夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『人生は狂詩曲(ラプソディ)』

2016年07月31日 | 映画(さ行)
『人生は狂詩曲(ラプソディ)』(原題:Branbanconne)
監督:ヴィンセント・バル
出演:アマリリス・アイテルリンデン,アルチュール・デュポン,ヨス・ヴェアビスト,
   トム・オーデナールト,ダーヴィット・カンテンス他

シネマート心斎橋にて、前述の『暗殺』とハシゴ。
『暗殺』を観たのと同じスクリーンの同じ座席にて鑑賞。

ベルギー/ルクセンブルク作品。
「音楽×映画」に目がない私は、吹奏楽団の話と聞いていそいそと。
監督は『ネコのミヌース』(2001)のヴィンセント・バルだし、期待大。
予期せぬ「中途半端なミュージカル」で、ちょいビミョーでしたが、
それでも音楽にまつわる映画が楽しいことは間違いありません。

ベルギーのフランドル地方とワロン地方。
同じ国でありながら、このふたつの地方は歴史的に長く対立している。
母語も異なり、前者はオランダ語を話すフラマン人、後者はフランス語を話すワロン人。

さて、フランドル地方の吹奏楽団“サン・セシリア”とワロン地方の“アンナバン”は、
欧州決勝大会への出場チームを決める予選に出場する。
楽屋にいるときからバシバシと火花を燃やしていた両チームだが、
先に演奏したアンナバンのトランペットソロを聴いたサン・セシリアは愕然。
ソリストの青年ユーグは、見た目のチャラさからは想像できない天才トランペッターだった。
案の定、高得点を叩きだし、サン・セシリアは弱気になる。

それでもなんとか演奏をまとめあげたサン・セシリア。
ところが演奏が終了すると同時に、こちらのソリストが心臓発作を起こして舞台上で突然死。
審査員の同情点が加わったか、アンナバンと同点を獲得する。

こうして同点1位となった両チームが共に決勝大会に出場することに。
しかし、ソリストを欠いたチームで勝つことなど不可能。
ユーグのような天才がウチのチームにいてくれたら。
そう考えたサン・セシリアの女性マネージャー・エルケは、
ユーグをアンナバンから引き抜くことを団員に提案。
交流を装ってアンナバンを訪れると、団員全員でユーグ獲得のためひそかに奔走。
ユーグに万全の待遇を提示して、サン・セシリアへ引き入れることに成功するのだが……。

ベルギーがそんなふうに分かれているとは知らなかったので、
その意味でもとても面白い作品でした。

ただ、冒頭で書いたように、たま~に突然誰かが歌い出す、
半端なミュージカルは想定外だったので、ビックリ。
それに、行く先々ですべての女性を虜にするユーグは、
ベルギー人にとっては男前なのかもしれませんが、
おそらく日本人なら彼がタイプだという人はそういるとは思えず。
顔も頭も体型ももっさりしていて、私が思うイケメンにはほど遠い。
なんというのか、田舎くさいんです。(^^;

婚約者がいるのにユーグと寝てしまうエルケ。
これがまた唐突なのは時間的に仕方ないとして、
寝たあとに家族に取り繕おうとするシーンがどっちらけ。

と、いろいろとイマイチな点は多いのですが、
音楽が奏でられはじめれば、そんな文句も吹き飛んでしまいます。

ひさしぶりのアメ村、ご機嫌で帰途についたのでした。

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『暗殺』

2016年07月30日 | 映画(あ行)
『暗殺』(英題:Assassination)
監督:チェ・ドンフン
出演:チョン・ジヒョン,イ・ジョンジェ,ハ・ジョンウ,チョ・ジヌン,チェ・ドクムン,
   イ・ギョンヨン,オ・ダルス,チョ・スンウ,キム・ヘスク他

たぶん8カ月ぶりのシネマート心斎橋
久しぶりに行ったら、なんだかんだでポイントが貯まっていて、
区切りのポイントだったおかげでドリンク券をいただきました。
せっかくなのでコーヒーを。ちょっと嬉しい。

韓国が日本の植民地下にあった1930年代の物語。
本国で大ヒットを飛ばし、国民の4人に1人が観た計算になるそうです。
みんなで日本を憎みましょうという作品なのかとも思いましたが、
決してそんなことはなく、抗日が前面に押し出されているわけでもありません。
抗日はあくまで本作のひとつの要素。
こんなリーダーを得て独立したかったのだという意思を感じます。

1933年、日本からの独立を目指す韓国臨時政府は、ある暗殺を計画。
ターゲットは日本政府の要人カワグチと親日派の実業家カン・イングク(イ・ギョンヨン)。
臨時政府の警務隊長ヨム・ソクチン(イ・ジョンジェ)は、暗殺チームに3名をスカウト。
1人目は韓国独立軍のエキスパートで狙撃手のアン・オギュン(チョン・ジヒョン)。
2人目と3人目は収監中の囚人であるチュ・サンオク(チョ・ジヌン)とファン・ドクサム(チェ・ドクムン)。

しかし、実はヨム・ソクチンは日本政府の密偵。
3人を暗殺チームに抜擢するかたわら、殺し屋(ハ・ジョンウ)を雇うと3人の殺害を依頼。
そんなことだとは夢にも思わない3人は、使命を果たすために京城へと渡るのだが……。

杭州、上海、京城と、最初はあちこちの地名に飛ぶので混乱してしまい、
これはもしかするとまた眠気に襲われるパターンかと懸念。
しかし一通り場所が移るとあとは簡単、意外にシンプルなストーリー展開でした。

大戦争において植民地化に置かれ、自ら戦うことができなかった韓国が、
本作の中では前線に出て戦う。
登場人物のいずれも人間的に非常に魅力があり、
こういう人物がリーダーとして存在してくれていたら……というのが
韓国の人たちの切なる願いだったのでしょう。

暗殺チームの隊長は美人の凄腕スナイパー。
隊員ふたりには非常に愛嬌があり、とくにサンオクには笑わされ泣かされます。
ちょっとチャラそうな殺し屋とそのお付きの爺や(オ・ダルス)にも人間味あり。

日本人役も韓国人俳優が演じているため、片言っぽいのはかなり残念。
この点で日本人が観るとリアルさには欠けます。
それを差し引いても、人を惹きつける物語となっています。

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『裸足の季節』

2016年07月28日 | 映画(は行)
『裸足の季節』(原題:Mustang)
監督:デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン
出演:ギュネシ・シェンソイ,ドア・ドゥウシル,トゥーバ・スングルオウル,エリット・イシジャン,
   イライダ・アクドアン,ニハール・G・コルダシュ,アイベルク・ペキジャン他

土曜日の朝、1本だけ観る時間ができたので、テアトル梅田へ。

『裸足の季節』と聞くと、どうしても思い浮かぶのは松田聖子のデビュー曲。
“えくぼ~の~♪”が頭の中を巡ってしかたありませんが、
これはそんな曲も吹っ飛ぶフランス/トルコ/ドイツ作品。
トルコ出身の新人女性監督の長編デビュー作なのだそうです。
登場する5人姉妹は揃いもそろって皆めちゃ綺麗、可愛い。

イスタンブールから1000キロ離れた黒海沿岸の村
13歳のラーレは5人姉妹の末っ子で、
長女ソナイ、次女セルマ、三女エジェ、四女ヌル、そして五女ラーレ、大の仲良し。
両親を事故で亡くしてから、祖母と叔父が暮らす家に身を寄せている。

ある日の学校帰り、姉妹は男子生徒たちと海で騎馬戦。
その様子を見かけた近所の女性が祖母にチクったことから、
姉妹はふしだらだと激しく叱責される。
この村では結婚前の女は処女であることが何よりも大切。
傷物にでもなれば大変だと、祖母と叔父は姉妹を家に閉じ込めることに。

外出を禁じられ、学校にすら行くことを許されなくなった姉妹。
クソ色の服の着用を強要され、料理に裁縫と花嫁修業ばかり。
退屈で仕方ない日々に、ときおり家から抜け出すことを試みるが、
それがバレるたびに改築が施され、家は監獄化してゆく。

上から順番に勝手に進められる見ず知らずの男性との見合い話。
望まぬ縁談に心を病む姉たちの姿を目の当たりにしたラーレは……。

トルコの人たちにとってイスタンブールは特別な都市のようで、
トルコ作品を観ると、「とにかくイスタンブールへ」というシーンがよく登場します。
しかし誰もが憧れるイスタンブールであっても、
監督がおっしゃるようにトルコの縮図であるに過ぎないのでしょう。
都会のほうが多少ひらけた考え方をする人がいる率が多いとはいっても、
国としてはまだまだ保守的で封建的。

祖母の態度は孫の幸せを思いやってのもの。
だけど、叔父はどうなのか。本作で私が嫌悪感を抱いたのはこの叔父。
傷物にでもされたら困ると言いつつ、自分は姪に性的虐待
そんなことをしておきながら素知らぬ顔で縁談を進め、
見て見ぬふりの祖母が「幸せになれるわよ」と言ったときの、
姪の「冗談でしょ」という言葉と表情が頭から離れません。
直接には描かれないシーンだったのが救いですが、想像だけで相当えぐい。

誰も文句を言えずに甘んじてきた状況に立ち向かうラーレ。
力強く清々しいラストが待っています。
叔父が真っ当な人であったならば、さらに鑑賞後に爽やかな気持ちになれたはず。
あのオッサンは絶対に許さん!(--;

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『ファインディング・ドリー』〈字幕版〉

2016年07月26日 | 映画(は行)
『ファインディング・ドリー』(原題:Finding Dory)
監督:アンドリュー・スタントン
声の出演:エレン・デジェネレス,ヘイデン・ロレンス,アルバート・ブルックス,エド・オニール,
     ケイトリン・オルソン,タイ・バーレル,シガーニー・ウィーヴァー,ウィレム・デフォー他

海の日、『日本で一番悪い奴ら』を観た後、TOHOシネマズ梅田へ移動。
連休初日に吹替版を観たばかり。どうしても字幕版が観たくなり。

字幕版は大人ばかりかと思いきや、吹替版で席を取れなかったらしく、
幼児を含む家族連れ多数。満席。

シアター7の座席配置は縦に長く、スクリーンはさほど大きくありません。
そのため、後方の端っこ好きの私も、このシアターに関しては後方は嫌。
前方の端っこは観にくいから、思い切って前から3列目の中央を確保。
開映まぎわに隣にやってきたのは5人連れの家族で、並んで取れなかったらしく、
私を挟んで1人と4人。1人で座ろうとしていた若いお父さんと席を替わりました。
お父さんは片手にビール。もしかしたら席を替わって差し上げなかったほうが
ひとりでゆっくりとビールを飲めたでしょうか(笑)。

吹替版のレビューをUPしたさいには触れませんでしたが、
予告編後、本編上映前に短編『ひな鳥の冒険』(原題:Piper)の上映があります。
ディズニーのこういった同時上映作品は、次世代を担うクリエイターが育つ場として有名。
これも佳作で、観客の誰もが笑顔になる作品でした。
吹替版を観たときよりみんなの笑い声が響いていました。
って、これは台詞のない作品なんですけれど。

さて本編。
吹替版と字幕版、どちらを観るかでお悩みの人には、強く字幕版を推奨します。
やはり字幕版のほうが声がしっくり来るのです。
吹替版は申し訳なくも序盤少々ウザイと思ったぐらいだったのですが、
字幕版はまったくそんなことなし。

ただし、吹替版の八代亜紀は大当たりでしたね。
オリジナルがシガニー・ウィーヴァーだったものを八代亜紀にしようだなんて、
よくも考えついたものです。

涙なくして語れないシーンは吹替版も字幕版も同じ。
何度観てもいいシーンです。

同時上映作品のときもそうでしたが、
本編上映中も吹替版のときよりもあきらかに劇場の雰囲気が良し。
字幕を読めないはずの子どもたちも画面に見入っていて、素敵な光景でした。

障害を持つ子どもを抱えるお父さん、お母さん。
この作品はきっと勇気をくれるはず。

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『日本で一番悪い奴ら』

2016年07月25日 | 映画(な行)
『日本で一番悪い奴ら』
監督:白石和彌
出演:綾野剛,YOUNG DAIS,植野行雄,矢吹春奈,瀧内公美,田中隆三,
   斎藤歩,青木崇高,木下隆行,音尾琢真,ピエール瀧,中村獅童他

海の日、某国家資格の試験を受けるダンナを会場まで送り、
そのまま最寄りの駅に車を駐めて大阪市内へ出て映画を観るつもりが、
受験者の中には車でやってきた人も多いようで、
普段はガラガラの周辺コインパーキングがどこもいっぱい。
こうなることも予測はしていたので、ひとつ隣の駅付近まで移動。
今度こそガラガラのコインパーキングに駐車してJRで大阪へ。
大阪ステーションシティシネマへと走りました。

『凶悪』(2013)の白石和彌監督であるうえに、主演は綾野剛
封切り後すぐにでも観たかったのに、終映間際になっても機会なし。
前週は西宮まで車を飛ばしたのに間に合わず、
この日もぎりぎりアウトかと思われましたが、
朝イチ9:30の回の予告編終了まであと1分というところで滑り込み。
間に合わなかったら十三で『あまくない砂糖の話』を観るつもりでした。
それもあきらめきれなかった作品なので、
結局間に合ったことが吉と出るか凶と出るかドキドキしながら鑑賞。

大学時代に柔道で鍛えた諸星(綾野剛)は、その実力を買われて北海道警察入り。
ほどなくして新米刑事として機動捜査隊に配属される。
真面目なだけが取り柄の諸星は、現場ではまったくの役立たず。
コンビを組む先輩刑事の栗林(青木崇高)が犯人を追い詰めても諸星がポカ。
目の前でベテラン刑事の村井(ピエール瀧)に手柄をかすめ取られてしまう。

諸星を叱る栗林に村井が言う。
「俺はずっと前から犯人に目星をつけていた。お前とは情報量がちがう。
後輩を叱る前に、自分の情報の少なさをなんとかしろ」。

しかし栗林の諸星に対する態度は変わらない。
ある日の事件発生時にもひとり出動を許されず留守番をしていた諸星に
村井が「飯でも食いに行くか」と声をかける。

ホステスの姉ちゃんをはべらせて好き放題の村井から、
刑事は点数を稼いでなんぼのものだと説かれ、
そのためにとにかくスパイをつくって情報を集めろと助言された諸星は、
翌日からすすきの一帯に自らの名刺をばらまくという手段に出る。
柔道の道内チャンピオンだった諸星は、チンピラと喧嘩になっても負け知らず。
腕に物を言わせればスパイをつくるのもわりと簡単。
おかげで覚醒剤や拳銃所持を次々と摘発し、エースと崇められる存在になるのだが……。

実在の元警部・稲葉圭昭の告白本『恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白』が基。
数々の違法捜査に関わり、覚醒剤の密売に手を染めるにとどまらず、
ついには自分も覚醒剤を常用するようになって逮捕されたという凄い話。
日本警察史上最悪の不祥事だと言われているそうです。

今も進行中である本件について、実にコミカルに描いています。
金を持てば女が寄ってくる。悪い仲間も増える。
どんどん破滅の道へと進んでいるのに、本人はそのことに気づかない。
生来の真面目さはどこへ行ってしまったんだと思うけれど、
意外にも最後にその真面目さは残っていたのだということがわかります。
人を信じて裏切られ、それでもまだ信じようとするバカ。
その魅力を綾野剛が最大限に演じきっていました。

美人ホステス役の矢吹春奈と綾野剛の濡れ場もばっちり。
諸星と親しくなる暴力団の組長に中村獅童
諸星を家族のように慕う「ロシア語を話せるチンピラ」にYOUNG DAIS
盗難車をロシアに横流しするパキスタン人にお笑いコンビ“デニス”の植野行雄。
みんなよい味を出しています。

はい、これを劇場で観られてよかったです。
白石和彌監督、好きかも。

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