで知り合い、ソマーズ夫人が今泊まっている部屋で同棲していたことも分かる。刑事たちは念のため部屋から2人のDNAを採取していく。2人で部屋に残されるけれど、ソマーズ夫人はオスマンを追い帰してまう。アリと恋に落ちて同棲していたのならば、それはジェーンの選択であって、オスマンの息子アリにも、ましてオスマンにも悪いところは何もないのに、この態度はないだろうとは思うけれど、混乱している気持ちも分からないでもない。


2人が通っていた学校に行き、教師からジェーンが熱心にアラビア語を習っていたこと、アリと彼女は恋人同士であったことを聞く。それでも、受け入れることが出来ず、黒板に書かれていた文字を指さし、これが文字なの?!何故こんな文字を習う必要があったの?!と怒りをぶちまけてしまう。理不尽な怒りをぶつけられた上に、自分たちの文化も否定された女性教師は、それでも大人の対応をする。この自分よりも全然若い女性教師に、大人の対応をされたことで、少し自分の理不尽さを自覚したようで、その後オスマンにも徐々に心を開いていく。言い忘れたけど、ソマーズ夫人はフランス語が話せる。ドーバー海峡の島に住んでいるからから? フランスに近いから?


2人は協力して子供たちを探す。しかし、オスマンはホテル代が払えなくなり、帰国しなければならなくなる。するとソマーズ夫人は、アパートに泊まったらどうかと提案する。急展開ではあるけれど、子供たちが恋人同士だったことも、2人の心の距離を縮めたのかもしれない。この場合、男女の関係に?などと考えるのは野暮!(笑) ソマーズ夫人はベッドで、オスマンはソファで眠りながら、いろいろな話をする。やはり人は1人では生きていけないのだなと思ったりもする。その辺りを押し付けがましくなく見せるのが良かった。


翌日、大家の男性が、あの日2人が旅支度をして出かけるところを見た人がいると教えてくれる。近くに旅行会社があるかので調べてみてはどうかと言う。慌てて向かう2人。すると、2人がパリ旅行を計画していたことが分かる。飛行機の時間から逆算すると、2人が空港に向かったのは11時頃。あのバスには乗っていないはず! 2人は今パリにいるのだ!と安堵する。オスマンの安堵には別の意味もあった。彼は、息子がテロの実行犯ではないかと思っていたのだった・・・ これは辛い その細い今にも折れてしまいそうな体で、こんな思いを抱えていたオスマン。切ない でも今はその疑いも晴れ、2人は無事にパリにいることが分かった。お2人良かったねと思った瞬間・・・


先日の刑事から連絡が入る。2人があのバスに乗っていたことが分かったというのだった。イヤ2人はパリにいるはずだと言うと、DNA鑑定なので間違いないという無情な知らせ・・・ えー、これは 2人の遺体を見なければ信じることはできないと言うソマーズ夫人に対し、遺体はないとの答え。要するにそういうことだよね・・・ まさかの急展開にビックリ。何故、あの日ジェーンとアリが早めに家を出たのかは分からない。ほんの少し運命の歯車が狂って、悲劇になってしまった。憎むべきは犯人だけど、彼らは自らの行為を"正義"だと思っている。相手が誰か、その人が誰かの大切な人であることなど考えもしなかった。やり場のない悲しみ・・・


ソマーズ夫人も、オスマンも自分の家に帰るしかない。別れの時、2人は抱きしめ合う。カトリック教徒とムスリム。白人と黒人。その姿は、お互いをよく知れば分かり合える、支え合えることを表しているのに、国とか人種とか大きな単位になると、それが見えなくなってしまう。悲しい・・・ 映画は、それぞれが、それぞれの日常を歩きだすところで終わる。大きな悲しみを抱えても、それでも人は生きていく。ソマーズ夫人やオスマンの辛さとは比べ物にならないかもしれないけれど、大事な存在を失ったばかりの自分にとって、少しだけ救いになるラスト。見る人の状況によって見方は違うかもしれないけれど、それが映画のおもしろさでもある。


キャストはほぼ2人芝居という感じ。オスマンのソティギ・クヤテが良かった! 彼の物静かな佇まいに、怒り、悲しみ、喜びなど全ての感情を押し殺してきたのだろうと感じられる。アフリカ系ムスリムであるがゆえ、辛い思いをしてきたのではないかと見ている側に思わせる。その語られない背景を感じさせて見事。ソマーズ夫人のブレンダ・ブレッシンが素晴らしい! 小さな島から出て来て、おそらく初めて中東系の人々に接した。テレビのニュースが唯一の情報源で、そこで得たイスラム過激派のイメージから、彼らに対して抵抗感がある。それを隠しもしないのは、彼女が世間知らずだったからでもあるのかもしれない。その彼女が、お互い子供を思う気持ちに共鳴し、最終的にはオスマンを受け入れ、抱きしめるまでになる。わずか数日のこの変化を、自然に演じていた。素晴らしい


『アメリカン・スナイパー』(感想はコチラ)と本作と、図らずも続けて中東問題が絡んだ映画を見た。それだけ今世界的に注目されている問題だとも言えるのでしょうけれど・・・ 宗教問題や人種問題はとっても根深いものがあって、簡単にどちらが悪くて、どちらが正しいと言えるものではないけれど、こうして個々で分かり合って、助け合って、その輪が広がっていけば・・・ というのは理想論なのかな?


淡々とした語り口ではあるけれど、描かれるテーマは重く、結末も決して明かるものではない。でも、これは見て良かったと思った!


『ロンドン・リバー』|三大映画祭週間2014

 

コメント
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