夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ブロードウェイ♪ブロードウェイ』

2009年05月29日 | 映画(は行)
『ブロードウェイ♪ブロードウェイ』(原題:Every Little Step)
監督:ジェームズ・D・スターン,アダム・デル・デオ

原題は“Every Little Step”。
邦題の副題は『コーラスラインにかける夢』。

1975年初演のブロードウェイ・ミュージカル、『コーラスライン』。
これは、説明不要かと思われますが、
「ブロードウェイの劇場で上演されるミュージカルのコーラスライン
(=無名の脇役)のオーディションを描いたミュージカル」です。
舞台は約15年に渡る超ロングラン公演を記録。
1985年に製作された映画版も大ヒットしました。

本作は、2006年の舞台の再演に向けておこなわれた、
8カ月におよぶオーディションの模様をおさめたドキュメンタリーです。
つまりは、「オーディションの模様を描いたミュージカルに出演するための、
オーディションの模様をおさめたドキュメンタリー」。ややこしい。

応募資格は問われない。どんな人にもチャンスがある。
19の役のいずれかを自分のものにしようと、そこに集まったのは、
どうしてもブロードウェイで歌いたい、踊りたい3000人。

オーディションの様子に加えて、
原案者であるマイケル・ベネットの会話を録音したテープや、
初演当時の出演者へのインタビューが挟み込まれ、
『コーラスライン』誕生への過程がわかり、
当時のオーディションまで見ているかのような気分にさせられます。

審査員は初演にも関わった人たちですから、
当時の想いをまったく切り離しては審査することができません。
初演女優が今も活躍する振付師だったりすると、
彼女のお眼鏡に適うかどうかもポイントになってきたりして。

そんな審査員までも泣かせてしまったのは
ポール役に挑んだジェイソン。
ポールとは、ゲイで、女役に抜擢された応募者だという設定。
女装の自分を見た両親について語るポールをジェイソンが演じますが、
これはもう思いっきり泣きのツボ。
審査員全員がジェイソン演じるポールに飲み込まれ、涙ぽろぽろ。
私はといえば、ジェイソンにも審査員にも泣かされて、倍ぼろぼろ。

日本人の応募者ユカもいい。
初演女優である審査員にイマイチと評価をされながらも、
最終的にはコニー役を勝ち取る姿は(ネタバレ御免)、
同じ日本人としてやはり感涙。

このドキュメンタリーはもしかすると、
実際の舞台よりも心にグッと来る度が高いかもしれません。
これを観てから舞台を観るのがいちばん良かったかな。
再々演、お願いします♪

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西島秀俊、2本。

2009年05月26日 | 映画(番外編:映画とこの人)
かなり、タイプです。

でも、どんな役柄のときでも、同じ演技に思えなくもありません。
口数は少なく、ポヤ~ンとしていて、間(ま)が悪い。
それでも好きなのは、同じ演技に思えるのに、
いつもその役柄にハマって、ちがう人に見えるから。

最近の出演作でお気に入りは『真木栗ノ穴』(2007)ですが、
その後に観た2作品。いずれもレンタル新作です。

『東南角部屋二階の女』(2008)は、池田千尋という女性監督のデビュー作。
孝(西島秀俊)は、祖父の土地に建つ古アパートに住んでいる。
父親の残した借金を返済するため、
アパートを取り壊して土地を売却する話を不動産屋と進めているが、
祖父はぼけているのか、ぼけたふりをしているだけなのか、
まったく口を利こうとしない。
また、アパートは、祖父の亡弟の妻、藤子に所有権があり、
孝は取り壊しの件を藤子に言い出せずにいる。
そこへ、孝の同僚で会社を突然辞めた哲(加瀬亮)と、
お見合い相手の涼子(竹花梓)が転がり込んできて……。

ディスプレイの不具合を疑うほどの画面の明るさ。
最初はまぶしくてたまりませんでした。
ところが、慣れてくると、そのまぶしさが心地いい。
真っ暗な部屋で眠っていたら、いきなりカーテンが開けられて、
春のやわらかい陽の光が差し込んだ、終始そんな印象の作品です。

『休暇』(2007)は、吉村昭の短編小説の映画化。
刑務官、平井(小林薫)は、子連れの未亡人と見合い結婚することに。
結婚式の日取りは決めたものの、新婚旅行のための休暇は取れそうにない。
そんなとき、死刑囚の金田(西島秀俊)の刑の執行が確定。
死刑囚の体を受け止める「支え役」を担当した者には
1週間の特別休暇が与えられることを知り、
平井は支え役を志願するのだが……。

『東南角部屋二階の女』と、陰陽のちがいは若干あるものの、
西島秀俊は相変わらず何を考えいるのかわからない男役。
凶悪な罪を犯したにもかかわらず、おとなしく、聞き分けが良く、
鉛筆画を描くのが趣味で、刑務官をてこずらせることは皆無です。
しかし、刑執行当日の彼は凄い。
その場におよんでも暴れることはありませんが、
肩を静かに震わせ、歯を食いしばる表情は迫真。圧巻。

やっぱり、いつも同じ演技だなんて失礼か。
善人も悪人も狂人もあんな風なのに、それがハマるんだから。
役柄のほうが勝手に西島秀俊にハマってくるんです、きっと。

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〈番外編〉喪の色・追記

2009年05月21日 | 映画(番外編:映画と読み物)
以前、「喪の色」というタイトルで書いたのは、
つい数年前のことだと思っていたのですが、なんと6年半前、こちらでした。
それなのに今さら追記もないんですけど。
3年前と思えば5年経っている、5年前と思えば10年経っている。
年を取ると、そんな気がしませんか。

で、今さらながら追記するのは、
昨日、それっぽい記事に行き当たったからです。

明治22(1889)年に創刊された『風俗画報』。
大正5(1916)年まで、27年間に渡って発行された雑誌です。
たまたま仕事で目を通す機会があり、
慣れないうちは明治時代の文章に目がラリラリしていましたが、
だんだんおもしろくなってきました。

発刊当初は日本の風俗に関する記事がほとんどでしたが、
日露戦争が終わる頃から海外の記事が増えはじめ、
日本人の目には不思議に映る外国の風俗が、
「奇俗」というタイトルで掲載されるようになりました。

昨日読んだのは明治41(1908)年の通巻第386号。
その中の「朝鮮の端午」という記事に、
端午の節句は日本では男児の節句だが、朝鮮では女児の節句で、
この日だけは老いも若きも美も醜も、
雪のごとき白の衣服を着て出かけるのだ書かれていました。
そのついでに、朝鮮では純白の衣服が纏われることが多く、
葬儀のさいも白を着用するという話も。

さらなる説明がホンマかいなと言いたくなるものなのですが、
朝鮮では、身内が亡くなったとき、服忌が8日間と定められているので、
いろいろな色を着ているうちに白以外の着物がなくなったからだと。
う~ん、マユツバものだぁ。

この時代の雑誌って、『風俗画報』に関わらず、
差別的なことが平気で書かれていて唖然とすることもしょっちゅう。
どこやらの国の人は野蛮だとか不潔だとか。
逆に、外国人が日本の風俗を非難する記事も掲載されているので、
その点は、『風俗画報』は公平だというべきなのでしょうか。

昭和初期の婦人雑誌もなかなか楽しいですけどね。
街頭時評などでは、顔がしっかり写っている女性を評して、
ブスだの、センスがないだの、口調だけはバカ丁寧に言いたい放題。

時代の流れを感じられる当時の雑誌、おもしろいです。

映画とは何の関係もない話でごめんなさい。

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『ブラインドネス』

2009年05月19日 | 映画(は行)
『ブラインドネス』(原題:Blindness)
監督:フェルナンド・メイレレス
出演:ジュリアン・ムーア,マーク・ラファロ,伊勢谷友介,木村佳乃,
   ダニー・グローヴァー,ガエル・ガルシア・ベルナル他

レンタル開始後すぐに観たので、もうひと月以上経っているのですが、
新型インフルエンザでえらい騒ぎになっている現在にぴったり。

『シティ・オブ・ゴッド』(2002)のブラジル人監督による、
日本/ブラジル/カナダの作品です。

ある日、車を運転中の日本人男性が突然視力を失う。
目の前が真っ暗ではなく、真っ白に。
通りすがりの男性が、代わりに車を運転すると申し出て、
日本人男性を家まで送り届けるが、
親切を装った泥棒で、車を乗り逃げされてしまう。

日本人男性は帰宅した妻に付き添われて病院へ。
眼球に異常はなく、医師はしばらく様子見だと言う。
ところが、その後、各地で同様の患者が続出。
同時刻に眼科にいた者も、医師も、受付係も、あの泥棒も失明。
やがて彼らが接触したすべての人びとに感染が拡大してゆく。

政府は緊急事態とみて、患者の隔離を始める。
かつて精神病院だった建物に患者を搬送すると、外部と遮断。
なぜか感染しない医師の妻は、夫のそばにいるために、
自分も見えないふりをして建物に潜り込む。
目が見えることは伏せ、増え続ける患者たちを相手に、
自分はここでの生活にすでに慣れたからと、世話を買って出るのだが……。

ひとりだけ見えるということがこんなにも恐ろしく、寂しい。
そこには想像を絶するおぞましい状況が広がります。
不潔極まりない空間。食糧の争奪戦。夫の浮気まで。
もともとの盲人が威力を発揮し、
その盲人を従えて王に君臨しようとする者も登場。
外部から差し入れられた物資を丸取りし、
配給を求める者への交換条件はとんでもない話。

実際にこんな状況下におかれたら、
本作で起きることがあながち大げさとも思えません。
感染の原因が何だったのかは一切語られず、パンデミックのもと、
人間の尊厳が失われる過程が露わになります。

本作には人種も職種もいろいろな人が入り混じり、
伊勢谷友介と木村佳乃のふたりにも違和感はありません。
ただ、終盤のシャワーシーンで、大女優も堂々と脱いでいるのに、
木村佳乃だけは見せません。往生際悪し!?

神が与えた試練であるかのような突然の出来事。
そして、それらを洗い流すかのような雨。

本当に大切なもの、見えていますか。

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好きなんだってば~。

2009年05月15日 | 映画(番外編:小ネタいろいろ)
最近、別々に映画の話をした3人の知人から、
「『レッドクリフ』なんて観る気にならないのでは?」と聞かれ、
私自身は意外でした。へ~、そんな印象なんやと思って。
『レッドクリフ』っちゅうのか、
たぶん、娯楽大作に私が興味を示しそうにない?

そんなこたぁありません。
観る人いっぱいの映画について書くとアラが目立ちそうなので、
逃げているというのが本当のところ。

『レッドクリフ』は、そもそも監督のジョン・ウーが好き。
金城武もかなり好き。そして、周瑜役のトニー・レオンが大好きです。

トニー・レオンは、以前にも書きましたが、
私が「もっともブリーフが似合う」と思っている俳優さん。
あ、ブリーフは白限定でお願いします。
トニー・レオンについてはこちら
白のブリーフについてはこちらの日記をご参照ください。

私が最初にトニー・レオンをいいなぁと思ったのは、
『月夜の願い 新難兄難弟』(1993)を観たとき。
『君さえいれば 金枝玉葉』(1994)と同監督の作品で、
こちらにはトニー・レオンは出演していませんが、
おそらく、私が香港映画好きになるきっかけとなった作品です。
香港映画フリークである作家の馳星周氏が、
「これが苦手な人は香港映画は全部駄目だと思っていい」とおっしゃっているのを
昔、何かの記事で読んだことがあります。
事実、私は『君さえいれば』で香港映画が好きになり、
同監督の作品ということで『月夜の願い』を観てトニー・レオンにハマりました。
ついでですが、共演者のカリーナ・ラウがトニー・レオンの奥様です。
いつ結婚するのかと言われ続け、ついに結婚したのが去年のこと。

昨年公開された『ラスト、コーション』(2007)。
1940年代の日本軍占領下にある上海を舞台に、
日本政府に協力する特務機関のトップ(トニー・レオン)と、
抗日運動に走る女子大生(タン・ウェイ)の駆け引きを描いた作品でした。
敵対するふたりのこれまた大胆な性描写で、
製作国である中国では大幅なシーンカット。
台湾に行けばノーカット版が観られると、
台湾まで遠征したオッサンが大勢いるという話には笑いましたが、
見応え十分の大作。
トニー・レオンの目で訴えかけてくる演技に、惚れ直しました。

そんなわけで、『レッドクリフ』はPart1はもちろん観ましたし、
Part2も絶対外せない映画なのです。

ちなみに、昨年公開の娯楽大作で私の超お気に入りは
断然『アイアンマン』

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