『市民派議員になるための本 立候補から再選まで』(学陽書房)の
第8章 「公選法をどう使いたおすか?」。
候補者は、告示日の前と後では、できること・できないことが
逆転するので、公選法を理解することは大切。
だけど、必要以上に怖がると、自由な選挙ができない。
拡大連座制強化の法制化のとき、
「有権者の自由な選挙を妨げないように」という付帯決議もある。
候補者も有権者も、選挙運動期間中(告示日から投票日前日まで)は、
個人から個人への「話し言葉による選挙運動」は自由にできるので、
「○○さんを議員に」「○子さんに投票してね」という
電話は口コミでどんどん広げてほしい。
『市民派議員になるための本』(寺町みどり著/上野千鶴子プロデュース/学陽書房)
第8章 公選法をどう使いたおすか?
8‐1 公職選挙法とはなにか?
「選挙」に適用される法律はただひとつ、公職選挙法(公選法)です。
自治体(議員)選挙から、国政選挙まで、全国のどの選挙にも共通です。公選法は選挙期間だけでなく「政治家」に対して日常的に適用されますので注意してください。「政治家」とは「候補者になろうとするもの=候補者等」で、現職議員も、落選中の候補者も含まれます。
「公職選挙法」は「だれもが平等に立候補し、かつ公平な選挙運動ができるように定めたもの」だそうですが、禁止事項が多いわりには、アミの目が粗いザル法です。
解釈と運用に幅があり小魚も大魚もとりにがす「法は法でも悪法」です。
公選法は、違法な「選挙運動」を取り締まるものです。
「選挙運動」とは、選挙期間中に許される、①特定の選挙において、②特定の候補者を当選させるために、③選挙人にはたらきかける行為です。これを「選挙の3要素」といいます。この選挙運動は、逆に告示日以前はいっさい禁止されています。これを「事前運動の禁止」といいます。
事前運動とは、「立候補の届け出前の選挙運動のこと」です。つまり「①いつ、どの選挙に、②だれが立候補し、③投票をお願いすること、の3つを選挙の本番以外でしてはいけません」ということです。カンタンにいうと、「いつ、どこで、だれが、どの選挙に出るかを言っていけないし、投票依頼をしていけない」ということです。
公選法は禁止の多い複雑な法律だと思われていますが、ようするに、文書でも、話し言葉でも、この3つをしなければよい、と覚えてください。
公選法は罰則がきびしいので候補者にこわがられています。でも公選法をチャンと理解すれば、だいじょうぶ。公選法は、国の法律なので全国共通です。法律は公平に適用されますので、どこかで使えたノウハウやスキルは、全国どこでもマネできます。もしもどこかのまちで使えないとすれば、そのまちの選挙管理委員会(選管)やケイサツの解釈と運用がまちがっているのです。
《法律条文》
・〔一般選挙、長の任期満了に因る選挙及び設置選挙〕 公職選挙法第33条
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8‐2 政治活動とはなにか?
「政治活動」とは、「政党、その他の政治団体が行う宣伝活動や、個人の講演会」のことです。選挙の告示日までにできる政治にかかわる運動が「政治活動」です。
「政治団体の届け」をすれば、カンパをあつめたり、カンバンを立てたりできます。「政治団体の届け」は、選挙と候補者を特定することが届け出の要件になっていますので、役所に文書で届け出た時点で立候補予定者とみなされます。
市民型選挙に不可欠の、リーフレットやニュースなどの政策を書いた文書の作成や配布は、この「政治活動」にあたります。文書を作成するときは「選挙の3要素」を書かないように、記載内容をじゅうぶんチェックします。文書は「うごかぬ証拠」となるので、公選法に違反する文書が市民に配布されると摘発されることもあります。
市民型選挙は「名前と政策」をメッセージとして届け、投票してもらうので、当選するためには、合法的に名前を覚えてもらうことが必要です。当選を意図して立候補予定者の名前を強調する「売名行為」ととられないようなリーフレットをつくりましょう。
支持者をひろげるときは、公選法の「個別訪問の禁止」に抵触しないように注意します。戸別訪問とは、「不特定多数の有権者宅を、無差別に連続に訪問して、投票の依頼をおこなうこと」です。政治活動の賛同者をふやすために、3要素に抵触しないようにリーフレットを配ることは禁止されていないのですから、公選法は一般的には理解しにくい法律です。この本ではここまでしか書けませんが、公選法に抵触しない(法のウラをかく)マル秘のテクニックもあります。
また候補者となろうするもの、または公職にあるもの(長・議員)は、選挙区での年賀状、見舞状、これに類するあいさつ状は、いっさい禁止されています。これも証拠が残りますので、立候補しようと思ったら、出さないことが最善です。
《法律条文》
・〔戸別訪問〕 公職選挙法第138条
・〔あいさつ状の禁止〕 公職選挙法第147条の二
《用語解説》
・政治活動とは→政党その他の政治団体が、「政治上の主義・主張を同じくするものを組織化して綱領政策を決定し、これを国民の間に普及宣伝し国民の指示を求め、選挙に当たって多数の議席を獲得して自己の政策の実現を図る」ことです。
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8‐3 どこまで許されるか?
政治家には、「政治活動」は許されていますが、選挙の「事前運動」は禁止されています。コトバのちがいだけですが、合法・違法の決定的なちがいとなりますので、厳密に区別して使うようにしましょう。
一般的な「政治活動」は、政治団体へのお誘い、政治活動への理解を深めるための文書の配布や、集会を開くことなどができます。
議員なら、議会だよりの配布も政治活動です。一般的に、現職議員のほうがひろく許容されます。なぜなら4年間政治活動をしている実績、告示日直前までが政治活動と解釈され、選挙の事前運動とみなされないからです。議員が選挙前に名刺を配って歩くことは「売名行為」とみなされますので注意してください。
ホンバンの「選挙」のための「立候補の準備行為」(11章)は許されています。選挙カーやポスターや選挙はがきは、事前に準備しないとまにあわないからです。
候補者になりたい人が、自分に対する支持状況を調査する「瀬踏み(せぶみ)行為」もOKです。これは「わたし出たいんだけどどう思う?」ってあちこち聞いてまわることです。
刑罰が課されるおもな選挙犯罪には、「買収罪」「おとり罪」「選挙の自由妨害罪等」「虚偽事項公表罪」「文書図画の制限違反罪」などがあります。このうち市民派候補が注意をしなければならないのは、選挙期間中だけはリーフレットやニュースなどの「文書図画(この場合“ずか”ではなく“とが”と読みます。ご存じでしたか?)」が配れないということです。
選挙本番での、言論(はなしことば)による選挙運動は、ほんらい自由にできるもので制限をしないタテマエとされています。なぜなら、人物、政策を有権者によく知らせることが選挙運動のほんらいの目的だからです。コトバによるもので、まったく禁止されているのは「戸別訪問」。一定の制限のもとにできるのが、「個人演説会」「街頭演説」「連呼(れんこ)行為」。自由にできるものは「電話利用」と「幕間(まくあい)演説」であることを覚えておきましょう。
インターネットなどのニューメディアを利用しての政治活動は、現行の公選法の想定外ですが、告示前に表示したものについては、告示中に手を加えなければ、現時点では黙認されています。
《法律条文》
・〔選挙期日後のあいさつ行為の制限〕 公職選挙法第178条
・刑罰が課される選挙犯罪~〔買収及び利益誘導罪〕同法221条、222条、223条、〔おとり罪〕同法224条の二、〔候補者の選定に関する罪〕同法224条の三、〔選挙の自由妨害罪〕同法225条、226条、〔投票の秘密侵害罪〕同法227条、〔投票干渉罪〕同法228条、〔虚偽事項の公表罪〕同法235条、〔事前運動、教育者の地位利用、戸別訪問等の制限違反〕同法239条、〔選挙運動に関する各種制限違反、その一〕(文書図画の制限違反罪)同法243条
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8‐4 選挙違反はしない
どんな表現で有権者にメッセージを伝えても、8-1の「事前運動の禁止」に抵触しなければ選挙違反にはなりません。公選法をむやみにこわがることはありません。
市民派候補は、おカネをかけないキレイな運動をウリモノにしているので、不正をするなんて、だれも思っていません。選管にしてもケイサツにしてもおなじです。ケイサツが摘発するのはほとんどが「買収行為」です。
自治体の選管は、従来型の選挙しか知りませんし、やってよいことといけないことをチャンと理解していない場合が多いので、公選法の解釈(できること、できないこと)を選管に問いあわせるのは時間のムダ。聞けばほとんどダメと言います。選管は事前の行為を注意するところで、ケイサツはやった行為の違法を判断するところ。政党系候補者は、公選法違反スレスレという文書でも、警告覚悟で平気で配っています。ケイサツのほうが選挙妨害といわれるのをビビって動きません。
このように文書はかなりキワドイこともできますが、公選法違反をあえてする必要はありません。ガケから落ちないところまでちゃんと知っていれば、公選法の範囲内で、じゅうぶん政治活動や選挙運動ができます。「わたしたちキレイな手づくり選挙をすすめています」と言いながら、できること、思いつくことを、ノビノビたのしくやりましょう。
《法律条文》
・〔選挙事務の管理〕 公職選挙法第5条
・〔選挙管理委員会の設置及び組織〕 地方自治法第181条
・〔職務権限〕 地方自治法第186条
・〔選挙の自由妨害罪〕 公職選挙法第225条
・〔職務濫用による選挙の自由妨害罪〕 公職選挙法第226条
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要するに公選法は、「意図するところ」を問題にする法律、だってこと。
つまり、やった行為の目的はなにか。
ということで、「特定の候補者の当選を目的にした脱法行為」
には厳しい制限があり、制限は候補者との距離に反比例する。
候補者(選挙事務所)>確認団体>支持者>一般の有権者。
つまり、候補者との関係が近いほど、強い制限を受ける、ってこと。
特定の候補者と関係がない一般の人が、公選法をむやみに恐れることはない。
わたしがなぜ選挙期間中に、こんなもろ選挙の記事が書けるかというと、
「特定の候補者の当選を意図していないから」(笑)。
「インターネットを使っての選挙はどこまで許されるのか」、
についても書きたいのだけど、出先なのでここまで。
今日はこれから京都府の候補者のところへ行き、
午後は、福井県の敦賀に向かう予定。
最後まで読んでくださってありがとう
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「一期一会」に
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