今日は中秋の名月。今のところ、空に雲が多いが、晴れの予報なので玲瓏な月が楽しめそうだ。新古今和歌集には、藤原家隆が詠んだ月の歌12首が入集している。家隆の月の歌は当時、一世を風靡した。高名の僧正が赤痢に罹って重態になったが、夢に家隆の月の歌をみて全快したという逸話が残っているほどである。
ながめつつ思ふもさびし久方の月の都の明け方の空 藤原家隆
月を眺めながら、当時の人々はさまざまな空想そした。月面に人間が降り立った現代とは違って月は想像の世界であった。月の都とは、広寒宮といい、華麗な宮殿が想定されていた。月の天子は、夜この宮殿に多くの天女を集め歓楽の限りを尽くした。夜が明けて、歓楽の時間が過ぎてしまうと淋しいことだ、家隆は月をながめながら、そんなことを想像した。
かぐや姫の伝説は、竹取り翁に育てられた姫が5人の貴公子の求婚を断り、帝のお召しにも応じず、月の都へ帰っていくというものだが、その昇天の日は中秋の名月の日であった。庭に咲いたバラをかぐや姫の美しさに例えてみたが、どうであろうか。