みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

希望社会への提言(12)―科学・技術の縦割りを壊そう

2008-01-15 17:48:28 | 地震・原発・災害
今日の朝日新聞社説「希望社会への提言(12)」
―科学・技術の縦割りを壊そう―です。

読みおわって、なぜか生涯、市民の視点にたち、
脱原発の運動に身を投じた「市民科学者」故高木仁三郎さんを思い出しました。

わたしは高木仁三郎さんが好きで、
「高木仁三郎著作集」全12巻(七つの森書館)を予約して読んでいました。

 

読み終えた本は、京都で環境社会学を学ぶ子どもに送っていました。

科学は、研究者や一部のひとのためだけではなく、
市民のためにあってほしい、そんな思いです。

希望社会への提言(12)―科学・技術の縦割りを壊そう
朝日新聞 2008年01月15日(火曜日)付社説

・時代を先取りして、テーマを組みかえる
・専門外の人が加わる「科学のネタ出し会議」を


「希望のハイテク」って何だろう。
 ・ふるさとの親の体調異変を自動発信するケータイ
 ・汚れを瞬間処理するおむつ
 華やかな夢ではないが、確実に安心や快適さをもたらしてくれそうだ。
 少子高齢時代の求めに応える技術は、産業の新しい展開にもつながる。
 師走の東京・臨海副都心で、トヨタ自動車が、人を乗せて動くロボットを披露した。通行人をよけて進む。お年寄りの「街歩き」にもってこいだ。
 これは、生活支援型のロボットづくりを中核事業に育てていく、という記者発表の一環だった。クルマを組み立てるロボットの技術を発展させ、福祉や介護の新市場に生かそうというのである。
 忘れてならないのは、こういう実用技術も、ハイテクになればなるほど基礎科学の最新成果が必要となることだ。
 トヨタも脳の探究に目を向ける。去年11月、脳科学の拠点をもつ理化学研究所(理研)と共同研究に入った。
 「人に寄り添う機械をつくるには、人の行動をつかさどる脳の働きを知らなくてはならない」。ロボットにも、状況をざっくりつかんで反応する人間の身のこなしを、というのだ。

    ◇
 脳は、科学の中でも最もダイナミックに進化しつつある研究分野である。
 脳の専門家は医学者や生理学者、というのが昔の常識だった。いまは違う。
 理研の脳科学総合研究センターでリーダー格の日本人研究者をみると、工学系出身が1割程度。心理学出身もいる。
 センター長の甘利俊一さん自身も、東大工学部で数理工学を学んだ。脳への関心を強めたのは60年代だ。「脳の中の物質ではなく、そこでやりとりされる情報に着目すれば、コンピューターと違う情報処理のしくみが見つかると思った」
 その後、脳を手本とするコンピューターづくりやロボット開発が盛んになる。文系の研究者らも、「人とは何か」を考える手がかりとして脳の働きや脳細胞のネットワークに関心を寄せている。
 実用と知の探究が結びついた新しい学問領域が、姿を現したのだ。
 だが、国の科学政策はこのダイナミズムを反映しているとは言い難い。
 科学技術基本計画は「ライフサイエンス」「情報通信」「環境」「ナノテク・材料」を、研究費などを優先させる「重点推進分野」としているが、この仕切りだと、脳はライフサイエンスに、ロボットは情報通信に泣き別れとなる。
 たとえば「脳・情報」の旗のもとに、幅広い分野の研究者を交流させる。研究費の総額が同じでも、仕切りがとれれば新しい発想が生まれるに違いない。

    ◇
 グローバル経済の中で生き残る道は、知的財産を豊かにすることだ。
 政府も、それに気づいてはいる。第3期の科学技術基本計画は、06年度からの5年間で、約25兆円の公的研究費をつぎ込むという目標を定めた。厳しい財政下で前期計画を上回る。1年あたりでいえば国の予算規模の6%ほどの額だ。
 問題は、その振り分け方である。
 多くの分野に広く薄く、自由になる資金を配っておくことは欠かせない。そうしないと新発見や発明のタネが見つからないからだ。そのうえで伸びそうなテーマを選び、力点を置くのが望ましい。
 今の重点推進分野はどれも大切だが、看板を掲げる時機を失していないか。
 「情報通信」の旗をIT時代の前に掲げていたらどうだろう。ソフトウエアの分野にもっと多くの人材が育ち、日本版マイクロソフトのような企業も生まれていたかもしれない。
 「ライフサイエンス」も、ヒトゲノム(人の全遺伝情報)解読が進む前にもっと重視したかった。新薬づくりなどで主導権をとることができただろう。
 「ナノテク・材料」の研究が脱温暖化の「環境」技術につながることを考えると、この仕切りもはずしたい。
 分野の縦割りをいったん壊し、柔らかなアタマで、次の時代を見通したテーマ選びをしたい。流れを読みつつ、少しずつ組みかえていく方式がよいだろう。
 どのテーマを進めるか。その設計図を描くのが霞が関の官僚や科学者だけでよいはずはない。
 政治の話は、だれもが口にする。景気談議もあいさつ代わりになる。映画やスポーツならなおさらだ。だが、科学となると「専門家ではないから」と口を閉ざす。そんな世の中を変えたい。
 専門家の前で、市民がどんな科学技術を伸ばしたいかを語る。企業人が、国際競争に勝ち抜くための技術を挙げる。人文学者が、実用にはつながらない知の探究としての科学の課題を示す。
 そんな議論の中から、重点を置くべき分野がほの見えてくるのではないか。
 こんなテーマを、という世間の声に役所や専門家がさらされる「科学技術のネタ出し会議」がほしい。研究費の配分にかかわる機関の知恵袋として、いろいろな場所に設けたらどうか。
 こうした柔軟で風通しのよい環境は、意欲ある研究者を育てるだろう。民間からの投資も呼び込むに違いない。
 科学技術をみんなのものにする。それが、希望の知恵を育む出発点である。
(朝日新聞 1月15日付社説)


朝日新聞社説の「希望社会への提言」も12回になりました。
来週はどんなテーマだろうと、とても楽しみです。


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最後まで読んでくださってありがとう
2008年も遊びに来てね 
 また明日ね
 
コメント
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