夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ジョージア、ワインが生まれたところ』/『ワイン・コーリング』

2019年12月12日 | 映画(番外編:映画と食べ物・飲み物)
シネ・リーブル梅田にて“映画で旅する自然派ワイン”という特集上映をしています。
上映作品はドキュメンタリー2本。
今日までの上映なので、時間休を取って2本とも観てきました。
 
1本目は『ジョージア、ワインが生まれたところ』(原題:Our Blood Is Wine)。
アメリカ人のエミリー・レイルズバック監督がジョージアへ。
 
ジョージアってややこしいですよね。
以前はグルジアだったはずなのに、いつからジョージアと呼ぶようになったのか。
グルジアの表記はロシア語起源なのだそうですが、
約10年前にロシア軍の侵攻を受けたことから、
ロシア語は嫌やねんと(言ったかどうかは知らんけど)、
英語表記のジョージアと呼んでくれと(も言ったかどうか知らんけど)なったらしい。
 
で、そんなややこしい国ではありますが、ワイン発祥の地である。
ワインといえば木製にしろステンレス製にしろ樽を用いるものだと思っていたら、
こんな壺を土の中に埋めてワインを造っているとは。
8千年もの歴史を持つ“クヴェヴリ製法”という製造の方法なのだそうです。
 
壺を洗うのが大変で、もう無理だと笑う爺ちゃん。
昔ながらの方法を守る現地の人々の様子すべてが私にとっては新しい。
 
2本目は『ワイン・コーリング』(原題:Wine Calling)。
こちらはフランス人のブリュノ・ソヴァール監督による作品です。
 
有機栽培で育てた葡萄のみを使って、添加物をいっさい使わずに造る自然派ワイン。
南フランスの生産者たちに密着し、製造過程やライフスタイルを撮っています。
 
1本目より2本目のほうが圧倒的にポップ。
ノリのよい音楽がBGMとしてふんだんに流され、睡魔に襲われる率も1本目より低い(笑)。
私自身が行きつけのお店で自然派ワインを多く飲ませてもらっているから、
ジョージアワインと聞くよりもビオやナチュラルといわれるほうが馴染みがあるゆえかも。
 
ほったらかしのイメージもあるけれど、ほったらかしにするって思うよりも難しいこと。
あれこれ手をかけたほうが病気にもなりにくいでしょう。
人の体と同じことで、予防や治療に薬を投与することで、病に罹らない、治る。
でも何もしないで病に罹らないようにするのは大変です。
湿疹を何もしないことで治そうとしたとき、本当に大変だったから。
でも何もしないで大丈夫な体をつくれたら、次に病に罹りかけてもすぐ治るんですよねぇ。
 
ワインも人も同じだなんてことを思いながら観た2本でした。
ワインを飲まない人生なんて。

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「食の社会見学」シリーズ、『フード・インク』と『ありあまるごちそう』。

2011年11月11日 | 映画(番外編:映画と食べ物・飲み物)
『フード・インク』(2008)と『ありあまるごちそう』(2005)を観ました。

製作年はずいぶん前ですが、いずれも日本公開は今年の初め。
前者はアメリカ、後者はオーストリアのドキュメンタリー作品で、
「食の社会見学」シリーズとして立て続けに公開されました。
DVD化されたのは夏頃で、公開と同じ順序でひと月ずらして。

ダンナが化学調味料(特にアミノ酸)アレルギーなものですから、
食料品を買うときは必ず箱や袋をひっくり返して、原材料を確認します。
スーパーで売られている食料品で、化調不使用のものを探すのは、
一苦労というのか、至難の業と言ってもいいくらい、
ものすごく多くのものに化調が使われています。

だしの素はそれ自体が化調なので挙げるまでもありませんが、
ハム、ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、漬物は、ほぼまちがいなく化調使用。
カレーやシチューのルーも、化調不使用のものはごく少ないです。
ソースやマヨネーズも、「おっ、これ安い!」と思えば化調入り。
おかきや醤油味の煎餅、スナック菓子も使われている商品がほとんどで、
洋菓子なら大丈夫と思っていたら、シュークリームに入っていることも。
このカスタードクリーム、ほのかにカツオのダシを感じると思ったら、
「調味料(アミノ酸等)」とあって笑ったことも。

そんなこんなで、その手の本は何冊か読んできましたし、
わりと気をつけて食料品を選んでいるつもりでした。
それでも、この「食の社会見学」シリーズを見るとびっくりします。

『フード・インク』のキャッチコピーは、「ごはんがあぶない」。
これは実に衝撃的です。

人びとは鶏の胸肉を好む。
だから、鶏に抗生剤を投与して、胸の大きい鶏を育てる。
暗い鶏舎に詰め込まれ、自然に反して育てられた鶏は、
数歩あるけば脚がぐにゃり。
しかし体型は逆三角形の、胸の大きな立派な鶏。

牛はもともと草を食べる。
だけど、飼料をコーンにすれば見事に太る。
太った牛のほうがよく売れる。どんどんコーンを食べさせよう。
けれど、本来食べないものを与えたせいで生まれたのが、
新しい病原菌、O157。

牛の飼料を草に戻せば、わずか5日間でO157は8割死滅するのだそうです。
しかし、草に戻すという選択は採られることなく、
代わりに「画期的な肉の滅菌法」が開発されました。
ハンバーガーのパテをアンモニアで洗浄する機械。スゴイです。

製作国のちがいなのか、『ありあまるごちそう』のほうがいくぶん静か。
でも、およそ生き物としては扱われないヒヨコたちが
ピヨピヨうごめいている姿は呆気にとられます。
こちらのキャッチコピーは、「世界が飢えていくメカニズムがわかる」。

2本とも、開いた口がふさがらないほどの衝撃でした。

1ドルでハンバーガーは買えるけど、野菜は買えない。
体に良いものを食べたくないと思う人なんていないわけで、
ネックになるのはただ金額。
安価になれば、みんなが良いものを買える。そうしようよ。
有機ヨーグルトをウォルマートに置き始めた人の談話です。

『ファーストフード・ネイション』(2006)と併せて観るのがオススメ。

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シェリーと、ベイリーズと、カプチーノマシン。

2011年06月16日 | 映画(番外編:映画と食べ物・飲み物)
最近観た映画に出てきた飲み物いろいろ。

『メアリー&マックス』(2008)には、ふたつのお酒。

ひとつは、アル中の母親が片時も離さないシェリー酒。
彼女はとにかくシェリーしか飲まず、味見が必要な大人の飲み物と称し、
「COOKING SHERRY」と書かれた瓶ごと、ぐびぐび行きます。

もうひとつは、趣味の剥製づくりに精を出す父親が、
小屋にこもるときに持ち込むクリーム系のリキュール、ベイリーズ。
ベイリーズと薬剤を誤飲して最期を迎えます。

先週レンタル開始になった『グリーン・ホーネット』(2010)には、
すごい自家製カプチーノマシンが登場します。

大手新聞社の創業者である父親が蜂に刺されて急逝し、
社長に就任したボンクラ息子のブリット。
屋敷の使用人をばっさり解雇したところ、
翌朝、目覚めのカプチーノのあまりの不味さに仰天。

昨日までは、ラテアートまでほどこされた完璧なカプチーノだったのに、
今日のカプチーノを淹れたのは誰だと怒鳴りちらします。
昨日までは、自動車の整備工が淹れていたと知り、
なぜ整備工がコーヒーを淹れるのかと訝りつつ、呼び戻すことに。

アジア人のカトーというその整備工は、改造マニア。
ハイテクなネタ満載の車はもちろん、カプチーノマシンまでつくりあげていたのでした。
彼がカプチーノを淹れてみせてくれるのは一瞬ですが、鮮烈。

カトーは凄腕の運転手でもあり、武道の達人。
このコンビに、キャメロン・ディアス演じる秘書も絡んで、
楽しいドタバタ、アクション・コメディです。

オマケですが、先日読み終えた海堂尊の『螺鈿迷宮』。
怠惰な医学生の天満は、幼なじみの新聞記者ハコの策略にはめられ、
黒い噂の絶えない終末医療専門病院にボランティアを装って潜入。
入院患者が次々と死亡していく様子に疑念を抱くようになります。

これに出てくるのが、「飲み物いろいろ」にも書いた、
ラプサン・スーチョンという紅茶。
入院患者で紅茶好きの千花の部屋を訪れた天満に、
彼女が「奮発しちゃおうかな」と選んだのがこれ。
「馥郁(ふくいく)とした香りが漂う」となっていますが、
正露丸の香り以外の何ものでもないと、私は思うのですけれど。(^^;

未読の方は『チーム・バチスタの栄光』と『ナイチンゲールの沈黙』を読んでからどうぞ。
本作のあとは『ジェネラル・ルージュの凱旋』へとお進みください。

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麺づくりに燃える。(その2)

2010年11月29日 | 映画(番外編:映画と食べ物・飲み物)
前回に引きつづき、「こだわりの麺」が登場する作品。
もう1本は韓国の作品、『彼とわたしの漂流日記』(2009) 。
今年の梅雨頃公開され、DVDレンタル開始になったばかり。

失恋、失業、借金と、人生に絶望した男キムは、
ソウル市内を流れる漢江(ハンガン)に、橋の上から飛び込みます。

ところが、自殺に失敗したようで、目が覚めるとそこは小さな無人島。
けれど、遠くへ流されたわけではなく、顔を上げれば、
何百メートルか先にはさっきの橋と行き交う車、高層ビルも見えています。
それぐらい、泳いで行けるやろっちゅう感じなのですが、キムには無理。
携帯で救いを求めるも、誰にも信じてもらえず、
遊覧船の客にSOSのサインを出すも、笑顔で手を振られる始末。

ええい、こうなったらこのままここで暮らすしかありません。
何か利用できるものがないかと無人島を歩きまわるうち、
キムが見つけたのはインスタントのジャージャー麺の袋。
麺は空っぽ、粉末ソースのみが開封されずに残っている状態。

これまでの毎日を振り返ると、幾度ジャージャー麺を拒絶してきたことか。
ジャージャー麺なんて別に食べたくない。
そう思っていたことを天に向かって謝罪します。

どうしてもジャージャー麺が食べたい。
麺さえあれば、この粉末ソースでジャージャー麺がつくれる。
そう思ったキムは、そこらに生えている草を使って
麺をつくろうとしますが、どうにも上手く行きません。

やはり無人島で麺をつくるのは無理なのか。
しかし、空から落ちてきた鳥の糞にヒントを得たキムは……。

いや、もう、ほんとに可笑しいシーンの連続なのですが、
見事ジャージャー麺にありついたシーンでは、
キムと一緒に涙してしまいました。

彼とわたしの漂流日記、「彼」はこのキムのことです。
「わたし」は、対岸のマンションに住む引きこもりの10代女性。
望遠鏡で月を見ていて、偶然「彼」を発見します。
誰かに気づいてほしくて、彼が地面に書いたメッセージ。
それに応えたくて、彼女は完全武装で夜中に部屋を出ると、
メッセージ入りの空き瓶を島に向かって放り投げます。

こんなアナログな手段で通信を試みながら、
ネットの世界でしか生きてこられなかった彼女が
彼に送るメッセージはいつも、PCで打ち込んだたった一文。
そんな様子も実に興味深いです。

ジャケットにも写っているアヒルのボートが立派な脇役。
可笑しくて、優しくて、切なくて、とっても素敵な作品でした。
麺づくりも含めて、オススメ。

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麺づくりに燃える。(その1)

2010年11月25日 | 映画(番外編:映画と食べ物・飲み物)
最近観た映画の話をお昼休みにしていたら、
「こだわりの麺が出て来る映画をよく観てるよねぇ」と言われました。
どうやら私は「麺づくり」のシーンに遭遇すると、
それについて熱く語っているようです(笑)。

去年の夏に公開された『南極料理人』(2009)。
南極観測隊の調理担当だった西村淳のエッセイが基で、
「おいしいごはん、できました。
 氷点下54℃、家族が待つ日本までの距離14,000km
 究極の単身赴任」がキャッチコピーでした。

南極ドームふじ基地。
観測隊員として越冬することになった8名の男たち。
雲氷学者、気象学者、大気学者、雪氷サポート。
医療、車両、通信それぞれの担当者。
そして、調理担当の西村(堺雅人)。

鼻水も凍る過酷な地で、精神も肉体も疲労過多、
娯楽といえるものはわずか。
せめて胃袋は満たしてもらおうと、
西村は毎日懸命に献立を考えています。

この食事が本当に美味しそう。
シャケやおかかの入ったおにぎりにみそ汁。
特別な日には盛装でコース料理も。
フォアグラのテリーヌ、ヒラスズキのポワレ、ローストビーフ、
もちろんワインも一緒に。

立派な伊勢エビがあると聞いた隊員たちの頭の中は海老フライ。
西村は、海老フライには大きすぎると主張しますが、
「僕たち、気分は海老フライだからね!」とみんなから言われ、
渋々リクエストに応えた結果には大笑い。
また、乏しい火力で分厚い和牛を焼く工夫も笑えます。

通称タイチョー(きたろう)の大好物はラーメン。
ところが、夜食にこっそりラーメンを食べ過ぎたせいで、
まだ滞在日数を長く残した状態で、麺が底をついてしまいます。
春まで麺の調達は不可能。
「ラーメンが食べたいんだ。僕の体はラーメンでできてるんだぁ」と
タイチョーは泣いて訴えますが、
麺をつくろうにも、かん水がないので無理だと西村は言います。

数日後に、本さん(生瀬勝久)と卓球をする西村。
球を打ち合いながら、本さんが「ちょっと調べてみたんだけどさぁ。
かん水って何で出来てるんだ?」と西村に尋ねます。
化学記号と代用品のヒントを本さんから得た瞬間、
西村はラケットを放り出し、即座へ向かいます。

できあがったラーメンを目の前にしたタイチョーとほかの隊員たち。
オーロラ観測もそっちのけで、ラーメンをすすります。
そりゃもう、このうえなく幸せそう。
観ているほうまでホッコリ、ニッコリしっぱなしの作品でした。

もう1本は次回に。

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