常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

一房の葡萄

2019年09月24日 | 読書

有島一郎に『一房の葡萄』という童話がある。ネットが普及した時代の幸せは、この名作童話を瞬時に検索し、パソコンの画面で読むことができることだ。散歩しながら、偶然に撮ったたわわな葡萄。これにまつわる面白い話がないかと、探していた。そして出会ったのが、青空文庫に収められている『一房の葡萄』である。

この話の主人公は、横浜の山の手に住む小学生だ。絵を描くのが好きで、外国の船が泊っている港へ出かけてスケッチした。海に浮かんだ船には万国旗が掲げられ、目が痛くなほどの美しい景色だった。スケッチに色をのせていくのだが、どうしても実物との差があり、上手の描けないのを悩みとしていた。学校にはたくさんの外国の生徒がいた。彼らも絵を描くのだが、スケッチの技術では、主人公が敗けているとは思えなかった。ただ、彼らが持っている絵具が素晴らしかった。

同じ教室にジムという子がいた。主人公より二つほど年上で、背も見上げるほど高かった。ジムの持っている絵具の藍と紅がびっくりするほど美しい色であった。それほど上手でもないスケッチに、この絵具をのせると見違えるような絵になった。それを知ってからというもの、主人公はその絵具が欲しくてたまらなくなった。話を進めよう。主人公の僕の頭は、絵具のことでいっぱいになり、何も考えないままジムの机の引き出しを開けて、藍と紅の二本の絵具を盗んでしまう。

絵具が無くなったことが分かると、疑いは一人教室に残っていた僕にかかり、ポケットに入っていた絵具を見つけられてしまう。僕は悲しくなって泣いてしまった。クラスの先生は、外人の美しい女性で、僕が大好きな先生だった。級友に連れられて、職員室の先生の前に連れていかれた。先生はみんなを帰して、泣いている主人公の向き合った。先生は「もう絵具は返しましたか」とうなずく僕に、「あなたは自分のしたことをいやなここと思っていますか」と聞いた。それを聞いて、身体が震え、目からはとめどない涙が流れて。

先生は窓を開けて、生っている一房の葡萄をとると僕の手に渡し、「もう泣かなくてよろしい。次の授業の時間は、これを食べてここにいなさい」というと、授業のためクラスへ行ってしまった。僕は、もちろん葡萄も食べられず、職員室でしくしくと泣いていた。クラスから戻って来た先生は、明日は学校を決して休んだりしないで。登校するように約束して、言った。あくる日、僕はクラスのみんなからどんな扱いを受けるか心配で学校に行く気になれなかった。先生との約束を思い出して、やっとの思いで学校へ出かけた。

校門で待っていたのはジムだった。僕を見つけると飛んできて、僕の手をとり、真直ぐに職員室の先生のところへ連れて行った。先生はそこで、二人に仲直りの握手をさせ、窓から一房の葡萄を採り、ハサミで半分に切って二人に渡した。僕はその嬉しさを何と表現していいか、分からず恥ずかしそうに笑うだけでした。ただその時の先生の手の葡萄を持った手の美しさが、いつまでも記憶に残った。

青空文庫では、わずか十数分で読める短いものだが、終りの方になると、主人公の涙が自分の方にまで伝わり涙ぐんでしまった。本を読んで、感動的な場面になると、泣く癖がついてしまった。傍にいる妻には知られたくないのだが、いつのまにか察知して「また泣いたの?」と声をかけてきた。


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秋の歌

2019年09月23日 | 日記

P9200376

先日、立山に登った帰りに、新潟の弥彦神社に立ち寄った。その神聖な境内は、伊勢神宮を彷彿とさせるような雰囲気があった。神社の裏にはケーブルで登れる弥彦山が聳えていた。その脇には、国上山、角田山と同じよう規模の里山が並んでいる。なかでも、国上山の中腹には五合庵が、良寛が生活していた場所でもあったので、懐かしく感じた。

秋もやや夜寒になりぬわが門につづれさせてふ虫の声する 良寛

コウロギを「つづれさせ」と言った。この虫の声を聞けば、もう寒い冬はすぐそこだ。人々は、冬の衣を出して、縫ったり刺したり、つまり「つづれ」をしなければ、と気忙しくなった。そこでコウロギをツヅレサセムシと呼んだのである。

秋もややうらさびしくぞなりにける小笹に雨のそそぐを聞けば 良寛

良寛は聴覚にすぐれた歌人だと言った人がいる。あの国上山の山中で、笹の葉の上にしとしと降る雨。その音をじっと聞き入っているのが良寛だ。もう、手毬をついて遊ぶ子どもたちの声もしない。山中はあくまでも静かで、わずかに笹の葉を濡らす雨の音が聞こえてくる。麓の村の家をまわって、今日食べる米や味噌を托鉢してきた。ただ無為のうちに一日が過ぎていく。コオロギの声が、ひとしきり五合庵を包んだ。

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倉手山

2019年09月22日 | 登山

台風17号が列島をうかがっている。比較的にゆっくりした台風の動きで、この日幸運にも絶好の登山日和となった。前日の予報では、曇り雨が当日になって、晴れマークがついた。最初の予定では、御所山の尾花沢コースであったが、御所山荘からの情報で、新人が入ったメンバーでは、コースタイムが長すぎて無理なこと、宮城側の大滝コースは、取り付き林道が悪路のため、乗用車の乗り入れが無理であるために、6月に予定して雨天中止になった倉手山に変更した。

写真は頂上から望む、飯豊連峰の壮大な山並みである。石転び沢を上りつめた、北俣岳の鞍部に山小屋が小さく見えている。この光景を見るたびに、かってこの沢の雪渓を詰めて、北俣へ登った日のことが、昨日のことように思い出す。沢の雪渓には、蟻の行列のような登山者の姿が見えていた。行列は遅々として進まない。雪渓の高度を上げていくと、そのスケールの大きさが次第に分かってくる。進まないのは、その雪渓の巨大さゆえなのだ。7合目ほどに達すると、勾配が急にきつくなる。雪渓の外れたあたりに、コバイケイソウの大きな花が咲いていた。あれからもう20年を経過したか。当時はまだ若く、体力もあったのだろう。北俣の鞍部に着いたのは昼近く、山荘を出て5~6時間ほど登り切ったように思う。

倉手山の登山口には、朝の7時過ぎ。朝の霧も上がって、信じられないような好天になる。登山口からすぐに取り付いた急坂は、すっかり乾燥して歩きやすい。今日は、買ったばかりのツオロミブーツとスマートウォッチの使い勝手を試す機会でもある。皮の靴を履き続けてきたので、新しい靴がどう馴染んでいくか。心拍数を管理しながら、登山のペースどの程度のたもてるか。二つとも、自分の晩年の登山のあり方を決める大事なポイントだ。

登山口で準備運動をして、7時15分登山開始。標高340mの登山口から、660m地点まで急登が続く。ここまで標高差300mを1時間10分で歩く。ペースはゆったり、心拍数を見ると急登にもかかわらず76をキープしている。靴の状態も砂利や木の根で滑ることもなく、きわめて順調だ。後ろからくる、新人を含む4名の女性も軽い足どりで登ってくる。支尾根780mのピークには8時54分に着く。ここから尾根道、10mほど下ると小さな鞍部そして最後の急登が始まる。標高差で200m足らずだが、倉手一番の急登である。特筆すべきは、この急登でも心拍数は75を維持。登り始めの状態をキープしている。登山口から頂上までの所要時間2時間10分。コースタイムも2時間となっているからいいペースであるようだ。新人を含め、女性チームも疲れた様子の人はいない。

今回は男性一人で、チームを引っ張って来た。経験の少ない新人もいて、快適な登りのペースを維持したり、危険個所での注意喚起など、いつもにくらべて気を使うことも多く、その分緊張を余儀なくされた。その辺を察知してくれたか、ペースを乱すような人はいない。急坂で身体からは汗が吹き出してきたが、心地よい秋のそよ風に吹かれて頂上に立った。ここからの飯豊連峰の壮大な景観は、登って来た苦労を労ってくれに余りあった。ここで、車座になって弁当を開く。リラックスできる最高の時間である。

帰路は登った道をそのまま下る。いつも感じることであるが、勾配を実感するのは下りである。こんな急な坂を登ったのか、と不思議な感じがする。ツオロミブーツの強みは、下りでも発揮できた。革靴では疲れた足が上がりにくいが、この靴は軽いだけ、安心感がある。滑りに対しても、安定感がある。10時半に下り始めて、12時10分には車を置いた駐車場につく。飯豊の山なみは深い。飯豊への尾根道を見て、こんな急な坂を登れるかと感じながらも、この道を行けばどんな世界が広がっているだろうかと想像がふくらんでくる。温泉は川入荘、梅花皮荘に隣接した日帰り温泉だ。話好きな支配人が、いろいろ教えてくれる。窓から見える梶川尾根を登る飯豊本山への道、飯豊の展望が素晴らしい樽口峠への道。峠の茶屋の営業についても情報を得た。

鶏の唐揚げ上げで有名な峠の茶屋に立ち寄って、唐揚げを買う行列に加わる。見たところ数十人の行列なのですぐ買えると思ったのが大きな誤り。行列の全ての人が、その場で揚げる鶏のももを持ち帰るのだが、一人が買う量が半端でない。段ボールにつめて、大型バイクの荷台に積む人もいて、1時間ではける行列は10人足らず。諦めて、めざみの里のコロッケにかえた。行列しているときの、販売方法への批判がしきりに飛んだ。

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棚田

2019年09月20日 | 日記

棚田では、稲が刈り取りを待っている。台風 来る前に刈り取りたいだろうが、そう都合よく作業ができるかは、農家の事情によるのではないか。この光景を見るたびに、田植えからこてまで手を入れてきた農家の人たちの苦労が偲ばれる。それを労うかのような、美しい光景だ。この山あいの地に、段差の違う一枚、一枚の田を作り上げることの、労苦は如何ばかりであったか。また、それを維持するために、世代を越えた営々たる努力がある。それらの努力が、そのまま、この光景を作り上げている。棚田はもっと大規模ものもあるが、徒歩圏内でこうした光景が見られる幸せをかみしめている。

稲みのりゆっくり曇る山の国 広瀬 直人

スマートウォッチを着けてから、戸外に出るモチベーションが高まった。今日の歩数は、およそ10000歩。距離は7㌔、消費カロリーは500㌔カロリーである。ペースは30分で2500歩を歩いている。肝心の心拍数だが、歩き始めは70、30分後88、ピークは93になっている。山ほどの勾配はないが、それでも維持したい100以内に迫った。千歳山では、もっと心拍数が上がることが予想される。速度を緩めた歩きが求められる。

一晩の睡眠の分析も出た。☆が五つの内の二つ、深い睡眠が1時間10分、浅い眠りが5時間50分。深夜に2回目を覚ましている。尿意による覚醒だが、改善するには晩酌を止めることが必要になる。血圧は降圧剤を服用しているためか、予想以上に安定している。精度は使っている血圧計より低めに出ているが、変動の少ない傾向が見える。

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スマートウォッチ

2019年09月19日 | 日記

注文していたスマートウォッチが届いた。スマートフォンとリンクさせて歩数や血圧、心拍数などを記録する健康管理ウォッチだ。この手の機器は、継続して使用することで、効果も出ようが、途中で飽きる三日坊主では意味をなさない。それでも、いま流行りで、中国製のものは低価格なので、貯まっていた楽天のポイントで買えるほどであったので注文した。何だか面白そうなのだ。ネットでは、高齢者へのプレゼントとしても推奨されていて、ちょっとした人気商品らしい。

通販の箱を開けてさっそく設定を試みる。取説も日本語で、少したどたどしいが、さしたる苦労もなく完了。スマホとのペアリングにも成功した。一番の注目は心拍数である。山登りをするとき、心拍数をリルタイムで見ることができるのが、この機器を買った理由である。歩くペースを、自分の許容範囲の心拍数にすることで、疲れたり、高山病のリスクを避けることができる。通常の人ならば、最大の心拍数は220である。そこから自分の年齢を引いた心拍数、自分の場合は140となるが、この7割程度で歩くのが疲れない歩き方だ。

自分の場合、朝、起きたばかりの心拍数は55程度である。普通に歩いて70程度。興味があったのは、ストレッチや筋トレで筋肉をパンパンになるほど動いた時の心拍数だ。5分程度で済む、「みんなで筋肉体操」をこのウォッチ着けながらやってみた。結果は最大で73、ゆっくり歩くのとほぼ同じであることが分かった。血圧も指定した間隔で自動的に計測してくれる。血圧計と違って、電波で計測しているので、どの位の精度か分からないが、少なくとも数値の変動は知ることができる。

歩数の計測も、スマホのアプリより精度が高いような気がする。これは歩いた時間、歩数、消費カロリーが記録され、その上でトータルの数値が表示される。腕につけていると、スマホに届いた通知はバイブで知らせてくれる。メールの見落としもないことになる。

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