夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『シャイニー・シュリンプス! 愉快で愛しい仲間たち』

2021年07月31日 | 映画(さ行)
『シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』(原題:Les Crevettes Pailletees)
監督:セドリック・ル・ギャロ,マキシム・ゴヴァール
出演:ニコラ・ゴブ,アルバン・ルノワール,ミカエル・アビブル,ダヴィド・バイオ,
   ロマン・ランクリ,ロラン・メヌ,ジョフレ・クエ,ロマン・ブロ,フェリックス・マルティネス他
 
コロナ禍でもなじみのお店が営業している限りは外食しようと誓っているので、
土曜日毎に相変わらず外で食事していますが、なかなか大変です。
というのも職場ではまだ感染者が出ていませんし、
こうして今までどおり映画に行き、外食もしている私が万が一第1号になろうものなら、
何を言われるやらわかりません。言われなくても思われる(笑)。
だから私は絶対にコロナにはかかれない。万全の対策をして出かけなければ。
 
そんなふうに出かけて、京都で酔っぱらった翌日。
もうええ加減しんどいし、連休最後の日ぐらい家でじっとしていようと思ったのに、
目覚ましをかけずとも朝6時には目が覚めてしまうんですよねぇ。
長く寝ていられるのは若い証拠。無理。目が覚めたなら起きなきゃもったいない。
 
もしも普通に起きられたら観に行こうと決めていた1本。
フランスに実在するゲイの水球チームをモデルにした作品。
同チームに所属するセドリック・ル・ギャロが自ら監督を務めています。
シネ・リーブル梅田にて鑑賞しました。
 
水泳選手マチアスは、オリンピックの銀メダリスト。
世界水泳で頂点を目指すべく練習に励んでいたがスランプ気味で、
インタビュアーに毒づいたところ、その発言が問題視される。
というのも、同性愛者であるインタビュアーに「ホモめ」と言ったから。
そのせいで世界水泳の選考会の出場資格を剥奪される。
 
再び資格を得る条件として連盟が提示したのは、
ゲイのアマチュア水球チーム“シャイニー・シュリンプス”のコーチを務めて
3カ月後に開催される“ゲイゲームズ”(LGBTQ+による世界大会)に参加せよというもの。
 
ほかに選択肢はないのだから引き受けるよりほかない。
渋々コーチを引き受けたマチアスだったが、
彼を待ち受けていたチームの面々は、およそ勝つ気のないお調子者だらけで……。
 
自分で泳ぐのは特に好きでも嫌いでもないのですけれど、
プールの話ってなんか楽しくないですか。
 
問題行動を起こした選手やコーチが弱小チームのコーチを仕方なく引き受ける。
最初はどうしようもないチームで、教えたい気持ちも湧かない。
打算で教えるうちにメンバーとの絆ができあがるというのは全然珍しくない話。
 
よくある以外の何物でもないストーリー展開なのですが、
人はこの手の話がやっぱり好きだと思うのですよ。
たいていが駄目な奴だけど、基本的に善人。
たまにすごく才能のある奴もいて、時には余命わずかな者もいる。
彼らがひとつになって試合に臨む姿が胸を打たないはずもない。
 
マチアス役のイケメン、ニコラ・ゴブが「このマッチョハゲ!」と罵られたり、
ひとりでマチアスを敵視するメンバーと他のメンバーの憤る点がズレていたり、なかなか笑えます。
あまりに品のないジョークに関しては、ゲイはいつもこんなこと言ってるみたいで、
ゲイに怒られたりしないかい?と心配になりました。(^^;
 
ところで、ゲイの人たちがセリーヌ・ディオンを嫌いだというのはもはや一般常識ですが、
ライアン・ゴズリングが大人気だというのは初耳だったので目からウロコ。へ〜っ!
 
明るく振る舞ってはいても、まだまだ世の中は厳しい。
ゲイゲームズが世界中で中継されるようになればいい。

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『ライトハウス』

2021年07月30日 | 映画(ら行)
『ライトハウス』(原題:The Lighthouse)
監督:ロバート・エガース
出演:ウィレム・デフォー,ロバート・パティンソン,ワレリヤ・カラマン他
 
京都シネマで4本ハシゴの〆には本作を選択。
 
デビュー作の『ウィッチ』(2015)が強烈に頭に残っているロバート・エガース監督。
その監督の2作目である本作を絶賛しているのはアリ・アスター監督、
つまり『ミッドサマー』(2019)の監督です。
もうこれを聞いただけで、楽しい作品を想像するほうが無理。
絶対イヤな作品に決まっているのですが、どうにも好奇心を抑えられません。
 
全編モノクロ。
このふたり以外に登場するのは幻の人物だけ。
 
舞台は1890年代、ニューイングランド孤島
灯台と島の管理のため、ここへ派遣されたふたりの男。
ひとりはベテランのトーマス・ウェイク(ウィレム・デフォー)。
もうひとりは新人のイーフレイム・ウィンズロー(ロバート・パティンソン)。
ふたりは灯台守として4週間を共に過ごすことになる。
 
しかし、トーマスは灯台守の仕事を一切教えようとせず、
イーフレイムに命ずるのは雑用ばかり。
掃除掃除の毎日で、しかもどれだけ丹念に床を磨き上げようが、
トーマスから必ず駄目出しされる。
食事時には飲酒を強要され、イーフレイムのストレスは溜まる一方で……。
 
ほかに誰もいない。たったふたり。
しかも、ウマが合うとは思えない傲慢な上司と同じ部屋で寝泊まり。
そりゃもう気が変になるでしょう。
 
イーフレイムのアタマがじわじわとおかしくなる様子がめちゃくちゃ怖い。
双方の鬼気迫る演技から目が離せません。
予想通り、明るさのかけらもない、ものすごく嫌な話で気が滅入ります(笑)。
 
だけど、観たことを忘れてしまいそうな作品も多い中、
これは何年経とうが忘れられない作品になる。忘れたいけど。
 
とりあえず、まずカモメを見るとおののいてしまいそうです。(^^;

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『ベルヴィル・ランデブー』を劇場で。

2021年07月29日 | 映画(は行)
京都シネマにて4本ハシゴの3本目。
これが観たくて京都まで行ったようなものです。
 
『ベルヴィル・ランデブー』(2002)を観るのは2回目。
でも劇場で観たことはありませんでした。
レンタルDVDで観たとき、超気に入って速攻で購入しました。
何度も観ようと購入したはずが、
手元にあるといつでも観られると思ってしまってそれっきり。
 
それをなぜかいま劇場で上映するという。
しかも京都シネマでは500円で名画を鑑賞するという企画もあるのに、
これは普通料金。会員だから1,000円で鑑賞できるけど、なぜ今?
 
などとブツブツ思っている暇もなく、引き込まれます。
自転車でただただ走る印象しかなかったのに、
そうでしたか、こういう話でしたか。
 
両親を亡くしてばあちゃんとふたりきりの少年。
ばあちゃんが少年の気に入りそうなものを買い与えるけれど、
子犬を喜んだ以外は、ほぼ何も興味を示さず。
ところがばあちゃんが少年のために自転車を買ったところ、目を輝かす。
それから来る日も来る日も自転車を漕ぐ少年。
いつの日か“ツール・ド・フランス”に出場する日を夢見て。
 
あらためて観た『ベルヴィル・ランデブー』はやっぱり最高でした。
 
とにかくばあちゃんが凄いんです。
ばあちゃんが出れば優勝じゃないのか、どんな自転車競技も、と思うくらい(笑)。
ホイールの調整もばあちゃんが完璧にこなし、
ついでにベルヴィルの三姉妹のピアノの調律もしちゃうばあちゃん。
孫を連れ戻すために犬と旅立つばあちゃんには確実に胸が熱くなります。
 
そして何よりも楽しいのが音楽。
新聞紙と冷蔵庫と掃除機、それに自転車のホイールを使ったセッション
どれだけ心が躍ることか。
 
カエルを食べるシーンはちょっとウゲっとなりましたが(笑)、本当に楽しいアニメ。
DVD、もしかすると開封すらしていないかも。今度こそ、また観る。

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『へんしんっ!』

2021年07月28日 | 映画(は行)
『へんしんっ!』
監督:石田智哉
 
京都シネマにて、4本ハシゴの2本目。
 
立教大学の映像身体学科の学生だった石田智哉監督が、
“しょうがいと表現活動”をテーマに撮った卒業制作。
それがぴあフィルムフェスティバルでグランプリを受賞しました。
 
石田監督は身体に障害を持ち、電動車椅子で生活しています。
障害者による身体表現の可能性を追求した作品。
 
面白いと思ったのは、石田監督と同じ障害を持つ人に限らず、
聴覚障害者視覚障害者などなど、ありとあらゆる障害者に取材し、
一緒に表現活動を試みていること。
聴覚障害を持つ人と視覚障害を持つ人がコミュニケーションを取るって、
非常に難しいことのように思いますが、できるわけで。
 
見えない人が相手だと思うとやたら気を遣って、
「見る」という言葉すら使わないようにする人がいる。
その気遣いは正直に言ってウザいと思うという意見。
彼ら彼女らは目が見えていなくとも観ています。

本作では「障害」をひらいて「しょうがい」という字が使われているのに、
私がこうして障害と書くのもどうなんだと思いながら。
字の使い方ひとつについてもいろいろと考える時間。

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『83歳のやさしいスパイ』

2021年07月27日 | 映画(は行)
『83歳のやさしいスパイ』(原題:El Agente Topo)
監督:マイテ・アルベルディ
 
学生時代は毎日かよっていたのに、今はちょっと遠く感じる京都。
えいっ!と気合いを入れなきゃなかなか向かえないのですが、
この日は朝から京都シネマに4本予約。行くぞ。
 
ところがオンライン予約後に電車の時間を調べたら、
なぬ!?阪急電車の京都線で人身事故があった模様。
目的地の烏丸まで阪急で行くのは無理っぽくて、
JRと京都市営地下鉄を乗り継ぐなら今すぐ出てもキワキワ。
涙目になりながら慌てて家を出たところ、
宝塚線に乗っている間に京都線復旧。間に合いました♪
 
チリ/アメリカ/ドイツ/オランダ/スペイン作品。
なんとも風変わりで楽しく、心に沁みるドキュメンタリーです。
そうだと知らずに観たら、きっとフィクションだと思うはず。
 
チリにて、ある日の求人広告。募っているのは80歳〜90歳の老人。
こんな年齢層への求人なんて、見たことがない。
応募者との面接段階から撮影されています。
 
仕事を射止めたのは83歳のセルヒオ。
4カ月前に妻に先立たれ、今は独り暮らしをしています。
彼の任務は老人ホームへの潜入捜査。
入居者である母親への虐待を疑う女性から依頼を受けた探偵事務所が、
セルヒオをスパイとして送り込もうというもの。
 
求人の条件には、年齢のほかに「電子機器を扱えること」もありました。
83歳といえどもスマホはちゃんと使えます。
それでも、音声メッセージの送信機能などは使ったことがなく、
まずその操作を覚えるのがなかなか大変。
本件を担当する探偵ロムロがイライラする姿も可笑しい。
毎日の報告は周囲にバレないよう、暗号も駆使せなあかんし(笑)。
 
さてさて、こうして潜入捜査が始まるわけですが、
ホームはほぼ女の園で、入居者は男性数名に対して女性は何十人もいる。
そこにお洒落で知的な紳士セルヒオがやってきたからさぁ大変。
セルヒオはモテモテになっちゃいます。
 
女性にちやほやされて悪い気はしないでしょうが、
セルヒオはちっとも偉そうじゃない。どの入居者にも親切で優しい。
この人、カウンセラーの資質があるんじゃないかと思うほど。
自分の記憶が薄れて行くことに気づいて苦しむ女性とのやりとりなど、
あまりにも温かく切なくて、涙なしでは聴けません。
 
しかしこんなふうに入居者の誰も彼ものことをセルヒオが案ずるから、
肝心の対象女性の捜査は遅々として進まない(笑)。
 
「ターゲットは手厚く介護されている。
僕がこんなことを言う立場にないのはわかっているが、この捜査に意味はあるのか。
虐待を疑っていると言いながら、娘は一度も面会に来ないじゃないか」。
 
ユーモアに満ちていて、かつ介護についても考えさせられる良作でした。
ぜひぜひご覧ください。

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