みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

『こんなとき私はどうしてきたか』中井久夫/『私の声が聞こえますか』マルコム・ゴールドスミス他

2010-04-24 11:24:22 | ほん/新聞/ニュース
4月のはじめに、医学書院の≪シリーズ ケアをひらく≫の、
『リハビリの夜』(熊谷晋一郎著)と『逝かない身体――ALS的日常を生きる』(川口有美子著)を紹介しました。

『リハビリの夜』熊谷晋一郎著/『逝かない身体――ALS的日常を生きる』川口有美子著/医学書院

その後、『リハビリの夜』の著者の熊谷晋一郎さんには、14日のジェンダーコルキアムでお会いしたし、
『逝かない身体』は、「第41回大宅壮一ノンフィクション賞」に選ばれました。

大宅賞:受賞『逝かない身体』の川口有美子さん、難病の母を介護した12年を記録
毎日新聞 2010年4月20日 東京夕刊
 
 第41回大宅壮一ノンフィクション賞(日本文学振興会主催)に選ばれた川口有美子さんの『逝かない身体』(医学書院、2100円)は、筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症(ALS)という難病の母を12年間、看護した記録だ。歴代の受賞作は、歴史的な事件や人物を追った作品が多い。その中では異色といえる。
 ALSは、全身の筋肉が萎縮し、筋力が低下する病気だ。手足に加え、口やまぶたも動かなくなることがある。重症の場合は、他者との意思疎通がほとんどできない。
 川口さんの母親は1995年6月に発症し、約半年後に人工呼吸器を使い始めた。眼球やあごも動かなくなり、07年9月に亡くなった。
 受賞作はその過程を淡々とつづっている。川口さんは会見で「できるだけクールに、ありのままを書いた。介護技術についても、高齢者や末期がん患者の介護に応用できるように記した」と説明した。
 普通の生活を送る人には、あまりにも過酷に感じられる介護だ。しかし、川口さんは「呼吸器をつけている寝たきりの患者から、社会の見方を学びました。母はずっと、自分だけでなく、他のALS患者の生活を心配していた」と語る。「一日中、微動だにしない人間は生きる価値がなく、かわいそうな生き物だと思われるが、家族にとって、その人の命は本当に大切なのです」とも。
 自分が本に込めた思いが審査委員に伝わった、と感じたという。「今回の受賞を、世界中のALS患者の家族と分かち合いたい。勇気を持って、明るく患者さんの命を支えていってほしい」
 同時に受賞が決まったのは、上原善広さんの『日本の路地を旅する』(文芸春秋、1680円)。贈呈式は6月18日、東京・帝国ホテルで行われる。【鈴木英生】


≪シリーズ ケアをひらく≫はほんとによい本ばかりです。

ということで、風邪をひいて家でおとなしくしている間に読んだ本のなかで、
まずは、中井久夫さんの『こんなとき私はどうしてきたか』を紹介します。

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≪シリーズ ケアをひらく≫こんなとき私はどうしてきたか
著:中井 久夫 医学書院
「希望を失わない」とは、どういうことか。
初めて患者さんと出会ったとき、暴力をふるわれそうになったとき、“回復に耐える力”がなさそうなとき、私はどんな言葉をかけ、どう振る舞ってきたか――。当代きっての臨床家であり達意の文章家として知られる著者渾身の一冊。ここまで具体的で美しいアドバイスが、かつてあっただろうか!

目次
1 こんなとき私はどう言うか
 1 患者さんと出会ったとき
 2 幻聴を四期に分けて考える
 3 幻聴や妄想を実りあるものにするために
 4 「匙を投げない」ことをどう伝えるか
2 治療的「暴力」抑制論
 1 患者さんを安全に抑える方法
 2 “手負い”にしてはならない
 3 患者さんにはどう見え、どう聞こえているか
 4 ふっと力が抜けるとき
3 病棟運営についていくつかのヒント
 1 どんな環境が人を苛立たせるのか
 2 人的環境としての「部屋割り」
 3 病棟スタッフの和をどう支えるか
 4 改革時の病棟マネジメント--私の経験から
4 「病気の山」を下りる
 1 保護室の内と外
 2 山を下りるということ
 3 回復初期はからだに注目
 4 下山のエネルギーを補給する
5 回復とは、治療とは……
 1 回復期は疲れる
 2 疲れている患者さんに何を言うか
 3 家族の方に知ってほしいこと
 4 「依存」という切り口から
 5 「回復に耐える」ということ
付章1 インタビュー・多少の補記を兼ねて
付章2 精神保健いろは歌留多
あとがきにかえて
索引


つぎは、ALSや認知症など、コミュニケーションを取れない人の声を
どのように聴いたらよいのだろう、と考えているときに、
手にとってよみはじめたら引き込まれた、『私の声が聞こえますか』。
よい本です。


  私の声が聞こえますか 
認知症がある人とのコミュニケーションの可能性を探る

マルコム・ゴールドスミス【著】、高橋誠一【監訳】、寺田真理子【訳】
雲母書房

内容紹介
著者はスターリン大学の認知症サービス開発センターの研究員として、本人と介護者に質問表を送ってサービスについての意見を聞いています。それらの回答や文献から引用しながら、認知症がある人が落ち着くための「時間とペースの感覚」「環境」「非言語コミュニケーション」などについて、丁寧な考察を加えていく。

目次
第1章 こだまはゆっくりと返ってくる
認知症とは何なのでしょうか。認知症があってもコミュニケーションをとることはどの程度可能なのでしょうか。

第2章 サービスについての意見を聞く
認知症がある人に、自分が利用しているサービスについての意見を聞くことは可能なのでしょうか。

第3章 誰かそこにいるの?
認知症への医学的アプローチと社会的アプローチの関係、そして認知症という経験について探求します。

第4章 人はそれぞれ異なる方法で影響を受ける
人の性格はそれぞれ異なるので、認知症による影響もまたそれぞれ異なります。認知症ということでひとくくりにしない、パーソンセンタードなケアが求められます。

第5章 コミュニケーションは可能
コミュニケーションの可能性を示す二つの長期的な事例を検討し、より良いコミュニケーションを可能にする方法を考察します。

第6章 力を奪うこと
認知症がある人は、人々の態度によって力を奪われ、無力感を学習してしまいます。しかし、多くの方法によって力を与えることができるのです。

第7章 時間とペースの感覚
認知症がある人とのコミュニケーションでは、ゆっくりと相手のペースに合わせる必要があります。時間のプレッシャーがある中でこれにどう対応するかを模索します。

第8章 ライフストーリーの価値
ライフストーリーを活用して認知症がある人の人生を理解することで、コミュニケーションを容易にします。

第9章 環境の影響
環境がコミュニケーションに影響を与えることを認識し、障害となるものを取り除きます。

第10章 非言語コミュニケーション
非言語コミュニケーションの重要性を認識し、スキンシップや音楽などの活用への試みを考察します。

第11章 挑戦的な行動(チャレンジング・ビヘイビア)
挑戦的な行動をコミュニケーションの試みとして捉え、理解し、対応することを学びます。

第12章 グループワーク
グループワークがコミュニケーションに与える効果が今後期待されています。

第13章 告知すべきか、せざるべきかーそれが問題なのか
認知症の告知への賛成論と反対論、そして告知にまつわる諸問題を検討します。

第14章 内省的結論
各章のまとめと総括。

書評
特別養護老人ホーム光の苑評者:武原光志 (2009年5月1日 「日本リハビリテーション病院・施設協会」機関誌5月号)
本書は「英国の代表的な認知症ケアの研究機関であるスターリング大学の認知症サービス開発センターの研究員」であるM.ゴールドスミス氏の『Hearing the Voice of People with Dementia』の翻訳書である。
「私の声が聞こえますか」と訳されているが、認知症ケアの現場に身をおく立場から言えば「私の声が聞こえていますか」であろう。「認知症がある人とのコミュニケーションの可能性を探る」とサブタイトルが付けられているように、著者は認知症を患う人々とのインタビューや介護する家族、ケアに従事する人々に対する調査から「認知症がある人とのコミュニケーションの可能性」を探り、「認知症を患ってもコミュニケーションは可能である」ことを論証している。すなわち、「認知症によって記憶障害や集中力の低下、言語の問題が生じるが、だからといってコミュニケーションがとれないわけではない。もちろん、コミュニケーションをとるためには、より多くのケアが必要となり、当初予見したよりも長い時間がかかるかもしれないが、コミュニケーションは可能である。実際、彼らは、自分の声を聴いてもらいたいと願っている。彼らの声を聞き取るためには、そのためのスキルを獲得する必要がある」と説いている。
認知症を病む人々とのコミュニケーションは可能であるという著者の確信は、認知症を患っても適切な援助と支援があればその人らしさを取り戻すことができる、という認知症者に対する深い洞察に基づいている。また、認知症を医学的に分析・把握するだけでなく、他方で、「社会的文脈」で捉えることの重要性も説いている。
本書で紹介されている文献は1980年代の後半から1990年代にかけてのものであるが、英国では、その頃からこのような研究プロジェクトが実施されていたということである。10数年のタイムラグは大きいが、本書を読むことによって、認知症に関する医学的な考察を深めると同時に、ライフストリーに収斂される「社会的文脈」でその人の生き方を捉えること、そして、認知症を病む人々の心に必要なケアを届けるためにもコミュニケーション能力を高め、スキルアップを目指すこと等々、認知症ケアの進化のために日々研鑽すべき課題が見えてくる。そういうことを教えてくれる貴重な本である。


オマケといってはなんですが、眠れないときに読んでいた、
『脳に効く「睡眠学」』(宮崎総一郎著/角川書店)  

おかげで、なんとか眠れるようになりました(笑)。 


『あなたの家族が病気になったときに読む本 脳卒中』(講談社)
は、
母が脳卒中を起こして倒れたので読んだのですが、
いつでも誰でもなりうるので、先に読んでおくとよかったと思いました。



ということで、遅ればせながら、
母の部屋のトイレを参考に、わが家のトイレも障害者仕様に改装しようと思います。


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4月23日(金)のつぶやき

2010-04-24 01:00:23 | 花/美しいもの
14:28 from web
速報! 【事業仕分け】科技大準備費「縮減」/蓮舫議員「もともと節約できたのでは」/研究法人 問われる成果 http://blog.goo.ne.jp/midorinet002/e/92096837a7ebcac7873f1ebd72998489
by midorinet002 on Twitter
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