橋下のトンデモ発言で、17日以来マスコミの話題は沸騰し、
大事なことがかすんでしまいましたが、15日に戻って、
「日本原子力発電敦賀原発の2号機直下に活断層がある」と、
原子力規制委員会の調査団が認定した記事を紹介します。
こちらの毎日新聞には「東京版」が載っていたのですが、
地元の福井を管轄する大阪本社版が、とても詳細なので、後半に合わせて紹介します。
敦賀原発2号機直下に活断層が認定されたことで、
「廃炉の公算大」なのですが、日本原子力発電は原子力規制委員会の認定を批判、抵抗しているようです。
自民党が、原電寄りのスタンスで、調査団の認定をなし崩しにしないように
監視しなければと思います。
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原子力規制委パネル、敦賀原発に活断層を認定−廃炉の公算大(2013年 5月 16日 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版-)
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「日本原子力発電敦賀原発の2号機直下に活断層がある」と、
原子力規制委員会の調査団が認定した記事を紹介します。
こちらの毎日新聞には「東京版」が載っていたのですが、
地元の福井を管轄する大阪本社版が、とても詳細なので、後半に合わせて紹介します。
敦賀原発2号機直下に活断層が認定されたことで、
「廃炉の公算大」なのですが、日本原子力発電は原子力規制委員会の認定を批判、抵抗しているようです。
自民党が、原電寄りのスタンスで、調査団の認定をなし崩しにしないように
監視しなければと思います。
クローズアップ2013:福井・敦賀2号機、活断層認定 規制委、迷走の半年 毎日新聞 2013年05月16日 東京朝刊 原子力規制委員会の調査団が15日、審議の過程で迷走しながらも、日本原子力発電敦賀原発(福井県)の2号機の直下に活断層があると認定した。廃炉は現実味を帯び、電力業界を揺るがしかねない状況になっている。原電は6月末にも調査結果を公表する方針で、活断層認定をめぐる「規制委VS原電」の対決構造は、夏の参院選を挟んで激しさを増しそうだ。 ◇参院選見据え「再稼働圧力」も 「原電の調査が遅く進まなかった」。規制委の島崎邦彦委員長代理は15日の記者会見で、認定に半年要した経緯を振り返った。現場は原発敷地内で、データは原電に依存する。調査団の藤本光一郎・東京学芸大准教授も「3カ月で終わる予定だったが見通しが立たなくなった」と、独自調査の限界を指摘した。 だが、規制委自体が審議を迷走させた面もある。田中俊一委員長は、昨年末の調査団会合で「このままでは再稼働の安全審査はできない」と断言。審議日程を1日カットし、早期に結論を出す意向を示した。だが原電から「拙速すぎる」との公開質問状が出ると、一転して別の専門家の意見を聞く場を設けた。 報告書を受け、原電は15日、「2号機原子炉建屋のコンクリートを壊し、新データを蓄積している」と、背水の陣で対決する姿勢を示した。規制委は規制基準を施行する7月上旬以降、電力会社の再稼働申請を受け付けるが、2号機については「原電から申請が出ても絶対に審査しない」(規制庁幹部)と強硬姿勢で臨む方針だ。 ただ規制委内部には、原電が今夏の参院選を見据え、審議の延長戦を狙っているのではないかとの懸念もある。 参院選で自民党が勝てば「再稼働圧力」が高まる可能性があるためだ。敦賀に関する3月の自民党会合では、原発立地の地元議員から「原電の反論に耳を貸さないのはどうか」など批判が相次いだ。 「いろいろ圧力があった。ネガティブキャンペーン(誹謗(ひぼう)中傷)もあり、こういう役職を受ける人はいなくなるのではないか」。調査団の宮内崇裕・千葉大大学院教授は会合でこう語り、「圧力」の排除が今後の調査のカギになるとの見解を示した。【中西拓司】 ◇電力各社、多額負担の恐れ 敦賀2号機の再稼働が見通せなくなったことで、電力各社の経営への悪影響が懸念される。原電の経営が行き詰まれば、東京電力や関西電力など電力大手は多額の負担を強いられる恐れがあるためだ。電力各社は来年4月まで原電を支援することを決めているが、経営再建への道筋は描けていないのが現実だ。 通常の経営破綻では、株主の損失は出資額の範囲に限られるが、原電から電気を購入する電力会社のうち、関電と中部電、北陸電、東北電の4社は、約1000億円を債務保証しており、原電が返済できなければ肩代わりを迫られる。また、原電は使用済み核燃料を再処理したり、原子炉を廃炉にしたりする費用を積み立てているが、経営破綻すれば積み立て不足の発生は必至で、「電力各社の負担は総額5000億〜7000億円に上る可能性がある」(経済官庁幹部)という。原発停止による燃料費増加で多額の赤字決算を重ね、体力の落ちた電力各社の経営をさらに揺るがしかねない。 このため、電力業界は「民間だけでは対応できない」(幹部)とし、廃炉費用の負担軽減などを水面下で政府に働きかけているが、政府は新たな国民負担となる財政支援には慎重だ。 電力各社の支援で原電の資金繰りが続く限りは、あくまで再稼働を主張する原電と規制委のにらみ合いが続く公算が大きい。ただ、一部の会社からは「我々もギリギリの経営」との声も漏れる。利用者の反発もあり、支援が来年4月以降も続けられるかは予断を許さず、ゆくゆくは廃炉費用などが国民負担になる可能性も否定できない。【清水憲司】 ◇「未知のずれ」焦点 福島教訓に厳格化 規制委の有識者調査団の認定の背景には、可能性を否定できない限り、「活断層」とみなす姿勢がある。津波の危険性が指摘されながらも過小評価した東京電力福島第1原発事故の教訓から、厳格にした格好だ。 報告書が、2号機直下を通る断層「D−1破砕帯」を活断層と認定した重要な判断材料は、昨年12月の現地調査で見つかった未知のずれ「K断層」だ。D−1破砕帯のほぼ延長線上にある。 原電は、K断層に地面をずらすような活動性はみられないと主張したほか、D−1破砕帯とK断層は断層面の観察から、つながっていないと分析。むしろ、そこから約8メートル離れ、調査団も活断層ではないとみる「G断層」がD−1破砕帯の一部とした。 これに対し調査団は、K断層は、火山灰の年代測定から少なくとも9万5000年前より古い時期に動いたと分析。「12万〜13万年前より新しい時代に動いた可能性を否定できない」とする活断層の定義に照らして合致するとした。さらに、断層面の特徴からD−1破砕帯とつながっている可能性があり、D−1破砕帯は活断層との結論に至った。【岡田英】 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(以下略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ |
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クローズアップ2013:敦賀「活断層」認定 急務の審議、迷走半年 電力各社も直撃(その1) 毎日新聞 2013年05月16日 ◇再稼働圧力の弊害 原子力規制委員会の調査団が15日、審議の過程で迷走しながらも、日本原子力発電敦賀原発(福井県)の2号機の直下に活断層があると認定した。廃炉は現実味を帯び、電力業界を揺るがしかねない状況になっている。原電は6月末にも自らの調査結果を公表する方針で、活断層認定をめぐる「規制委VS原電」の対決構造は、夏の参院選を挟んで激しさを増しそうだ。 「原電の調査が遅く進まなかった」。規制委の島崎邦彦委員長代理は15日の記者会見で、認定に半年要した経緯を振り返った。現場は原発敷地内で、データは原電に依存する。調査団の藤本光一郎・東京学芸大准教授も「3カ月で終わる予定だったが見通しが立たなくなった」と、独自調査の限界を指摘した。 だが、規制委自体が審議を迷走させた面もある。田中俊一委員長は、昨年末の調査団会合で「このままでは再稼働の安全審査はできない」と断言。審議日程を1日カットし、早期に結論を出す意向を示した。だが原電から「拙速すぎる」との公開質問状が出ると、一転して別の専門家の意見を聞く場を設けた。 報告書を受け、原電は15日、「2号機原子炉建屋のコンクリートを壊し、新データを蓄積している」と、背水の陣で対決する姿勢を示した。規制委は規制基準を施行する7月上旬以降、電力会社の再稼働申請を受け付けるが、2号機については「原電から申請が出ても絶対に審査しない」(規制庁幹部)と強硬姿勢で臨む方針だ。 ただ規制委内部には、原電が今夏の参院選を見据え、審議の延長戦を狙っているのではないかとの懸念もある。参院選で自民党が勝てば「再稼働圧力」が高まる可能性があるためだ。敦賀に関する3月の自民党会合では、原発立地の地元議員から「原電の反論に耳を貸さないのはどうか」など批判が相次いだ。 「いろいろ圧力があった。ネガティブキャンペーン(誹謗(ひぼう)中傷)もあり、こういう役職を受ける人はいなくなるのではないか」。調査団の宮内崇裕・千葉大大学院教授は会合でこう語り、「圧力」の排除が今後の調査のカギになるとの見解を示した。【中西拓司】 ◇未知のずれ「K断層」 福島教訓に判定厳格化 規制委の有識者調査団の認定の背景には、可能性を否定できない限り、「活断層」とみなす姿勢がある。津波の危険性が指摘されながらも過小評価した東京電力福島第1原発事故の教訓から、この考え方を厳格に適用した格好だ。 報告書が、2号機直下を通る断層「D−1破砕帯」を活断層と認定した重要な判断材料は、昨年12月の現地調査で見つかった未知のずれ「K断層」だ。D−1破砕帯のほぼ延長線上にある。 原電は、K断層に地面をずらすような活動性はみられないと主張したほか、D−1破砕帯とK断層は断層面の観察から、つながっていないと分析。むしろ、そこから約8メートル離れ、調査団も活断層ではないとみる「G断層」がD−1破砕帯の一部とした。 これに対し調査団は、K断層は、火山灰の年代測定から少なくとも9万5000年前より古い時期に動いたと分析。「12万〜13万年前より新しい時代に動いた可能性を否定できない」とする活断層の定義に照らして合致するとした。さらに、断層面の特徴からD−1破砕帯とつながっている可能性があり、D−1破砕帯は活断層との結論に至った。【岡田英】 ◇進まぬ破砕帯調査 原子力規制委員会による破砕帯(断層)調査は、日本原子力発電敦賀原発を含めて6カ所で予定されているが、計画が大幅に遅れているのが現状だ。事業者の調査・報告は3月末までに終え、規制委の現地調査などを踏まえて、速やかに活断層かどうか結論を出す予定だったが、現時点で規制委による現地調査は3カ所だけで、敦賀原発以外は結論が出る時期も見通しが立っていない。 調査対象は、敦賀原発▽東北電力東通(青森県)▽北陸電力志賀(石川県)▽関西電力大飯、同美浜(ともに福井県)の各原発と、日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉もんじゅ(同)。経済産業省原子力安全・保安院(当時)の再点検で、敷地内の破砕帯が活断層の可能性を否定できなかったものだ。 それぞれ外部有識者を含む計5人の調査団で現地調査するが、実施したのは敦賀、大飯、東通の3原発。もんじゅは4月末に報告書が出されたが、規制委の現地調査には足場作りなどの準備のため、あと1カ月程度かかるという。志賀原発は今年1月末に報告書を提出予定だったが、現状では「夏前までには提出できそう」(北陸電)。美浜原発の調査報告も3月末から5月末にずれ込んだ。 遅れた理由は▽掘削箇所を増やして詳細に分析した(原子力研究開発機構)▽予定になかった掘削調査もした(関電)▽地下を掘り進める際、より詳細に形状を把握したり、資料の採取をした(北陸電)−−などとする。電力会社側に有利な結論を得るために引き延ばしているのでは、との見方について、「経営を考えれば、一日も早く再稼働したい。引き延ばすメリットは何もない」(北陸電)などと、各社とも否定する。 規制委は「敦賀原発のように、事業者の最終報告を待たなくても、規制委として結論を出すことは可能」との立場だが、大飯原発の調査では、規制委の調査団のメンバー間で活断層かどうかについて意見が対立。関電に対して追加の掘削調査を指示する事態になっているケースもある。【吉田卓矢】 ============== ■ことば ◇日本原子力発電敦賀原発 福井県敦賀市にあり、東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型の1号機(出力35・7万キロワット)と加圧水型の2号機(同116万キロワット)から成る。1号機は国内初の商業用軽水炉で、大阪万博が開幕した1970年3月14日に営業運転を開始、発電された電気が万博会場に送られた。2号機は87年2月17日に営業運転を開始した。3、4号機の建設計画があり、2017年と18年の運転開始を目指していたが、本体工事の着工は延期されている。 ============== ◆原子力規制委の調査団◆ ◇島崎邦彦・原子力規制委員会委員長代理 東京大名誉教授。日本地震学会、地震予知連絡会の会長を歴任。 ◇鈴木康弘・名古屋大教授 変動地形学が専門で断層調査の経験豊富。 ◇堤浩之・京都大大学院准教授 活断層の形と地震規模との関係に詳しい。 ◇藤本光一郎・東京学芸大准教授 断層運動でできた断層岩や熱水による岩石の変質を研究。 ◇宮内崇裕・千葉大大学院教授 日本活断層学会理事。高精度の活断層図作製に携わる。 ============== ◇敦賀原発をめぐる経過 1970年 3月 1号機が営業運転開始 87年 2月 2号機が営業運転開始 91年 学術書で浦底断層が活断層と認定される 93年 2月 日本原子力発電が3、4号機増設計画を敦賀市に申し入れ 99年 5月 1号機の運転について、原電が開始から40年まで継続との方針を示す 7月 2号機で放射能を帯びた1次冷却水が格納容器内に大量に漏れる事故 2002年 9月 1号機でシュラウドのひび割れ兆候を国に報告せず 09年 2月 原電が2010年廃炉予定の1号機の運転を約5年間延長する方針固める 11年 3月 東日本大震災。福島第1原発事故発生 12年 1月 政府が原発を原則40年で廃炉とする方針表明 4月 原子力安全・保安院の調査で、敷地内の破砕帯が活断層の可能性浮上 12月 原子力規制委調査団が現地調査。破砕帯は活断層の可能性が高いと判断 13年 5月 調査団が破砕帯を活断層と判断する報告書をまとめる(15日) ========================================================================================================== クローズアップ2013:敦賀「活断層」認定 急務の審議、迷走半年 電力各社も直撃(その2止) 毎日新聞 2013年05月16日 大阪朝刊 ◇大株主、債務負担も 日本原子力発電(原電)敦賀原発2号機の再稼働の見込みが立たなくなったことで、関西電力など電力各社の経営への打撃は避けられそうにない。今後、原電が廃炉や経営破綻に追い込まれれば、原電の株主である電力業界に多額の負担がのしかかる。電力業界は来年4月まで原電の資金繰りをつなぐ支援策を打ち出しているが、原電の経営再建への道筋は描けていない。 原電は沖縄電力を除く大手電力9社、Jパワー(電源開発)、原子力メーカーが大株主で資本金は1200億円。東京電力の約28%を筆頭に、関電は第2位株主の約19%、中部電力が約15%、北陸電力が約13%を出資している。関電の出資額は約223億円。通常の企業破綻では株主の損失は出資額にとどまるが、関電や中部電、北陸電、東北電の4社は関電の約417億円を筆頭に計約1040億円の債務保証(2012年度)をしており、原電が銀行に借金を返済できなくなればその肩代わりをすることになる。 想定される負担はこれだけではない。原電は使用済み核燃料を再処理したり、原子炉を廃炉にしたりするための費用を積み立てているが、経営破綻すれば積み立て不足が発生するのは必至だ。穴埋めに必要な「電力各社の負担は総額5000億〜7000億円に上る可能性がある」(経済官庁幹部)。このため、電力業界は廃炉費用の負担軽減などを水面下で政府に働きかけているが、政府は国民負担となる財政支援には慎重だ。 しかし、原発停止による燃料費増大で赤字に陥り、経営体力の落ちた電力各社にとって負担は厳しい。関電は今月、家庭向け電気料金を平均9・75%値上げしたばかりだが、新たな負担を賄うには、さらなる料金値上げも現実味を帯びる。 電力需給への影響も無視できない。敦賀原発1号機(出力35・7万キロワット)、同2号機(同116万キロワット)で発電した電気は、関電、中部電、北陸電に送電する契約を結んでいるが、1号機は11年1月、2号機は同5月から止まったままだ。【久田宏、清水憲司】 |
記者の目:「この国と原発」を取材して=日下部聡 毎日新聞 2013年05月17日 ◇前例踏襲より現実直視を 4月に第8部を終えた連載「この国と原発」の取材・執筆の多くを担当した。大地震が頻発する小さな島国に54基もの原発が林立していること自体、何かおかしくないか−−。そう同僚と話し合ったのが取材のきっかけだった。その中で見えてきたのは、原発に関わる官庁や電力会社などが組織の維持を自己目的化させ、肥大してきた実態だ。そして政治やメディア、世論の多くはそれを追認してきた。 主要国のエネルギー研究開発予算の統計をグラフ化してみて、日本の原子力偏重と硬直性に驚いた。1985〜2010年でみると、予算規模が日本とほぼ同じ米国は85年こそ約半分が原子力だったが、10年は18%に減り、省エネと再生可能エネがそれぞれ約30%に増加している。 日本ではこの間、毎年3500億〜4000億円の予算のうち、ほぼ7割が一定して原子力に投入され続け、11年でも54%を占める。「入社や入省年次に従って上り詰める『単線路線のエリート』たちにとって、前例を踏襲すること、組織の利益を守ることは、重要な使命となった」と、国会事故調査委員会の黒川清委員長は指摘した。予算の使われ方はそれを体現しているように見える。 ◇国内の54基中6割が70年代に 原発54基の6割は高度経済成長が終わった70年代半ば以降に建設された。「原発がなければ一流の電力会社ではないという雰囲気があった」と、当時、政府の電気事業審議会委員だった田中洋之助・元毎日新聞論説委員は振り返った。電力会社の横並び意識やメンツが原発建設を加速した側面もあったのだ。 そして原発を受け入れた自治体は、いや応なくこのシステムに組み込まれた。 福島第1原発5、6号機のある福島県双葉町の元町長、岩本忠夫氏は反原発運動の闘士だったが、町長になって転向し、7、8号機増設を訴えた。電源3法交付金がなければ町財政は立ちゆかなくなっていたからだ。05年に引退、原発事故による避難生活で急速に衰え、11年7月、82歳で亡くなった。「正常な判断ができなくなってしまうほどカネの力、原子力政策の力は強かった」。岩本氏を支えた元町議の言葉が耳に残る。 国民の10人に1人が原発の50キロ圏内に住む日本。大量の使用済み核燃料の処理問題は行き詰まっているのが現状だ。各原発の必要性について、どれほど合理的な検討がなされてきたのか。長年、原子力政策を担ってきた自民党は、野党だった事故直後こそ政策の検証に乗り出したかに見えたが、衆院選圧勝と政権復帰で結論はうやむやになった。 大本営で戦争指導班長を務めた種村佐孝・元陸軍大佐の著書「大本営機密日誌」の記述が頭に浮かんだ。 中国戦線の泥沼化に頭を痛めた陸軍は1940(昭和15)年に翌年から撤兵を始める方針を決めた。だがドイツのポーランド侵攻で一変する。 「昭和16年から逐次撤兵を開始するとまで、思いつめた大本営が、何時(いつ)しかこのことを忘れて、当時流行のバスに乗りおくれるという思想に転換して、必然的に南進論が激成せられるに至った」 対米英開戦の直前には、陸海軍幹部と閣僚による会議で船の保有量や生産量が戦争に耐えられるか検討されたが、特に異論もなく、2時間で「維持は可能」との試算が承認されたと種村氏は記す。 上司の参謀次長は会議後、「よくわからなかったから、研究しておけ」と命じたという。種村氏は「一同が、数字を理解した末に決定したのか……」と疑問を呈している。試算が極めて甘かったことは歴史が証明した。「雰囲気」「横並び」で物事を決める愚を繰り返してはならない。 ◇営みを根こそぎ破壊する事故 この書と共に、今も脳裏にちらつくのは11年9月に取材した福島県大熊町の光景だ。 一時帰宅した住民は白い防護服に身を固め、厳重にカバーした土足で家に上がった。牛舎では牛が骨と皮だけになって死んでいた。「2時間じゃ何もできないね」。ノートパソコンをビニール袋に入れて持ち出した男性がつぶやいた。「ピーッ、ピーッ」と放射線量計のアラームが断続的に鳴り続けていた。 住み慣れた家と土地がそこにあるのに「あの日」を境に隔絶された。原発周辺に住んでいた5万人以上が今も避難を強いられている。人間の生活を、ここまで広範囲に根こそぎ破壊する事故が他にあるだろうか。 日本の経済や科学技術といった「大局」から原発を論じる前に、このような現実から、議論は出発しなければならないと思う。(大阪社会部) |
原子力規制委パネル、敦賀原発に活断層を認定−廃炉の公算大(2013年 5月 16日 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版-)
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