公的年金の積立金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)が、市場の混乱に伴う株安で2015年度に続き16年4~6月期も多額の損失を出す見通しとなりました。
運用基準を変更し、資産に占める株式の比率を倍増させたのが主な要因です。
なぜ株を増やしたのか、損失は将来の年金給付に影響を与えるのか、あらためて整理してみました。
「GPIFは、ポートフォリオ(資産構成)の見直しをはじめとした改革を行う」。安倍晋三首相は2014年1月、世界の政財界首脳が集う世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、政権が目指す経済の成長戦略として年金積立金を活用する姿勢を強調していました。
GPIFが株式の購入を増やすことで株価の上昇が見込まれることから、安倍首相はダボス会議以降も「日本は買い」と海外の投資家にアピールし、GPIFの運用基準を審議する運用委員会の委員は2014年4月に入れ替えられ、委員長には株投資の拡大に積極的な学識者が就いています。
こうした政権の方針に基づいて、GPIFは2014年10月に基準の変更を決定し、株式の比率を24%から50%に倍増させました。
元運用委員で慶応大の小て績准教授は「株拡大でリスクが高まるとの国民への説明がなく、あまりに拙速。株価を上げるための対策と思われても仕方のないやり方だった」と述べています。
積立金は、国民が納めた保険料のうち、年金の給付に回されずに余った分を積み立てたもので、少子高齢化が進んだ今、年金は保険料や税金だけでは足りず、積立金の運用益を給付に充てる局面に入っていることは間違いありません。
2014年公表の年金財政見通しによると、今後100年間で必要な厚生年金の給付額は経済が成長する前提で2030兆円。
給付額に占める財源の割合は平均すると、保険料7割、国庫負担(税)2割、残り1割が積立金の運用益となります。
安倍首相は国会で「長いスパンで見なければならない。株価が下がったから年金は下がるといったことは全くない」と説明していますが、本当でしょうか。
日本総研の西沢和彦氏は「運用に失敗し積立金が想定より早く減れば、若い世代が将来受け取る年金が減額される可能性が出る」と懸念を示しています。
この場合、保険料を上げたり税金投入を増やすなどの事態も考えられますね。
政府が株拡大のメリットばかりを説明し、リスクが高まる事実を語りたがらぬ姿勢は当初から続いている。GPIFのホームページにはかつて「積極的な運用のリスクは最終的に年金加入者が負担」と書かれていたが、株式比率の拡大後に削除されたそうです。
情報隠蔽の臭いがプンプンしますね。
基準変更後に初めてとなる年度実績の公表日が今月29日に設定され「(10投開票の)参院選での議論を避けた」と批判が噴出しています。
「公表には一カ月もあれば十分」(国内証券)とされ、GPIF運用委の委員からも「4カ月経過すれば、遅いと受け止められるのは当然」との声が出ているそうです。
ここにも情報隠蔽の臭いがプンプンしますね。
運用比率を変更した後の運用実績を分かりやすく説明してほしいですね。
私達の財産を勝手に運用して、損失が出たら保険料の値上げ、年金給付の減額、税金の投入のどれか又はそれらの組み合わせで対応するしかないのですが、運用変更のメリットだけを強調して、リスクは説明しないのでは、情報隠蔽ととられても仕方がありません。
もちろん、株式運用は長い目で見なければいけませんが、正直に分かりやすく説明すれば、国民の理解を得られるでしょう(私たちはそれほど愚かではありません)。
7月29日が楽しみです。
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