北蔵王縦走路は、刈田岳を起点に地蔵岳、名号峰、南雁戸山、北雁戸山を経て笹谷峠へ至るおよそ15キロ続く稜線の縦走コースである。縦走をあまり苦にせずにやっていたのは、まだ体力のある15年も前のことであるから、今回の試みはどの位当時の体力が残っているのかを試すことでもある。同時に山登りを始めたばかりの2名のメンバーが同行したので、その安全の確保と山歩きの楽しみを伝える意味も持っていた。蔵王連峰の山容は写真で見るとおり広大である。その峰々の稜線を、風景を楽しみながら歩くのは、爽快以外の何物でもない。
予報は晴れ、降水量はゼロあったが、朝の山は深い霧のなかであった。刈田までは乗用車で行く。今回、山行を回避したリーダーの車で送ってもらい、下山する笹谷峠に迎えにきてもらうという贅沢な選択をした。朝方は肌寒い感じであったが、30分ほど歩くとと身体が温まり汗ばんでくる感じであった。稜線からは霧で展望が得られず、ガスが晴れるのを期待しながらの山歩きとなった。参加メンバー6名、内女性2名。最高齢80歳、70代1名、60代2名、50代1名の構成である。
1700m付近の登山道は砂礫で、木々の姿はほとんどない。登山道の岩礫のなかにコマクサが群生している。開花にはまだ早く、一つ一つの株もまだ小さい。しかしよく見ると、小さく花芽をつけているものがあり、そのなかで花を咲かせている株を発見。カメラを出して撮影する。群生している株の全てに花が咲くと、どんなにみごとだろうかと想像しながら、コマクサ群生地を後にする。
縦走路は雁戸山に向かって下る。高度を300mほど下げると、矮小化した這松の中をあるくようになる。その松のなかに、濃いピンクの花畑が出現する。イワカガミの群生だ。濃い松の緑にこの花のピンクがよくつりあっている。ウグイスの鳴き声がようやく耳に響いてくる。イワカガミも高山にあるものと、低山では草丈も違ってくる。低山のものは大きく花の数も多いのでオオイワカガミといい、高山に咲くものはコイワカガミと言って区別している。霧が晴れて、振りかあえると通ってきた蔵王の雄大な山容が姿を見せる。同時にこんなにも歩いたのかと驚く。
この縦走コースにはシャクナゲも多くあるが、やはり花の時期はもう少し先だ。ひとつだけ白花のシャクナゲが咲いているのに出会った。気品のある美しさである。大抵はピンクの花をつけ、白花は珍しい。縦走を試みたことへの褒美なのか、しばし花の美しさに見とれてしまう。やがてダケカンバとブナの林の中を歩くようになる。縦走は高度によって異なる植生のため、異なった花に会えるのもその魅力のひとつだ。すぐ目の前を見たことのきれいな羽の山鳥が羽ばたいた。山鳩よりも大きな鳥だ。だれもその鳥の名を知っているものはいない。「あ、あそこ」と指さされた鳥は「ぎゃー」という可愛くない鳴き声をして飛び立った。
雁戸山に近づくと、登山道の脇に、ハクサンチドリ花が多く見られる。高山の花はどの花も美しい。この山行は、展望はあまりよくなかったが、登山道に咲く花々が、歩行の疲れを癒してくれる。八方平の避難小屋で昼食。仲間のメンバーが持参したおかずを分け合って握り飯を食べる。雁戸山の下山の道は険しい。岩場でスリルを味わいながら、一歩一歩下る。下りの道がこんなに長く感じるのは、やはり体力の低下なのだろうか。刈田岳を歩き始めてから、休憩を含めて9時間、身体中に疲労を感じながら下山する。全員元気で無事、楽しい一日であった。
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