中日新聞生活面の<届かぬ声 置き去りにされた有権者>の最終回、
「(下)コラムニスト伊是名夏子さんに聞く」と、
社説「<’17衆院選>消費税使途変更 社会保障が縮まないか」です。
中日新聞は読んでおもしろい記事が多いので、いつも真っ先に読みます。
いま三重県にいてPC環境があまりよくないので、
昨日出がけに読んで、自宅で下書きに入れてきた記事です。
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社説「<’17衆院選>消費税使途変更 社会保障が縮まないか」です。
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<’17衆院選>消費税使途変更 社会保障が縮まないか 2017年10月6日 中日新聞 安倍晋三首相は消費税率を10%に引き上げた際の増収分の使い道を変更し教育へも投入すると表明、自民党の公約にも掲げた。だが、使途が拡大すれば社会保障費が削られないか心配になる。 首相が打ち出した幼児教育・保育の無償化や高等教育の負担軽減策を歓迎する声は少なくないだろう。その時に必要な政策に優先順位を付け財源を充てる。その判断は一見、当然にみえる。 首相は、高齢者に手厚い社会保障の給付を教育や子育てにも回す必要性を説明した。その財源に二兆円を使うと言う。 増税は慎重であるべきだし、増税分の使い方にも疑問が湧く。 増収分の使途は、旧民主党政権下の二〇一二年に自民、公明の三党で合意した「社会保障と税の一体改革」で決めた。税率を5%から二段階で10%まで引き上げ、増収分を社会保障の充実と赤字国債で賄っている社会保障費の“借金”返済に回すことにした。 首相は財政健全化に回す分を使う考えだが、それでは新規に赤字国債を発行することと同じになる。現役世代が負担を引き受け、将来世代に回さないことが三党合意の核心だ。これでは次世代にツケ回す構造は変わらない。 増収分の使途は消費税法に年金、医療、介護、少子化対策の社会保障四分野に使うことが明記されている。これに教育を加えると使途の「拡大解釈」を許すきっかけになりはしないか。 幼児教育・保育が無償化されても、そもそも保育所に入所できなくては支援策とはならない。待機児童対策が最優先のはずだ。子育て支援の財源は税率10%時に七千億円を充てる予定だが、対策の緊急性から既に同額を投入している。それでも足りない状況だ。教育に財源を振り向けても待機児童対策の財源を確保できるのか。 疑問はまだある。 一体改革には医療・介護の費用を一兆二千億円削ることも盛り込まれている。既に給付減や負担増が始まっている。首相は社会保障費の自然増の抑制を「これからも続ける」と述べた。財政健全化が遅れれば、この分野の費用をさらに削る事態になりかねない。 首相は少子高齢化を「国難」と言い、使途の見直しが必要と言うのならこうした疑問にもしっかり答える責任がある。 希望の党は増税の凍結を公約に掲げる。ならば社会保障の将来像や財源確保策を語るべきだ。 |
<届かぬ声 置き去りにされた有権者> (下)コラムニスト伊是名夏子さんに聞く 2017年10月6日 中日新聞 ハンディがあるために一票を投じられない障害者や高齢の人たち。政治が最も守っていくべき当事者が声を上げられない現状と、制度の不備を放置し続ける政治の不作為を四、五の二日にわたって紹介した。社会のバリアフリー化が進む一方、投票制度・投票所は当事者の人たちにどう映っているのか。電動車いすで生活をするコラムニスト・伊是名(いぜな)夏子さん(35)にこれまでの投票体験や、望ましい投票制度や投票所について尋ねた。 伊是名さんには、生まれつき骨が折れやすい難病「骨形成不全症」という障害がある。十人以上のヘルパーに支えられながら、四歳の男児と二歳の女児を出産し育てている。外出時には電動車いすで移動する。 選挙は、ほとんど期日前投票を行ってきた。「投票所は普段よく行く市役所や区役所なので、勝手が分かり、バリアフリー設備も整っているから」 一方、投票日の投票所となる学校などは、段差が解消しきれていないなど完全なバリアフリー仕様でない投票所も多いという。 学生時代は、期日前投票所が電車に乗らないといけない場所だったため、投票日に地域の小学校で投票した。この投票所では、臨時のスロープの板が固定されておらず不安定だった。「私の車いすは重さ八十キロ。乗ったらグラッと動きそうで転倒してけがをしかねなかった。角度も急すぎ。下りも速度が出そうで、怖かった」と振り返る。 そもそも普段行き慣れていない場所は「心理的なハードルも高い」と伊是名さん。というのも、複数の入り口が開放されていても車いすユーザーが使える入り口は限られていて遠回りする羽目になったり、車を駐車する場所を探す必要があったりするからだ。「投票前に考えなくてはいけないことが多すぎて、とても面倒。ショッピングセンターのような日常の場で投票させてほしい」と訴える。 伊是名さんには、忘れられない投票体験がある。長男を妊娠中の二〇一三年七月の参院選でのことだ。入院していた香川県の大学病院で、院内投票ができた。この病院は県指定の不在者投票施設。入院患者が対象で、投票用紙の請求手続きはベッドの上で用紙に記入するだけで済み、後日、院内に設けられた「不在者投票所」で投票した。 「複雑な手続きもなく、普通に投票に行くよりも簡単」と感激した。同時に、既存の投票制度の柔軟性のなさへの疑問も強まった。 今の投票制度は、障害のある人や介護が必要なお年寄りにはハードルが高いと思う。「生命維持のため呼吸器を外せない人は外出できない。郵便投票や代理投票の制度もあるが、生きていくので精いっぱいの人たちに、手続きをする余裕が果たしてあるのか」 伊是名さんは「障害者やお年寄りのためだけに」制度を整えるのでは不十分とする。世の中には、がん患者や妊婦、そしてその日たまたま疲れている人もいる。たとえ今は「健常者」であっても、将来は分からない。「一部の人だけを念頭に置くのではなく、あらゆる人が使いやすい投票制度にするべきだ」と主張する。 鍵はITだ。インターネット投票を実現できないかと提案する。「鉄道のICカードもこの十年で定着した。同じようにセキュリティーや設備投資費用などの課題はきっと超えられる。選挙でもいろいろ試してみてはどうか」と話す。 困難を抱える人、不満を持つ人にこそ、声を一票に乗せて投じられる環境が必要だと考える伊是名さん。「あらゆる人が使いやすい制度を整えた後、個々の人に合った方法を柔軟に認めるべきで、新たな投票方法の選択肢をつくってほしい」 (今川綾音) |
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